エルネスト外伝・【破砕】
帝都郊外、黒煙立ちのぼる鉱山街道。
鎖に繋がれた亜人の列を守るように、帝国兵の一団が槍を並べていた。
奴隷を処刑場へ送る「見せしめの行軍」だ。
そこに――地を震わせる巨影が現れた。
「……あれは……鎧か!?」
赤銅の巨体。胸で脈打つ魂殻の光。
【魔導鎧】を纏ったエルネストが前進する。
「全軍、構え!」帝国兵の怒号が響く。
矢が一斉に放たれ、炎の呪文が空を裂いた。
だが――
ゴウッ、と音を立てて光の膜が走り、全てを弾いた。
鎧の表面には傷一つ残らない。
「お、俺たちの魔法が効かない……!?」
狼狽える兵士たち。
その頭上で、涼やかな声が響いた。
「――森よ、風よ、彼らの道を開け」
セレスティアが両腕を広げ、詠唱を解き放つ。
「エル・サルヴァ・ヴェントゥス!」
突風が渦を巻き、砂塵を巻き上げ、槍列を粉砕した。
帝国兵が目を覆う間に、奴隷たちの鎖が斬り落とされる。
「走れ! 檻の外へ!」エルネストの咆哮が大地を揺らした。
解放された獣人たちが武器を取り、ドワーフが戦鎚を振るう。
人族の反逆者が声を合わせる。
「自由のために!」
炎と風と鉄が交錯する中、エルネストの鎧が突撃した。
大盾を砕き、槍を折り、敵兵を薙ぎ倒す。
その背を守るように、セレスティアの光が舞い、
ティリスが叫ぶ――
「これが……これこそが、私たちの革命軍だ!」
赤銅の巨体が立つたび、帝国の威光が崩れ落ちていく。
その日、地下工房で生まれた“ひとつの鎧”が、
奴隷の列を解き放ち、帝国の心臓に最初の裂け目を刻んだ。
夜空を焦がす炎の中、エルネストは言葉を刻む。
「我らは愛するものを守るために闘う。そして、革命の為に勝利するのだ!さもなくば死すか!恐れるものなど無い!」
その咆哮は、処刑場を目指す鎖を砕き、
やがて帝国そのものを砕く序章となった。




