16 森の中
時刻はまだ昼過ぎ、この世界に季節の概念があるのかは分からないが、かなり涼しい。
「ナバルって、肉弾戦の方が得意なの?」
「一応魔法使いなんだが...」
俺らは今、森にいる。そう、森。英語で言うとフォレスト。
戦闘経験があまり無いパーティーなので、魔物と戦闘して慣れようという魂胆だ。
「ここら辺はあんまり荒れてないから、強いモンスターはそうそう出てこないよ」
「荒れてる地域とかあるのか?」
「ここら辺だったらガルバーナから東の方面にある『黒の山』が一番荒れてるかな」
ここはガルバーナから西にあるから荒れていないのだろうか。
それはともあれ、荒れていないのに越したことはないだろう。
「俺だって、できるなら前衛職になりたかったんだけどなぁ...」
未だにナバルは悩んでいるようだ。
「俺だって同類なんだけど」
どんな職業かなと行ってみたらまさかの初級職。それでいて一人だけが持てるユニークスキルが動物愛好家って...。まだナバルの方がマシだろう。
「...そう考えたら楽になってきたな」
「クソォ!」
「あはは...」
まだ魔法使いが良いよ!なんだよレンジャーって!まあ名前だけ見たらかっこいいけども。
「そういえば、ナバルとマコトはどんなスキルを覚えてるの?」
アーリエが、首を傾げながら言ってきた。
俺は『トラップ』と『スピードレッグ』なのだが、ナバルはどうだろうか。
「俺は『ミニファイア』とか『ミニアイス』を覚えてるな」
「なるほど」
「ちょっと見せてくれよ」
名前だけ聞くと多分炎と氷なのだと思うのだろうが、どうなのだろうか。
「えーと、確か...『炎よ!』」
ナバルが叫んだと同時に、ナバルが持っている杖からアーリエを俺を包み込むくらいの炎が出てくる。かっこいい。
「んで...『氷よ!』」
またさらに杖から氷が形成され、発射された。
氷は、近くに木にぶち当たり、砕けた。当たったら痛そうだ。
「まだ初級魔法だけなんだねー」
「まだレベル一だからな」
「マコトはどうなの?」
「俺は『トラップ』と『スピードレッグ』を覚えてるな」
トラップとスピードレッグはどちらも魔力を消費するスキルで、トラップはその場に相手を拘束する罠を仕掛けるスキル、スピードレッグは自分の脚力を強化し、速く走れたり高く跳べるようになるスキルだ。
「俺も見せたんだからな、見せろよ?」
「はいはい、分かりましたよー」
どんな風に発動するんだったか、確か、頭の中でイメージすれば良いんだったか?
「よっと」
俺は地面に手を伸ばし、トラップを作るイメージを具現化する。
すると、手を置いた辺りが光を帯び、そのまま地面に収束していった。
「はい完成、もうここにトラップがある訳だ。さて、誰が引っかかる?」
「マコトが引っかかれば良いじゃん」
「これ、術者は引っかからないんだよな」
俺は、さっきトラップを仕掛けた所を踏みながら言った。残念ながら、事実である。まあ俺としては残念では無いが。
「じゃあ、俺が引っかかろう」
ナバルはそう言いながら、一歩前に踏み出したが、そこで止まった。どうやら躊躇しているらしい。
「大丈夫だぞ?痛く無いと思うし」
「そ、そうか」
ナバルは足を恐る恐るトラップに近付けさせ、意を決したのかズドンとそこに足を当てる。
「ぐっ!」
それと同時に、地面から光の縄が飛び出て来て、ナバルを絡め拘束する。あ、やばい、めっちゃ締め付けてる、やべっ。
「いっ!これなんか凄く痛いんだが!ちょっ、おまっ」
「どどどどどどうすれば」
正直に言うと、解除方法が分からない。どうすれば良いんだ。
「レンジャーのスキルのマニュアルがグランドギルドから配られなかった?」
「そ、そうだ!確かここに...」
俺は鞄からマニュアルを取り出す。
トラップ
・敵を拘束する罠を作り出す事ができます。
・敵を拘束したら、締め付けて、敵の体力をじわじわと削っていきます。
・一分経ったら解除します。
「一分経ったら解除だってよ」
「マジかよ!」
でも一分だ、多分もうそろそろ...。
「...ふう、やっと解けた」
「なんか、ごめんな」
今回は、俺が悪いので、謝っておこう。
「まあ、良いんだが。それより、スピードレッグの方を見せてくれよ」
「お、おう、そうだな」
スピードレッグの発動方法は確か...。
「...待って、みんな、来たよ」
突然、アーリエがそんなことを言った。
「来たって、まさか」
こんな状況で、来た、と言われるとアレしかない。
「トイレか?」
「殴るよ?」
筋肉ムキムキの魔法使いの需要とは。




