あとがき
ここまで『青の姫君の森暮らし 〜化け物と恐れられた公爵令嬢は、今日も畑を耕します〜』を読んでくださり、本当にありがとうございました。
この物語は、青い髪を理由に人々から恐れられ、自分の気持ちを言葉にすることも、誰かの好意を受け取ることも苦手だったフローラが、森での暮らしを通して少しずつ変わっていくお話でした。
畑を耕し、芽を待ち、葉の変化を見つめ、分からないことを分からないまま記録する。
そんな静かな日々の中で、フローラは少しずつ、自分の心にも向き合っていきました。
嫌なことを嫌だと言うこと。
怖い時に、怖いと口にすること。
助けてほしい時に、手伝ってくださいと頼ること。
分からない時に、無理に答えを出さないこと。
誰かを理解しても、すぐに許さなくてよいこと。
帰る場所は、誰かに与えられるだけではなく、自分で選んでよいこと。
フローラにとっては、どれも簡単なことではありませんでした。
王都へ戻る決断も、父や母と向き合うことも、森へ帰ることも、一度ですべてが解決したわけではありません。
父と母を完全に許したわけでもありません。
公爵家を今後どうするのかも、婚姻を望むのかも、まだ決まっていません。
けれど、この物語では、それでよいのだと思っています。
答えが出ていなくても、暮らしは続いていく。
朝になれば畑を見て、食事をして、誰かと話し、笑ったり泣いたりしながら、その日の自分が選べることを一つずつ選んでいく。
フローラが最後に手に入れたものは、すべての問題を解決する強さではありません。
分からないままでも、明日を迎えられる強さでした。
青い髪を持つ公爵令嬢ではなく。
化け物と恐れられた存在でもなく。
森へ逃げた娘でもなく。
一人の人間として、自分の居場所と生き方を選び始めたフローラの物語を、最後まで見届けていただけたことを、とても嬉しく思います。
青豆一号。
アオジロウ。
ムラマル。
モリタン。
オカエリ。
キズナ。
そして、マッテタ。
少し変わった名前の植物たちも、フローラと一緒にここまで育ってくれました。
村の皆や子どもたち、リオ、ミナ、ガルド、レナードたちも、フローラを無理に変えるのではなく、急かさず、待ちながら支えてくれました。
誰かを支えることは、代わりに答えを出すことではない。
その人が自分で言葉を選べるまで、そばにいることなのだと思います。
長い物語となりましたが、毎話読んでくださった方、途中から見つけてくださった方、感想や応援をくださった方、すべての皆様に心より感謝いたします。
皆様が読んでくださったからこそ、フローラは最後まで森で暮らし、自分の言葉で「ただいま」と言うことができました。
本編はここで完結となります。
ただ、フローラたちの暮らしは、これからも続いていきます。
マッテタがどのように育つのか。
白鈴草が森で芽を出すのか。
キズナの種ができるのか。
父や母と、いつかまた会う日が来るのか。
公爵家について、フローラがどのような答えを選ぶのか。
それらは、すぐには決まりません。
きっとフローラは、これからも毎朝畑へ向かい、見て、考えて、分からない時には分からないと言いながら、一つずつ選んでいくのだと思います。
もし番外編を書く機会があれば、森へ帰ったあとの何気ない日常や、村の皆との暮らし、王都側の人々のその後なども描ければと考えています。
改めまして。
最後まで読んでくださり、本当にありがとうございました。
この物語が、皆様の心へ少しでも残るものになっていましたら幸いです。
フローラたちと一緒に、ここまで歩いてくださったすべての方へ。
心からの感謝を込めて。
ありがとうございました。




