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9/15

成人映画館で――「見るだけですよ。先輩のこと、触っちゃダメですよ」

奈緒は向かいに座る美咲を、少し不思議そうに見ていた。


「先輩、前はもっと分かりやすかったですよ」


「何が?」


「私がちょっと意地悪すると、すぐ困った顔して。でも、本当は嫌じゃないのが丸分かりで」


奈緒は美咲の顔を覗き込む。


「今日はなんか……一回、自分の中で受け止めてる感じ。前より、簡単に揺れなくなったっていうか」


少し間を置いた。


「何かありました? 先輩」


美咲はすぐには答えなかった。


挿絵(By みてみん)


奈緒はストローを指先で回しながら、ふっと笑う。


「この前、あんな姿を見せたから……私のこと、嫌いになったとか。まさか、それはないですよね?」


「そんなことないよ」


「でも、玲奈さんと、相当距離近かったですよね」


美咲の指が止まった。


「私が舞台に立ってるとき」


「……奈緒ちゃん、よく見てるね」


「見ますよ」


奈緒は少しだけ口を尖らせた。


美咲は観念したように、小さく息を吐いた。


「……玲奈さんに紹介してもらって、美術大学へ行ったの」


「美術大学?」


「人物デッサンのモデル」


奈緒の表情が変わった。


「学生が十数人くらいいて……」


美咲は少し言い淀む。


「裸で、モデル台に立ったの」


奈緒はしばらく黙っていた。


「全部、見られながら描かれた」


「先輩、それ……すごくエロくないですか?」


「奈緒ちゃん」


「感じました?」


美咲は答えなかった。


奈緒の目が細くなる。


「……感じたんですね」


美咲は視線を逸らした。


「玲奈さんばっかり、ずるいです」


「え?」


「そんな先輩のエロいところ、見られて」


奈緒は少し考えてから、美咲を見た。


「じゃあ今日は、私に付き合ってもらいますからね」


「どこに?」


「成人映画館。前から行ってみたかったんですけど……おじさんばっかりじゃないですか」


奈緒は少しだけ声を落とした。


「一人だと、さすがにちょっと怖くて」


「奈緒ちゃんでも?」


「私だって、何でも平気なわけじゃないですよ」


美咲は少し笑った。


「奈緒ちゃん、あのとき怖くなかった?」


「怖かったですよ。すごく」


「でも?」


「でも、途中から……見られてるのが気持ちよくなりました」


美咲は黙って奈緒を見る。


「私も、この前ちょっと分かった気がする」


「デッサンのとき?」


「うん。でも、奈緒ちゃんのときとは、少し違う気がする」


「でしょうね。場所も、見られ方も全然違いますし」


奈緒は椅子の背にもたれた。


「じゃあ、今日はもう少し近いところまで行ってみましょ」


喫茶店を出て、二人は並んで歩き出した。


大通りを一本外れると、古びた看板が見えてくる。


「先輩、あれです」


美咲は入口を見上げた。


「……本当に入るの?」


「ここまで来て、それ聞きます?」


奈緒は笑って、バッグから濃い色のメガネを二つ取り出した。


「これ、つけていきましょう」


「何これ」


「こんなところ入ってるの、知り合いに見られたらまずいでしょ」


美咲は少し呆れながらも、メガネをかけた。


「……用意よすぎ」


「準備は大事です」


奈緒も自分のメガネをかける。


「じゃ、行きましょ」


挿絵(By みてみん)


扉を開けると、少しこもった空気が流れてきた。


壁には派手な成人映画のポスターが並び、奥ではスクリーンの光が揺れている。


客席に目を向けると、ほとんどが一人で来ている中年か、それより上の男たちだった。


二人が入った瞬間、いくつもの視線がこちらへ向く。


挿絵(By みてみん)


奈緒が美咲の耳元へ顔を寄せた。


「先輩、やっぱり目立ってますね」


美咲はメガネの奥から客席を見た。


「……見られてる」


「そりゃそうですよ。若い女性が二人で来たんですから」


奈緒は少し笑って、美咲の腕を軽く引いた。


「奥、行きましょ」


二人は、周囲から少し離れた席を選んで座った。


スクリーンでは、もう映画が始まっていた。


「先輩」


「なに?」


「今日は、私があの舞台で感じたこと、先輩にもちゃんと体験してもらいますからね」


美咲が奈緒を見る。


奈緒は客席をちらりと見て、少し笑った。


「見られてるって分かってるのに、だんだん逃げたくなくなる感じ」


美咲はしばらく黙っていた。


それから、小さくうなずいた。


「うん、分かった」


奈緒はその返事を聞くと、少しだけ表情を緩めた。


「じゃあ、最初に準備しましょ」


「準備?」


奈緒は美咲のブラウスの襟元へ目を落とした。


「下着、先に外しておきましょう」


美咲は思わず奈緒を見る。


「……最初から?」


「その方が、途中で逃げたくならないでしょ」


美咲は一度、周囲を見た。


「……ここで、本当に?」


「ここでです」


奈緒は平然としていた。


美咲は小さく息を吐くと、まず背中へ手を回した。


ブラウスの下で、ブラのホックが外れる。


肩をわずかに動かし、片方ずつ肩紐を腕から抜いていく。


最後に裾から引き抜くと、ブラだけが美咲の手の中に残った。


奈緒が受け取ると、少しだけ笑った。


「先輩、ちゃんと外せましたね」


美咲は横目で、そのブラを見た。


奈緒は美咲の顔を覗き込む。


「下も、いけそうですか」


美咲は一瞬だけ黙った。


「……うん」


美咲は少し腰を浮かせ、スカートの中へ手を入れた。


ショーツの脇に指をかける。


ゆっくり腰から下ろし、太ももを滑らせる。


膝まで来たところで、美咲の手が一度止まった。


奈緒は何も言わず、美咲の顔を見ている。


美咲はそのまま片脚ずつ抜き、最後に足元から拾い上げた。


奈緒が受け取る。


そしてブラとショーツを、美咲の膝の上へ重ねて置いた。


「……奈緒ちゃん、ここ?」


「はい。ちゃんと見えるようにしておきましょ」


奈緒はブラとショーツが隠れないように、美咲の膝の上で少し位置を整えた。


美咲はそこへ目を落とし、わずかに頬を赤くした。


奈緒は不意に、美咲の顎へ指を添える。


「こっち向いて」


美咲が顔を向けた瞬間、奈緒の唇が重なった。


奈緒はそのまま唇を離さず、目を客席へ向けた。


少し離れた席の男が、二人を見ている。


その視線が二人の顔に止まり、やがてゆっくり下へ落ちた。


美咲の膝の上。


ブラとショーツ。


男の目が、そこで止まった。


奈緒は男の視線を確かめると、ようやく唇を離した。


男は三列ほど前の斜めの席にいた。


二人から視線を外さないまま立ち上がり、一列前へ移ってきた。


男は背もたれから身体を乗り出した。


顔まで、一メートルもない。


美咲の身体がわずかに強張る。


「奈緒ちゃん……近い」


奈緒は男をちらりと見て、美咲の耳元へ顔を寄せた。


「先輩、恥ずかしいですか?」


「……うん」


奈緒が小さく笑う。


「じゃあ、ちょうどいいです」


「え?」


「こんな近くまで来てくれたんですよ。先輩が恥ずかしがってるところ、ちゃんと見てもらいましょ」


美咲は思わず奈緒を見る。


奈緒はさらに声を落とした。


「先輩の脱ぎたての、ほかほかの下着。もう少し目につくところに置いておきましょ」


奈緒は美咲の膝の上から、ブラとショーツをそっと持ち上げた。


そして、美咲の右隣の空席へ並べて置いた。


挿絵(By みてみん)


奈緒の手のひらが、ブラウス越しに美咲の胸をゆっくり包む。


掌全体で柔らかさを確かめるように、下からそっと持ち上げた。


美咲の呼吸が少し浅くなる。


奈緒はそのまま親指だけを動かした。


薄い布の上を、乳首のまわりからゆっくり円を描くようになぞっていく。


「……奈緒ちゃん」


一列前の男が、背もたれからさらに身体を乗り出した。


奈緒はそれを横目で確かめても、手を止めない。


今度は親指の腹で、布越しに乳首を軽く押す。


美咲の肩が小さく揺れた。


その様子に気づいたのか、右側からもう一人が近づいてきた。


美咲の隣に置かれたブラとショーツの前で足を止める。


座席には座らず、その場にしゃがみ込み、下着をじっと見た。


それから、美咲へ目を上げる。


後ろの席でも、誰かが立ち上がった。


美咲のすぐ後ろへ移ってくる。


さらに右斜め前にも一人。


奈緒はそこで、声を潜めるのをやめた。


「先輩、もうかなり反応してますよ」


美咲が奈緒を見る。


「……奈緒ちゃん、声」


奈緒は構わず、親指の腹でブラウス越しに乳首を確かめる。


「ほら。布越しでも、こんなに膨らんで見えちゃいますね」


美咲の頬が一気に赤くなる。


奈緒は少し笑って、さらに続けた。


「すぐ場所が分かるから、簡単につまめちゃう」


親指と人差し指で、ブラウス越しにそっと挟む。


「……っ」


美咲の身体が小さく震えた。


「皆さんに、しっかり見てもらいましょうね」


奈緒の指先に、少しずつ力が入る。


ブラウス越しにつままれた乳首が、そのままゆっくり前へ引かれた。


「……っ、奈緒ちゃん」


美咲の身体が思わず奈緒の方へ傾く。


奈緒はゆっくり指を離した。


美咲はまだ少し息を乱している。


奈緒はその顔を見て、満足そうに笑った。


それから、周囲に寄ってきた男たちへ目を向ける。


「あ、皆さん。見るだけですよ。触っちゃダメですよ」


奈緒の手が、そのまま美咲の膝へ下りた。


指先がスカートの裾に触れる。


奈緒は裾を少し持ち上げ、露わになった太ももへ手を置いた。


「先輩、すべすべですね」


美咲は脚を組んだまま、視線を伏せる。


「脚、そのままでいてくださいね」


美咲が奈緒を見る。


「崩すと、あそこまで見えちゃいますから」


奈緒はスカートの前を残したまま、右側だけをさらに上へたくし上げた。


組んだ脚の脇から、右のお尻が少しだけ覗く。


奈緒は美咲を抱き寄せた。


右腕を背中から回し、組んだ脚の脇から覗いた右のお尻へ手を添える。


「先輩、ここもすべすべ」


掌がお尻の丸みに沿う。


左手は前からブラウス越しに胸へ伸び、乳首を刺激する。


美咲はそのまま奈緒に身体を預けた。


奈緒は左右から美咲を包むように抱え、そのまま唇を重ねた。


前には、身を乗り出した男。


右には、下着のそばにしゃがんだ男。


後ろにも一人。


さらに右斜め前から、もう一人が美咲を見ていた。


やがて奈緒が、先に唇を離した。


そのまま、周囲に寄ってきた男たちへ目を向ける。


その瞬間、美咲が奈緒の頬に手をかけた。


「先輩――」


振り向いた奈緒の唇を、美咲がそのまま塞いだ。


今度は、奈緒がしていたキスとはまるで違った。


美咲は奈緒の顔を引き寄せたまま、貪るように唇を求める。


奈緒が小さく息を漏らす。


美咲はそのまま奈緒の首へ腕を回し、身体ごと引き寄せた。


奈緒の目は、もう周囲の男たちへ向かなかった。


美咲を見つめたまま、強く抱き返す。


挿絵(By みてみん)


「……先輩、それは反則です」


美咲は何も言わず、奈緒を抱いたまま離さなかった。


奈緒の手が、美咲のブラウスのボタンへ伸びる。


「先輩の体、全部見せたくなっちゃいました」


「奈緒ちゃん……」


奈緒の指が、ブラウスのいちばん上のボタンにかかる。


ひとつ外す。


もうひとつ。


ブラウスが開き、乳房があらわになる。


美咲は止めなかった。


奈緒はその姿を見て、一瞬だけ動きを止める。


そして、次のボタンへ指をかけた。


その瞬間だった。


通路の奥で、白い光が揺れた。


懐中電灯。


奈緒の手が止まる。


「……先輩」


美咲も振り返った。


見回りのスタッフが、こちらへ近づいてくる。


美咲は反射的にスカートを下ろし、開いたブラウスの前を急いで閉じた。


挿絵(By みてみん)


奈緒もすぐに立ち上がる。


「あ、先輩。下着忘れてる」


隣の座席からブラとショーツをさっとつかむ。


「先輩、こっち」


奈緒が左側へ身体を向けた。


「すみません、すみません」


集まっていた男たちの間をかき分けるように進む。


美咲もその後ろに続いた。


二人はそのまま通路へ抜け、足早に出口へ向かった。


外へ出て、ようやく足を止める。


美咲が奈緒を見る。


奈緒の右手には、まだ美咲のブラとショーツが握られたままだった。


数秒、二人とも黙ってそれを見る。


先に美咲が吹き出した。


「……奈緒ちゃん、まだ持ってる」


奈緒も自分の手元を見て、ようやく笑った。


「あ、ほんとだ」


美咲もまた笑った。


挿絵(By みてみん)

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