表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
東京ランクマッチ ー三人で挑むeスポーツ青春譚ー  作者: Aramaki_mai
第2章 見られる仕事の始まり
PR
11/95

第11話 三人とも武器を持ってから

挿絵(By みてみん)

夕奈は空中で進路をずらしながら、東の資材置き場を見下ろした。中央の大型倉庫には、床に落ちている武器が二つ見える。屋根の端には防具もあった。


先に届けば、取れる。


同じ屋根へ向かう敵は一人ではない。後ろの部隊の先頭が遥真とほぼ同じ高さまで降り、さらに西から曲がった別部隊も中央倉庫へ着地しようとしていた。


「先に降りれば、一人は取れる」


遥真の声は落ち着いていた。実際、取れるのだと思う。


敵より先に武器に触れれば、遥真なら一人を倒せる。だが、屋根に見えている武器は二つだけだった。遥真が一つを取り、敵がもう一つを取れば、夕奈と航平は何も持たないまま戦闘に入る。


「正面には降りません。北へずらします」


夕奈は資材置き場の外れにある、小さな整備棟にピンを移した。


「戦うのは、三人とも武器を持ってからです」


一瞬だけ、遥真の進路は中央倉庫側に残った。遥真はすぐにピンの方へ向き直る。


「分かった」


「後ろの一部隊、ついてきます。もう一部隊は中央に降りました」


航平が周囲を見ながら伝えた。


「整備棟の北側から入ります。建物を分けすぎないでください」


三人は屋根の低い整備棟へ滑り込んだ。


夕奈は割れた窓から事務室へ入り、床のScout-56を拾った。隣には5.56弾が一束とライトシールドがある。中距離では戦えるが、廊下まで詰められれば苦しい。


「Scoutとライトあります。近距離なし」


「俺、AK。7.6弾一束」


遥真は隣の作業場へ入っている。声の距離は近い。


「こっち、Drum-90とMP9。SMG弾二束と、2倍サイトあります」


航平の報告が続いた。


「ユウナさん、事務室の入口にMP9とSMG弾を一束、2倍サイトを落とします。ハルさん、ライト一個そっちへ投げる」


「分かった」


夕奈が入口へ戻ると、床を滑ってきたMP9と弾薬、2倍サイトが壁際で止まった。MP9を二つ目の武器枠に入れ、サイトはScout-56につける。


MP9の拡張マガジンは見つからず、装弾数は二十発のままだった。これで近距離と中距離の両方を見られる。


「航平さんの防具は?」


「俺もライト拾いました。三人とも最低限あります」


建物の南側で、金属の扉が開く音がした。


追ってきた部隊が入った。


「南の搬入口、一枚。先頭だけ近い」


遥真の報告が入る。


夕奈の痕跡解析には、搬入口まで入った新しい足跡とは別に、南の外壁で左右へ分かれた二人分の跡が見えた。向きと新しさは分かる。壁の向こうで今どこを見ているかまでは分からない。


夕奈はミニマップと、二人の位置を確認した。遥真は作業場の西。航平は物置の北。三人の間に大きな壁はなく、互いにカバーできる。


「残り二人は?」


「南の外。まだ入ってません」


航平が答えた。


「中央倉庫の別パは、まだ中です。北側も空いてます」


逃げ道はある。それでも夕奈は、すぐに離れるとは言わなかった。


先頭の一人は、味方より深く整備棟へ入っている。NOVA-3が中央倉庫から逃げたと思い、そのまま追えば倒せると考えたのかもしれない。


今のNOVA-3には三人分の武器と防具があり、敵の一人だけが味方から離れている。


有利なのはこちらだった。


「今なら戦えます。ハル、手前から落として」


「合わせる」


遥真が作業場の柱から体を出した。


AKの銃声が短く続く。遥真は強い反動を押さえ込みながら撃ち、搬入口を越えた敵のシールドを一気に削った。


「割った」


敵が外へ戻ろうとする。


夕奈はScout-56を構え、逃げる先に照準を置いた。一発が背中に入る。敵が搬入口の脇へ逃げ込むより早く、遥真の次弾が重なった。


「一枚落とした」


「残り二人、入ってきます。右の外壁沿い」


航平は北へ抜ける通路を背にしながら、南の扉へDrum-90を撃った。三十発近い弾が途切れず入口へ流れ、正面の敵が顔を出せない。


「右、一人回ってます」


「私が見ます。ハルさんは正面を」


夕奈はScout-56からMP9に持ち替え、事務室の横窓へ向かった。


敵の一人が外壁沿いを走り、窓から中へ入ろうとしている。近づくまで待ち、窓枠を越えた瞬間に撃った。


拡張マガジンのないMP9から、二十発が一気に減る。


全部は当たらなくても、敵のシールドは割れ、相手は窓の外へ落ちた。


「右、割りました。外へ戻った」


「見える」


遥真は正面の敵を押さえながら、右へ一歩だけ射線を広げた。AKの数発が、外壁沿いへ逃げた敵に入る。


「右ロー」


「航平さん、正面どうですか」


「止めてます。でも、残り十発。撃ち切ったら入られます」


Drum-90は弾数が多い代わりに、リロードが長い。航平が入口を止めている間に、右の敵を落とす必要がある。


「右を先に落とします。ハルさん、行けますか」


「行ける」


遥真が窓から外へ飛び出した。夕奈も窓へ寄り、外壁の角を見た。


「敵、角の裏。ハルさんの右」


「見えた」


短い銃声のあと、二つ目のダウン表示が出た。


「最後、搬入口から離れました。中央倉庫側へ戻ります」


航平がDrum-90のリロードを始めながら伝える。最後の一人は、倒れた二人を置いて南へ走っていた。追えば倒せる可能性は高い。


だが、その先にある中央倉庫のシャッターが開いた。金属音に続いて、複数人が外へ出ていく足音が聞こえた。


「中央の三人、中庭へ出ました。こっちへ寄ってます」


航平が続けた。


「まだ距離はあります。でも、最後の一人を追ったら正面でぶつかります」


夕奈は南側を見た。


逃げた一人は、中央倉庫から出てきた部隊との間へ走っている。追えばその一人は倒せるかもしれないが、開けた中庭で三人から撃たれる。


「追いません。二人を確定して、北へ出ます」


「最後は残す?」


遥真が聞いた。


「今追ったら、中央の三人に正面を取られます。倒した二人の分だけ取って離れます」


「分かった」


遥真は逃げた敵から照準を外し、近くで倒れている二人を確定した。


「中央の三人、中庭を渡ってきます。北はまだ空いてる」


「弾とパックだけ取ります。取った人から北へ」


三人は、それぞれ近いデスボックスを開いた。


遥真が7.6弾を取る。航平はDrum-90を撃った分のSMG弾を補充し、夕奈はシールドパックを二つ拾った。


別の欄には、AK用のバレルがある。窓の外で倒れた敵は、MP9用の拡張マガジンを持っていた。


どちらも欲しい。だが、夕奈はカーソルを止めなかった。


「取れました」


「俺も出る」


「北、行けます」


三人はデスボックスを閉じ、北側の通路へ走った。


整備棟を出た直後、南の入口に弾が当たった。少し遅れていれば、デスボックスを開いたまま撃たれていた。


「右へ寄って。鉄骨まで走ります」


夕奈は資材路を渡り、積まれた鉄骨の陰へ向かった。航平が最後尾から北側を確認し、遥真は追ってくる敵へ短く牽制射撃を返す。


中央倉庫の部隊は、そのままNOVA-3を追ってこなかった。


整備棟の南側で銃声が始まる。


中央倉庫の部隊が、逃げた一人とぶつかったらしい。


三人は鉄骨の陰まで走り、そこで初めて足を止めた。


「全員いますね」


航平が周囲を確認しながら言った。


「武器もある。弾も、さっきよりは増えた」


遥真がAKの残弾を確認する。


「最初に中央へ降りても、一人は倒せたと思う」


夕奈は少しだけ肩を固くした。


判断を否定されたわけではない。それでも、遥真が見えていた一人を捨てたことは事実だった。


「はい」


「でも、そのあと三人で残れたかは分からない」


遥真は続けた。


「今の方がよかった」


夕奈はすぐに返事ができなかった。


「最初に中央を捨てたから、三人で撃てたんですね」


「全員に武器がありましたからね。俺のDrum-90も、重い置物で終わらずに済みました」


「さっき全部撃ち切りそうでしたけど」


「四十発あると、使える気がしてくるんですよ」


「使い切ったら、リロード中は置物になります」


「次から三十九発で止めます」


「一発残しても、たぶん変わりません」


航平の声に軽さが戻り、夕奈は少し笑った。戦う時間は、相手だけが決めるものではなかった。その試合で、NOVA-3は六位まで残った。


チャンピオンには届かなかったが、最初の戦闘で誰も欠けなかったことが、夕奈には順位以上に大きく思えた。


リザルト画面からロビーへ戻る。


「もう一試合、行きますか」


航平が聞いた。


「行きます」


「やる」


夕奈はマッチングを開始した。


次の試合では、輸送機がマップの中央を横切った。


夕奈は前の試合とは離れた、北西の研究区画にピンを刺す。細長い建物が複数あり、入口を変えれば物資を分けやすい場所だった。


「ここなら、被っても建物を分けられます」


「今度は何部隊来ますかね」


「来ない方がいいです」


航平の軽口に言葉を返しながら、夕奈は輸送機から飛び出した。


すぐ後ろに一部隊。


さらに左から一部隊。


少し遅れていた三つ目の部隊まで、研究区画へ角度を変えた。


「三部隊来ました」


「言わなければよかったです」


「言わなくても来てたと思う」


遥真の声は冷静だった。


三人は予定していた東棟へ向かった。夕奈は二階の割れた窓から入り、廊下の奥に見えた武器へ走る。


あと少し。反対側の窓から入った敵が先に床へ滑り込み、武器が消えた。


夕奈の手に入ったのは、その横に落ちていたライトシールドと5.56弾二束、2倍サイト、それから5.56用の拡張マガジンだけだった。


「武器なし。東棟二階、敵一人」


「こっちも接敵した」


遥真の銃声が、別の建物から聞こえる。


「俺も武器なし。ユウナさんの方へ行けない」


航平の声にも、いつもの余裕がなかった。夕奈は使えない武器のアタッチメントを抱えたまま、廊下の角へ下がった。


近づく足音は一つではない。角の向こうから、武器を持った敵の影が伸びる。弾もサイトも拡張マガジンもある。


撃てる武器だけがなかった。


挿絵(By みてみん)

本作をお読みいただき、ありがとうございます。

ゲームや配信の世界には、似ているようで役割の異なるさまざまな活動者がいます。


**プロ選手**は、大会で結果を残すことを主な目的とし、練習、スクリム、戦術研究、公式大会への出場など、競技活動を中心に行います。


**ストリーマー**は、ライブ配信や動画投稿を通じて、視聴者との交流や継続的な発信を行う活動者です。ゲームの実力だけでなく、トーク力や企画力も大切になります。


**VTuber**は、アバターやキャラクターを使って配信や動画投稿を行う活動者です。ゲーム配信に限らず、歌、雑談、企画、コラボなど、活動内容は幅広くあります。


**契約プレイヤー**は、企業や団体と契約し、配信、イベント出演、宣伝活動、大会参加などを行うプレイヤーです。契約内容によっては、競技と広報の両方を担う場合があります。


ただし、実際には一人が複数の立場を兼ねることも珍しくありません。プロ選手が配信を行ったり、VTuberが大会へ出場したり、ストリーマーが企業と契約したりすることもあります。


※掲載内容は、それぞれの一般的な違いを分かりやすく整理した一例です。活動内容や契約形態、収入源、呼び方は、本人や所属先によって異なります。


※本作『東京ランクマッチ』のNOVA-3は、ゲーム会社が販促を目的として契約した「公式契約プレイヤー」という架空の設定です。アバター配信やイベント出演を行いながら競技にも挑戦するため、一般的なプロ選手、ストリーマー、VTuberのいずれか一つだけには当てはまりません。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ