第101章 新新形宇宙港、新新形国際空港の活況とスペースジブリ
第101章 新新形宇宙港、新新形国際空港の活況とスペースジブリ
新新形宇宙空港と、漆黒の宇宙空間に浮かぶ『ホテル・ホワイトラビット・スペースステーション』を結ぶ定期往来シャトル『ビーイング B7147型』。一日一便運航されるこの宇宙旅客路線は、開設以来、連日全席満席という異例の大盛況を記録していた。
ドレスやスーツを着た一般の観光客から、宇宙環境での研究開発を狙うグローバル企業のビジネスマン、さらには新形テレビ20をはじめとする世界の報道陣に至るまで、大勢の人々が「普通に宇宙へ旅立ち、ホテルで寛ぐ」という新しい時代の体験を求めて殺到していたのだ。
この空前の宇宙旅行ブームは、地上の交通網にも劇的な波及効果をもたらしていた。
新新形宇宙空港に隣接する「新新形国際空港」には、この宇宙路線への乗り継ぎ(トランジット)を目的とした旅客が世界中から押し寄せていた。北米、欧州、中東、アジア、南米といった地球上のあらゆる主要都市から、新新形国際空港への直行便開設要望や増便要請が、各国の航空会社や政府から南越エアラインズおよび空港管理会社へ連日のように殺到していたのだ。
「古賀社長、滑走路もターミナルも完全にパンク状態です! トランジット客の滞留時間が伸びており、駐機場の空きを待つ旅客機が上空で待機する事態が発生しています!」
報告を受けた南越重工業社長の古賀は、作業ヘルメットを小脇に抱えながら、新新形国際空港の管制塔から広大な滑走路を見下ろしていた。
「よし、迷っている暇はない。新新形国際空港の第二次拡張工事に入るぞ!」
古賀の即断即決により、すぐさま南越建設の全自動AI施工部隊が投入された。寺尾沖の海上をさらに埋め立て、四本目・五本目となる四千メートル級の超大型滑走路を増設すると同時に、宇宙港とダイレクトに結ばれる超大型トランジット専用ターミナル「スペース・ゲート・ターミナル」の建設が開始された。
だが、この大規模な空港拡張工事の指揮を執る一方で、古賀のもとにはNASA(アメリカ航空宇宙局)および国連宇宙局から、もう一つの極めて重大かつ緊急を要するプロジェクトの依頼が持ち込まれていた。
それは、地球周回軌道上に漂う莫大な量の「スペースデブリ(宇宙ゴミ)」の回収・保管システムの構築であった。
過去半世紀以上にわたる人類の宇宙開発により、打ち捨てられた人工衛星の残骸、ロケットの段、衝突によって飛散した細かな金属片といったスペースデブリが、地球の周囲を猛スピードで周回していた。これらは時速二万八千キロメートルという弾丸以上のスピードで飛び交っており、万が一にも運用中の宇宙ステーションや、一日一便運航されている定期シャトル『B7137型』に衝突すれば、破滅的な惨事を引き起こしかねない巨大な脅威となっていた。
「古賀社長、民間宇宙旅行の時代を完全に定着させるためには、この『宇宙のゴミ問題』を避けては通れません。地球の軌道上を安全な航路として維持するための『宇宙の清掃システム』を、南越重工業の技術で創り出してほしいのです」
NASA局長からの切実な要請を受け、古賀のモノづくり魂に激しい火がついた。
「任せておけ! 乗り物を造るだけが俺たちの仕事じゃない。人々が安心して旅できる道を綺麗に掃除するまでが、交通事業者の責務だ!」
古賀は即座に南越重工業、南越建設、本産自動車、梅内製作所、後田製作所の精鋭エンジニアを集集させ、プロジェクトを発動させた。
開発すべき要素は三つあった。
第一に、新宇宙ステーション『ホテル・ホワイトラビット・スペースステーション』の最外郭に連結させる、回収したデブリを安全に搬入・分類・保管・リサイクルするための「デブリ回収・保管専用デッキ」。
第二に、宇宙空間を自律飛行し、多関節の高性能メカニカルアームや特殊捕獲用ネット、ミリ波AIレーダーを駆使して大小様々のデブリを寸分狂わずに安全に捕獲する、小型無人捕獲機『ラビット・クリーナー』の運用および整備を行う「キャッチ・メンテナンスデッキ」。
第三に、ステーションで回収・保管された大量のデブリ(金属資源)を、定期的に地上(新新形宇宙空港)へと輸送し、地上のリサイクルプラントへ引き渡すための専用大型宇宙貨物シャトル『ラビット・カーゴ(B7147C(貨物機モデル))』の開発・製造であった。
古賀の指示のもと、南越グループの各部門が一斉に動き出した。
南越重工業の宇宙ギガファクトリーでは、無人捕獲機『ラビット・クリーナー』の製造が急ピッチで進められた。梅内・後田製作所が誇る油圧・アウトリガー技術とナノセラミック技術を応用したメカニカルアームは、1ミリ以下の小さな金属片から数トンにおよぶ大型衛星の残骸まで、相手を破壊して新たなゴミを出すことなく優しく包み込むように捕獲する精度を実現した。
また、貨物シャトル『ラビット・カーゴ』には、南越物流が培った全自動荷役システムが搭載され、無重力空間でも安全かつ超高速でデブリの積み降ろしができるよう設計された。
そして、南越建設のAI自律型宇宙施工ロボット『ラビット・ビルダー』群が、高度四百キロの宇宙空間で新たなデッキの建設を開始。わずか数ヶ月という異次元のスピードで、新宇宙ステーションの東側に武骨で堅牢な「デブリ回収・保管デッキ」と「キャッチ・メンテナンスデッキ」が連結完工された。
「各部署、最終チェック完了! スペースデブリ回収システム、作動開始!」
新新形宇宙空港の総合管制室で、古賀が力強く宣言した。
新宇宙ステーションの「キャッチ・メンテナンスデッキ」から、十機の小型無人捕獲機『ラビット・クリーナー』が、漆黒の宇宙へと静かに滑り出していった。
AI画像認識とミリ波レーダーが、周囲数千キロメートル以内に点在するスペースデブリを即座に捕捉。群れをなして飛行する『ラビット・クリーナー』は、弾丸のような速度で飛来する危険なロケット部品や金属片に精密に軌道を合わせ、しなやかなメカニカルアームで見事に捕獲していった。
捕獲されたデブリは、ステーションの保管デッキへと安全に運ばれ、自律型ロボットによってアルミ、チタン、レアメタルなどの素材ごとに完璧に分解・分類された。
そして、保管デッキがいっぱいになると、新新形宇宙空港から飛来した大型貨物シャトル『ラビット・カーゴ』のコンテナへと積み込まれ、地球へと安全に持ち帰られた。持ち帰られた金属資源は、南越重工業や南越建設の材料として100%再利用されるという、見事なサステイナブル・循環システムが確立されたのだ。
「古賀社長! 軌道上の危険デブリの回収率、すでに70%を突破しました! シャトルやステーションの安全航海確率が大幅に向上しています!」
管制室モニターに映し出される綺麗な地球の周回軌道を見つめながら、エンジニアたちが歓声を上げた。
NASAや国連からは「地球の軌道を破滅から救った歴史的偉業」と惜しみない称讃が贈られ、新形テレビ20の宇宙支局からも、危険なデブリが鮮やかに回収されていく映像が世界中へ生中継された。
地上では新新形国際空港の拡張工事が進み、空では『ラビット・クリーナー』が安全な航路を守り続ける。
管制室の窓から、夕空へ向けて飛び立っていく定期シャトルを見送りながら、古賀はヘルメットをかぶり直し、満足そうに力強く頷いた。
「よし! 道は綺麗になった! これで今日も明日も、誰もが安心して宇宙へ旅立てるぞ!」
赤字ローカル線の現場から始まった男たちの情熱は、地上と宇宙の架け橋となり、人類の行く道をどこまでも清らかに照らし続けていくのだった。




