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11来訪者

 あれから一か月が経った。

 

 相変わらずアリエスは我が家に居座っている。

 それも当たり前に感じる様になって来た。


 ただ、変わったことがあるとすれば――――。


「イサミ様! お昼が出来ましたよ!」


 ――――ルナの存在だった。


 ルナはここに残る事を決意してから、アリエスに師事して掃除洗濯家事の全てを学んだ。


 結果、今では師匠のアリエスから免許皆伝を受けて、スーパーメイドとして


 今、ルナはすっかり着こなしている、スカートの丈が長いメイド服に身を包んでいる。

 

 メイド服のミニスカが現代の主流となっているが、それは邪道だ。

 やはりメイド服こそ、ロングスカートに限る。

 

 とまあ、それは置いておいてだ。


「ありがとう、今行く」

「はいっ!」


 ルナは良く笑う様になった。


 今までは笑う事を忘れた様に表情筋が固かったのに、いつの間にか表情豊かになったのだ。


「俺はアリエスを呼んでから行くぞ」

「かしこまりました。お待ちしていますね」


 本当にいつまでも待っているんだろうな、と思いながらアリエスがいると思われる庭に向かった。



 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 


 アリエスはルナに免許皆伝を言い渡したころから、鍛錬の時間が出来たと喜んでいた。


 今までは家事で手いっぱいだったが、はっきり言ってルナの容量の良さはアリエスを超えている。


 そのおかげで一人で家の家事を回せるようになり、アリエスも信頼して仕事を任せていた。


 今でもたまに料理をする時はあるが、ほとんどの時間を鍛錬につぎ込んで剣を振るっている。


「はあっ! たぁ!」


 庭ではアリエスが剣術の鍛錬をしていた。

 無我夢中で俺が来たことにすら気付かない集中力、剣を振るうたびに聞こえる風を斬る音、流れる汗は美しささえ思わせた。


 いや、本気で俺はアリエスが剣を振るう姿が美しいと思ったんだ。


 ダメだな、頭がおかしくなってしまった様だ。


 アリエスが汗を拭くために用意したであろうタオルを投げつけた。


「おい」

「ひゃうっ!?」

「飯だぞ」


 何がそんなに驚いたのか、タオルが首に掛かった瞬間にビクッと飛び跳ねた。


 そして、若干涙目になりながらこちらを睨んでくる。


「イ、イサミか……。来たのなら、せめて声くらい――――」

「声かけても気づかないだろ、お前」

「それは、そうだけど……」

「ほら、さっさと行くぞ。飯が冷めちまう」


 何が気に入らないのか、アリエスは唇を尖らせて「むぅ」と唸った。


 ただ気にしても仕方がないので「もう行くぞ」と言って、歩きだすと急いで着いて来た。



 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



 汗を拭き終わったアリエスと一緒にルナが待つ、表の庭に向かった。

 表の庭には、ルナが手入れした花壇とベンチがあり、そこで寝る事が出来る。


 アリエスが隣でルナが俺の真向かいだ。

 ルナが言うには順番がどーのって話だったが、よくわからんでの席順は好きにさせた。


「せっかくなのでピクニックっぽい物を、と思ってサンドイッチとおにぎりを作ってみました」

「流石だな」

「うむ!」

「「「いただきます!」」」


 三人で手を合わせて食べ始めた。


 水筒に入れられたのは、日本の茶葉に似た物もあったのでお茶もある。


 やはり米はいいな。日本人の魂食(ソウルフード)だ。


 ガサッ、と森の葉が揺れた。

 鳥達が一斉に飛び立つ。


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「あァ? あれが魔王か?」

「どうやらその様ですね」


 森から出て来た二人は明らかな実力者だ。


 纏う空気が違う。こちらに来る間も一切の隙を見せない。


 一応、対話の余地はありそうだが――――。


「あ?」


 食事の邪魔をされたのは、少し腹が立った。

ここまで読んでいただきありがとうございます。

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