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3/15

観覧車で――「もう我慢しなくていいです」

約束した休日、テーマパークのゲート前で、美咲は大きく手を振る奈緒を見つけた。


「先輩、こっちです」


人混みを縫うように駆けてきた奈緒は、美咲の前で立ち止まると、嬉しそうに顔を見上げた。


「本当に来てくれた」


「約束したでしょう」


「そうですけど。今日、ずっと楽しみにしてたんです」


奈緒はそう言って、美咲の腕へ自分の腕を絡めた。


ヨガの帰り道と同じ熱が、触れたところから伝わってくる。あの日の「大好きな先輩」という言葉が蘇り、美咲はふと奈緒の横顔を見た。奈緒は前を向いて、楽しそうに笑っていた。


二人は腕を組んだままゲートをくぐった。


奈緒が行きたいと言ったアトラクションを回り、ショップを覗き、気づけば一日が過ぎていた。会社では見たことのないほど無邪気にはしゃぐ奈緒につられ、美咲もいつの間にか、ヨガの日の気まずさを忘れて笑っていた。


夕方、二人は園内のカフェへ入った。


歩き続けて喉が渇いていた美咲は、運ばれてきたアイスコーヒーを飲み干した。


「先輩、少しは休めました?」


「奈緒ちゃんが次々連れ回すからでしょう」


「だって、まだ行きたいところがあるんです」


奈緒は笑いながらスマートフォンを確認した。その直後、表情を変えて立ち上がる。


「先輩、急いでください。観覧車の最終受付まで、あと五分です」


「五分?」


美咲も慌てて立ち上がった。


カフェを出ると、少し先に化粧室の表示が見えた。美咲は空になったカップを捨てながら、そちらへ目を向ける。


「その前に、お手洗いへ――」


「今から寄ったら間に合いません」


奈緒は美咲の手を取った。


「先輩、走りましょう」


返事をする間もなく、美咲は奈緒に引かれて走り始めた。


二人が乗り場へ駆け込むと、係員は時計を確かめてからゲートを開いた。


「お二人が本日最後のお客様です」


息を切らしたまま、美咲は奈緒と最終便のゴンドラへ乗り込んだ。扉が閉まり、外側から錠が掛けられる。


向かいの座席へ腰を下ろした美咲は、遠ざかっていく化粧室の表示を窓越しに見送った。走ったせいで、それまで意識していなかった下腹部の重さが急にはっきりする。


「これ、一周どのくらいかかるの?」


「景色を見てたら、すぐですよ」


奈緒は答えをぼかし、窓の外へ顔を向けた。案内板で一周約三十分と確認していたことは、美咲には言わなかった。


ゴンドラがゆっくりと上昇する。奈緒は子どものようにはしゃぎ、美咲を夜景のよく見える側へ手招きした。


「先輩、こっち。すごくきれいです」


美咲は立ち上がったものの、すぐに窓際へは行けなかった。脚を揃え、スカートの上から片手を下腹部へ添える。


「どうしました?」


「何でもない。少し走ったから」


そう答えて奈緒の隣へ腰を下ろしたものの、美咲の尿意は急激に強まっていた。走ったことで、それまで抑え込んでいた感覚が一気に目を覚ましたようだった。


座り直すたびに膝を強く擦り合わせ、下腹部へ力を込める。それでも切迫した感覚は少しも引かず、呼吸まで浅くなっていった。


街の明かりが眼下へ広がるころには、美咲は景色へ意識を向けられなくなっていた。ゴンドラが揺れるたび、身体の内側へ小さな衝撃が伝わる。


「奈緒ちゃん あと、どのくらい …… ?」


「まだ半分くらいです」


美咲の顔から余裕が消えた。


「私、お手洗いに行きたかったの」


ようやく打ち明けた声は、ひどく小さかった。奈緒は驚いた顔を見せたあと、美咲の隣へ座り直した。


「ずっと我慢してたんですか?」


美咲は膝を擦り合わせたまま頷いた。


「奈緒ちゃん 私、本 …… …… 当に もう駄目そう」


奈緒はすぐには答えず、観覧車のゆっくりした揺れだけが、二人のあいだに残った。


「あ もう …… …… 我慢できなさそう 」


奈緒は美咲の身体を横から抱き寄せた。


「もう我慢しなくていいです。私がいますから」


そう囁くと、奈緒は腕へさらに力を込め、美咲を自分の胸元へ強く抱き締めた。


美咲は奈緒の身体へしがみつき、目を強く閉じた。


張り詰めていた力が切れた瞬間、美咲の身体が、びくり、びくりと小さく震えた。


奈緒は逃がさないように抱擁を強め、その震えごと受け止める。


薄い色のスカートに小さな染みが浮かび、ゆっくりと広がっていった。


「ごめんなさい……」


「おしっこ、全部出しちゃってくださいね」


奈緒は美咲を抱いたまま、促すように背中をゆっくりと撫で続けた。


美咲の指から力が抜け、そのまま奈緒の肩へ顔を伏せる。


窓の外では、夕暮れの街が何事もなかったように流れていた。


やがて美咲の身体から震えが消えた。奈緒はすぐには腕を解かず、美咲の呼吸が落ち着くまで、その背中を撫で続けた。


挿絵(By みてみん)


それから美咲を窓際へ立たせ、濡れたスカートへ手をかける。


「脱いじゃいましょうねぇ」


奈緒は美咲の反応を確かめてから、濡れたスカートを腰から下ろし、足元から取り去った。


続いて、濡れた下着にも指をかけた。


美咲は思わず奈緒の手を押さえようとしたが、触れる寸前で動きを止めた。ほかに着替える方法がないことは分かっていた。


奈緒は濡れた下着をゆっくりと下ろし、それも足元から取り去った。


白いシャツを着ているだけで、腰から下は一糸纏わぬ姿になった。


目の前には奈緒がいる。美咲は下半身を見られまいとして、反射的に両脚を固く閉じた。


奈緒は濡れたスカートと下着をまとめ、自分のバッグへ収めた。それから拭き取り用のシートを取り出し、美咲の前へ屈んだ。


「はいはい。綺麗に拭きまちゅよー」


「奈緒ちゃん……」


「お漏らしした先輩は、いい子にしていてくだちゃいねー」


幼い子をあやすような口調だった。憧れている後輩の前で失敗しただけでも耐え難いのに、その奈緒から赤ん坊のように扱われ、美咲の顔が再び熱くなる。


「そんな言い方、やめて……」


弱々しく抗議しても、奈緒は楽しそうに微笑むだけだった。


奈緒はシートを広げ、美咲の固く閉じられた膝を見上げた。


「少しだけ脚を開いてくだちゃいねー」


美咲は顔を背けたまま、ためらいがちに膝を緩めた。


「もう少しです」


促され、美咲は震える脚をさらに開いた。


奈緒はシートを折り返しながら、肌へ残った水分を丁寧に拭っていく。わざわざ覗き込むような素振りも、手を止めることもなかった。


「あそこも全部見えちゃってまちゅねー。可愛いでちゅねー」


まるで拭き残しを確かめるような、何気ない口調だった。


美咲の顔が一気に熱くなる。


「奈緒ちゃん……そんなこと言わないで」


美咲が脚を閉じかけても、奈緒は慌てず、その膝へそっと手を添えた。


「まだ途中でちゅよー。いい子にしていてくだちゃいねー」


奈緒は何事もなかったように、新しい面へシートを折り返して拭き続ける。


美咲は窓枠を強く握り、顔を背けたまま、再び脚の力を抜いた。


「はい、あそこも綺麗になったでちゅよー」


拭き取りを終え、奈緒が膝から手を離すと、美咲はすぐに両脚を閉じた。


排尿したあとの処理を、まさか後輩の奈緒に、それも逃げ場のない観覧車の中でされるとは思ってもいなかった。


屈辱で胸が締めつけられる。それなのに、奈緒に股の奥まで拭かれ、赤ん坊のように扱われるほど、被虐的な甘さが意識の底へ滲んでいく。


恥ずかしくてたまらないはずなのに、美咲は奈緒を拒むことができなかった。


奈緒は使用したシートをしまい、バッグから黒く艶のあるレザーショーツを取り出した。掌へ収まりそうなほど小さく、下着に近い輪郭をしている。


「これに着替えてください」


「これを穿いて降りるの?」


「おしっこがついたスカートよりいいでしょ?」


そう言われると、美咲には返す言葉がなかった。


奈緒はレザーショーツを美咲の身体へ当て、丈と位置を確かめた。


「かなり身体に密着します。このまま穿くと内腿が擦れて痛くなりそうなので、先に保護クリームを塗ってもいいですか?」


美咲は視線を逸らしたまま頷いた。


奈緒はバッグから小さなチューブを取り出し、再び美咲の前へ屈んだ。


「では、もう一度だけ、あんよを開いてくだちゃいねー」


ようやく閉じることのできた脚を、また開かなければならない。美咲は窓枠を握り直し、ためらいながら膝のあいだを緩めた。


「もう少し開いてください」


美咲は顔を背けたまま、奈緒に言われたとおり脚をさらに開いた。


奈緒はチューブの蓋を外しながら、その脚のあいだへ視線を向けた。


その視線が太腿ではなく、さらにその奥へ向いているような気がしてならない。


奈緒と視線を合わせることもできなかった。視線を合わせた瞬間、本当に見られていると分かってしまいそうだった。


美咲は顔を背けたまま、窓枠を強く握った。


奈緒は、左右の太腿の内側――足の付け根から少し下の、歩くと擦れ合う部分へ、保護クリームを薄く伸ばしていく。


奈緒の指が動くたび、美咲の脚が小さく震えた。


「痛くないですか?」


「 大 …… 丈夫」


「もう少しですから、力を抜いてください」


美咲は窓枠を握ったまま、言われたとおり少しずつ脚の力を抜いた。


奈緒は左右の内腿へクリームを丁寧に伸ばし終えると、手を拭いて立ち上がった。


「終わりましたよ」


美咲はほっとしたように両脚を閉じた。


奈緒は黒いレザーショーツを広げ、美咲の足元へ置いた。


「はい、あんよを上げまちょうねー」


「自分で穿くから……」


「転んだら危ないでちゅからね。まず右のあんよからでちゅよー」


奈緒はレザーショーツの片側を広げたまま、美咲を見上げて待っている。


美咲は窓枠へ片手を置き、諦めたように右脚を上げた。奈緒がその足をショーツへ通す。


「はい、上手にできました。次は反対でちゅ」


美咲は窓枠を握り直し、言われたとおり反対の脚を上げた。


脚を上げるたび、隠したいところへ奈緒の視線が向けられているのを感じてしまう。美咲は顔を背けたまま、奈緒が足をショーツへ通し終えるのを待った。


奈緒はそのまま立ち上がり、黒革を美咲の腰までゆっくりと引き上げていく。


腰まで収まると、レザーショーツは身体の線へぴたりと沿った。丈は想像していたより短く、脚の付け根をかろうじて覆う程度しかない。


「奈緒ちゃん、これ……短すぎる」


「似合っています。先輩の脚、きれいですから」


奈緒は美咲の腰へ手を添え、レザーショーツの位置を整えた。それから指先を黒革の中央へ滑らせる。


股の中央だけ、縫い目がわずかに裂け、細い隙間ができていた。脚を揃えていれば黒革に隠れるが、大きく動けば裂け目が開いてしまいそうだった。


「先輩、ここ、少し裂けているんです」


「えっ 」 ……


美咲が確かめようと腰を引くと、奈緒は逃がさないようにその腰を支えた。


「脚を大きく動かすと、もう少し開いちゃうかもしれません。気をつけてくださいね」


そう注意されることで、美咲は黒革の中央にある細い裂け目を強く意識してしまった。


ゴンドラが地上へ近づく。


白いシャツと黒いレザーショーツだけで人前へ出ることを思い、美咲の身体が固くなった。


奈緒は窓際へ立った美咲の背後へ回り、腰へ両腕を巻きつけた。


「大丈夫。私が一緒にいます」


耳元で囁きながら、美咲の身体を自分へ引き寄せる。扉の向こうに係員の姿が見えても、奈緒は腰から腕を離さなかった。


挿絵(By みてみん)


ゴンドラが着地し、扉が開いた。


美咲は奈緒に腰を支えられたまま、白いシャツと黒いレザーショーツだけの姿で最終便を降りた。


「次、行きましょう」


奈緒が指した先では、夜の明かりに包まれたメリーゴーラウンドが回っていた。

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