ドラゴン再び
翌朝、オレと姫は王宮の居室で朝食、贅沢だよなぁ〜 を食べ、ネルヴェの冒険者ギルドにワープで戻った。ギルマス、ジャン、ドロシー、レンカが総出で迎えてくれる。
って、このギルド、旅の冒険者がそれほど来るわけでもないし、ギルマスの道楽でやってるようなものじゃないの? オレたち不在の時は、ジャンとドロシーがメインでクエストをこなし、ギルドを回していたみたいだし。
「お待ちしておりました。折角、クリティさんがお越しになったので、例のマラッコ、ドラゴン退治をお願いしようかと思いまして」
「また、この近隣に、出たんですか?」
「この周辺は大丈夫なのですが、各地のギルドも持て余しているようなのです。クリティさんの来訪に合わせ、クエストを四つほど引き取ってきました」
「私一人で片付ければ一瞬かもしれないですが、折角パーティを組んだのですから、みんなでやりたいと思います。いいでしょうか?」
《なるほど、それは、よい考え方じゃ》
《なんか、ディア、だんだん、考え方が人に近付いてきてないか?》
《アハハ、まぁ、主様の影響じゃ》
「ええ、もちろん、私もそのつもりでお願いしております。一頭、フルタイム(約2時間)として、ちょうど一日の法定労働時間かと」
って、このギルマス、なにげに前世ネタぶっ込んでくるよな。
ということで、ギルド前に停車している馬車に四人で向かう。この馬車、魔法で動くのはもちろんのこと、かなり丈夫そうな作りだ。
天蓋つきの箱馬車タイプで、両側には窓とドア、木製だがオフホワイトの耐水ペンキで綺麗に塗装され、要所は金属板補強、車体の下部にはサスペンションも完備している。
ドアを開け、木製の二人掛けベンチが、向かい合わせに設えられた客室に乗り込もうとした、オレ。
「アレ? 屋根のところに掛けてあるの槍じゃない?」
「姉御、気付いてくれましたか! あれは伝説の槍ゲイ・ボルグ! というのは嘘でそのレプリカです。レプリカとはいえ、結構な威力があるんですよ。今日は俺が血の滲むような鍛錬をした成果をご覧にいれます!」
ゲイ・ボルグも前世絡みの何か、かな? 文化だし。その槍は稲妻のような切れ込みがあるノコギリ状の穂先で、アイルランド伝承通りの形状をしている。レプリカであってもジャンの言うように立派な槍だ。
で、御者役は最初、ドロシーにお願いして街の外まで地上を走る。馬より速いんじゃない? いいペースで郊外まで出たらオレと交代した。
「離陸しますよ」
高空に出たらギルマスにもらった地図を頼りにワープする。一頭目のマラッコがいるという山の麓に着陸した。この辺りは峠越えの街道近くという位置からも、ドラゴン魔獣は旅人に随分迷惑をかけているようだ。
馬車を置いて山道を四人で登った。山の植生は、ブナ、ナラ、カシ、広葉樹が多いようだ。秋には全山が黄色に染まりそうだが、紅葉にはまだ間があるだろう。
ドロシーは戦闘型の傀儡を出して連れ歩いている。普段は二十センチほど、フィギュアサイズの傀儡だが、パペッティアの魔力により巨大化し、その姿は、大きな盾と片手剣を持った、身長二メートルほどの巨大な甲冑、と表現すればいいだろうか。
ちなみに、傀儡は軽い木製が一般的で、このように金属製で重量のある物を操作するのは、かなりの技量が必要だ。ドロシー、随分と腕を上げたのだろう。
「ドロシー、この傀儡がパーティの盾ってこと?」
「そうよ、お姉ちゃん。お金を貯めて強い傀儡を作ってもらったの」
「凄いね、ドロシー、ちょっと見ない内に、随分と頑張ったんだねぇ〜」
「お姉ちゃんに、褒めてもらえると嬉しさ百倍」
と言って、いきなり抱きついてきた。
「ちょっと、クリティは、私のものだからね」
《モテモテ、じゃのぉ》
《揶揄うなよ》
《いいか、今日は、出しゃばるでないぞ》
《分かってるって》
「そろそろ、バフ、かけておくね」
「大きいお姉ちゃん、ありがとう」「お願いするっす」「OK」
「豊かなる大地よ、土の精霊よ、その寧静なる御心をもって、この者たちを守れ。トゥエイボア!」
ちょっ! 何コレ! アクスレピオスの杖が効いているのは分かるが、物理魔法完全防御に近い、ダメ8〜90パーセントカットだと思うが。堅過ぎる守りじゃね?
《皆、成長しておる。守る、守る、と肩肘張るのは止めた方がよいのぉ》
《ご忠告痛みいるが、さっきから、ディア、「人らしい」を通り越して、母親みたいだぞ》
《うむ、母娘とは、主様と切っても切れぬ縁で結ばれたということ、褒め言葉と取っておこう》
クオーター(約30分)ほど街道沿いに山道を行くと、大きな魔獣の気配を感じた。近くにいるな!
「みんな、近い、気をつけて! って、え! 走っちゃダメ。魔獣の近くでは走らないって、小学校で教わらなかった?」
あ、「小学校」って言えた。て、言ってる場合かっ、危ない、危ないから!!




