メロディーランド
窓口で、お金を払い、券を買い、ゲートから入るのも、前世では行けなかった、あそこと同じ。ちなみに、券はワンデーチケットのみで、銅貨三枚、かなり良心的な価格だ。
「ああ、お客さん、お客さん、折角、おいでになったのですから、記念のコスプレはいかがですか?」
貸衣装屋ということだろうか、ディズニ●スマイルでキャストと思しきドワーフの男が声を掛けてきた。
「へえー、面白そう!」
軽く、姫が乗せられたようなのだが、コスプレって何の? オレ、すでにメイドコスプレなんですがっ。
で、貸衣装屋に入ると、え、ええええ! なんだコレ! まず女性用、白い丸襟のブラウスに、各色取り揃えたリボンタイ、というか、スクールリボンじゃね? スカートも各色取り揃えた、プリーツミニスカート。
男性用は、もう、分かるよな? 白のワイシャツにネクタイ、スカートと同デザインのパンツ。
一番、お洒落な、エリナの見立てで、燕脂のデシン織りのスクールリボン、同色を基調にしたタータンチェックのミニスカを選んだ。ジャンも同色のネクタイとパンツ姿。
「なんすか? コレ、妙に、恥いんですけど」
「ゴチャゴチャ言わないの!」
コスプレを終えたら、早々にドロシーが。
「じゃ、今日は、私のご褒美デー、一日、お姉ちゃんと一緒だよ♪」
「私、お邪魔ですが、こっちのお二人と一緒でいいかしら?」
「そんなぁ〜 邪魔だなんて、ねぇ」
「もちろんっす。今日は楽しみましょう」
ということで、制服メロディーとなってしまった。
JKファッションを纏ってはいるが、幼すぎるJS二人連れ。背の低いドワーフ族の中ではそう目立たないが……。
「楽しいなぁ、なんだか、お姉ちゃんと二人ってだけで、ワクワクする」
「それは、よかった」
「もぅ、中途半端なお返事はダメ、って、ああああ! あの、ラナちゃんの狸耳、ほしいかも」
「え゛、子供っぽくない?」
そいや、説明してなかったな。この世界の本には、もちろん童話もあるわけで、今、子供たちに大人気の童話「鉾の勇者」に登場するラナちゃんという、狸耳の少女に、ちなんだカチューシャということだ。
「私、子供だもん」
「そういう設定だったな」
「いいから、買って、買ってぇ」
《ちょっと待てよ、リアルに魔王はいるんだよな? で、童話があるってことは、リアル勇者もいるんじゃないの? この世界》
《うむ、それについては、主様の持っているイメージとは異り、この世界の勇者というのは、三十数年ほど前から人族の間に噂され始めた寓話のことじゃ》
《三十数年前? アレ? そういえば、この世界、今更だが、元号というものは、あるのか?》
《神の名をとって、アル・カウン暦2024年》
《て、おい! オレが前世で死んだ西暦の翌年? オレはこちらの暦2023年に転生して来たことになるのか》
《うむ、意図は分からぬが、神は妙なことをする》
ディアの考察によると、神は、前世の記憶を持つ転生者に限り、どの時間に「置く」かについての、あるルールを決めているようだ。旧地球の西暦2023年に死んだ者は、こちらの年号でも2023年前後に転生する。
すなわち、前世で「勇者」が生まれた、ドラ●エIリリースの西暦1986年に死んだ者は、こちらの世界で、三十八年前に転生している、ということだ。
《こちらの年号で1986年以前には、勇者という「概念」は、なかったと?》
《そういうことじゃ、神は旧地球の発展した物質文明が、こちらに来るスピードを制御しているということかのぉ》
《そこまで、気にしてるのか? 神は……》
《前世の記憶を持つ転生者、もしくは、超例外、主様のような転移者だけとはいえ、時空をブラウン運動する魂の制御という、超絶面倒事をしているのじゃからなぁ》
《ディアは『だけ、制御』という言い方をしたが、全ての魂を操ることは、神とて不可能ということか?》
《さすがに、そうじゃと思うがのぉ》
《ま、神の意図は意図として、勇者は、神ではなく、旧地球の人の創作物が、転生者によってこの世界に齎された、ということだな》
《うむ、そういう理屈じゃが、なんじゃろ、妙な違和感も残るぞ》
《だな、なぜ、最近になって、勇者、勇者と言われ出したのか、だよね?》
《じゃな》
「お姉ちゃん、何、ボーッとしててるの! 今日は目一杯楽しもうって言ったじゃない!」
「ああ、ごめん、ごめん」
「あ、ゾンビーハウスだって、入ろ!」
「ドロシー、怖くないの?」
「そんなわけ、ないでしょ」
「だよねぇ」
ホーンテッドマンション風のお化け屋敷、黒っぽい椅子型ライドに乗って回るのもアレと同じようだ。満喫したのだろう、ドロシーは、とてもいい笑顔をしている。
「ああ、面白かったね!」
「ドロシーがお化けを殴っちゃわないかと、気が気じゃなかったよ」
「そんなことするわ……、ああああ、あれ、クレープって言うんでしょ、食べよ!」
「じゃ、買いますか」
「甘ぁぁい あ、お姉ちゃん、ほっぺにクリーム付いてる。えへへ、ペロリ」
童心に帰るというのは、まさにこのことなのだろう。二人で、目一杯、遊園地を楽しんだ。
「ああ、日が傾いてきちゃったね。楽しい時間はすぐ過ぎてしまう」
《相対性理論でも、そうじゃな》
《アインシュタインの名言かい?》
「じゃぁ〜 これで最後の乗り物になると思うけど、観覧車はどう?」
いや、さすがドワーフの技術、ここの観覧車はすごい、高さは二百メートルを超えてるんだよ。一周、クオーター(約30分)もかかるらしい。




