ゲイ・ボルグ
一斉にドラゴンに向かい走る、仲間たち。自信に満ちた足取りを見て、加速モードに入るを止めた、オレ。
一番先行したドロシーの傀儡は、ドラゴンの前に仁王立ち、一気にタゲを取った。素早い!!
この魔獣、以前のものと同じマラッコという名前で、形状もティラノサウルス風だが、なぜか緑色、うーーん、火は吹かない? って、もろ吹いてくるんですがっ。
だが、傀儡にはルル姫がかけた強力な防御魔法がかかっているから大丈夫? えええ! 軽く盾で受け流してるし。さて、そろそろ、オレの出番かな?
《よし、じゃ……》
《待て!》
《うん?》
「ドロシー、サンクス! 姉御、見ていてください!!」
オレがドラゴンの心臓を消そうとした瞬間、ジャンが叫んだ。
ええ! あれ、投げ槍だったの? ジャンはオリンピック選手、いや、クー・フーリンと言ってあげた方がいいよよな?
見事はフォームで、ドラゴンの心臓目掛けゲイボルグ(ctl+C)を投げた。槍は三十の鏃! にはならなかったが、真っ直ぐにドラゴンの胸のど真ん中、心臓めがけて飛んでいく。
グォォォ!!!!!
ズガガガガーーン
ギャギャギャーーーー
狙い違うことなく、槍は正確に精密にドラゴンの心臓を串刺しにした。穂先が背中に抜けているのが見える。
ドラゴンは断末魔の叫びを上げ、周りの木を薙ぎ倒しながら横様にどうと倒れた。大きな地響きに森の鳥たちが驚いて飛び去って行く。
「よっしゃぁぁ!!!」
ジャンとドロシーは笑顔でフィスト・バンプを交わした。アレ? オレって何か出番あった? 保護者、いや、運転手じゃね?
《ま、よいではないか、まさに、竹の子の親勝り、じゃな》
《だな、なんだか、安心したよ》
「凄いわ! 強化魔法かけるだけで、ヒーラーの出番なし、だなんて」
「分かったでしょ? お姉ちゃんたち、私たち、すっごく、すっごく、頑張ったんだよ!」
「ええ、ドロシーもジャンも、確かに凄い! 百折不撓というけれど、危ない目にも随分会ったんじゃないの? でも、私の想像を遥かに超えて、本当に素晴らしい!!」
「ねぇ、クリティ、みんなを守るなんて、肩肘張らなくていいって、分かったでしょ?」
「ですね。私は運転手やってるだけが、理想系かもしれないです」
四人は意気揚々と山を降りて馬車に戻った。続いて二頭目のドラゴンは青、三頭目は黄色だった。
ジャンの投槍、一発しか撃てないという難点はあるが、一対一のタイマン勝負では、ある意味、無敵だ。万一、外したらサポートしようと身構えていたが、要らぬ心配だった。
四頭目は金色でピカピカ光っていたのだけれど強さは同じ、やっぱりジャンのゲイ・ボルグ(ctl+C)であっさり串刺しになってしまった。
ドラゴンは、それぞれ、木、水、土、金の大きな魔石を落としてくれた。オレが心臓を貫くより少しばかり大きいようだが、荷運びはオレの仕事、PK操作で馬車の荷台に積む。
後半はパーティとしての連携も取れてきて、効率よく魔獣を処理できたこともあり、ギルマスの推定時間、法定労働時間よりも早い3フルタイム(約6時間)で四体の魔獣を倒しきった。
ネルヴェ郊外に着陸したら御者をドロシーに代わってもらい、冒険者ギルドまではクオーター(約30分)ほどで到着した。
「おお、思ったより早かったですね!」
「ちょ、ちょっと、クリティさん、魔石を運ぶの、手伝ってくださいよ」
確かに大きすぎる魔石、レンカ一人では運ぶのに骨が折れる。
「ああ、失礼しました」
「クエストの報酬は、以前、クリティさんにご対応いただいたのと同じ、治安維持懸賞金が上乗せとなります。金貨三十枚ずつを四人様の銀行口座に振り込んでおきますね」
「やりましたね! 姉御、大儲けっす」
「じゃ、今夜は祝杯を上げて、明日はお休み、ネルヴェの街をぶらぶらしましょうか?」
おお、こういうところのリーダーシップ、さすが姫様。
「で、まだ、お部屋の準備はできていないようだけど、祝杯は家でどう?」
「わーーい、ありがとう」
「えっ、いいんすか? ちょっと気がひけるなぁ〜」
「そう言うと思って、ちゃんと考えてあるから」
「じゃ、私は馬車を溺れる人魚亭に置いてくるね」
オレはギルドの中庭を利用させてもらい、一人ずつ姫の居室にワープさせていった。
「わぁ〜 すごい!!」
「さすが、王宮っすね」
姫の気を使わせない配慮とは、仲間だけで食事ができるようにすることだった。サイドルームの家具が取り払われ、大きなオーク材の長テーブルと肘掛け付きの木製椅子が八脚置かれている。
これを食卓、兼、会議机とするということだろう。こちらに食事を運ばせれば、王宮の者と顔を合わせることなくゆっくり食事もできる。
姫は早々厨房に行って残り物を出してもらうよう交渉したらしく、ほどなくビールと軽いおつまみをメイドが持ってきてくれた。




