崩壊する城と、父の最期
「――これまでか」
城の天守の一角。血にまみれた鎧をまとった父・頼重は、もはや取り乱すこともなく、静かに盃を傾けていた。
「寅王丸。よく戦った。お前は我が自慢の息子だ」
「父上……!」
「諏訪の血統を、意地を、絶やしてはならぬ。……生き延びろ、寅王丸」
父上はそう言い残すと、自らの手で壮絶な最期を選んだ。
城内は敵兵の鬨の声と、燃え盛る炎の音に包まれる。
富国強兵も、奇跡の出会いも、未来を変えたいという足掻きも、すべてが無力な子供の浅知恵だったと証明された瞬間だった。
「人間では、勝てない……」
絶望のあまり、俺はその場に膝をついた。
父は死に、家臣たちは散り散りになり、愛する諏訪の地は「甲斐の虎」の足元に泥まみれに踏みにじられている。
自分が積み上げてきたものは何だったのか。自分の甘さが、すべてを最悪の結末に導いてしまったのではないか。
すべてを諦め、自分の無力さに涙すら出なくなった絶望の淵。
そんな弟の姿に気づき、静かに歩み寄ってきたのは、敵の手に落ちる運命にある姉・諏訪姫だった。
彼女は、ボロボロになり、血と泥にまみれた俺の前にそっと膝をつく。
そして、怯えるどころか、まるで我が子を包み込むような、太陽のように穏やかな笑みを浮かべて、こう言った。




