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第19-8話:信じること

「大和……その槍をどう出した」


「知らないわよ。異能が勝手に変わって……」


「違う。さっき具体的に、何をどう考え、どう念じたら出てきたと聞いてる」


「も、もっと遠くを攻撃したい……みたいな」


「なるほどな……次は大岩を砕くようなイメージを浮かべてみろ、大和」


 須藤はそうとだけ言い残し、再生を追いつかせまいと刀を手にしてまたもや黒太子のもとへと駆け寄っていく。

 砕く……砕く……。

 そんなイメージを必死に脳内で唱えると、再び無鋒剣(カーテナ)が再び光り輝きだす。

 

 けれど今度はさっきよりも長い間光を放ち、それでいてずっしりとした重さが手に伝わり——。

 そこに姿を現したのは、メロン大の鉄球を備えた鎖鉄球(フレイル)


 ——もしかしてだけど、イメージを具現化してくれるってこと?

 だとしても砕くってそういう感じ?もっとハンマーとかメイスとか、扱いやすいものを出してくれても。


 ただ確実なのは、長槍ほどの射程はなくって、近付かなければいけないこと。

 再び水を勢いよく切りながらエドワードの元へと踏み込む。


「ハッ……! 奇っ怪なものを持ち出してきおって!」


 持ち手を手に大きくスイングするけど、鉄球は虚しく虚空を横切る。

 生じた私の隙に攻撃を叩き込もうとしてくるエドワード、その隙を埋めるように須藤が前に出て攻撃を弾いた。

 その止まったエドワードの頭へ、ルイが更に光線で目潰しを与える。


「大和、肩を軸にしながら振るうんだ!」


「肩を、軸に……」


 ルイの助言を反復しながら、肩を軸にしながら鉄球を振るう。

 エドワードの外殻がまるで飴細工みたいにぼろぼろと崩れ落ち、エドワード本人の腕が顕になった。


「私の鎧が……!」


 骨にも応えたのか、苦しそうな息を上げるエドワード。

 そうだ、私たちが欲しかったのはこれだ……! エドワードの血塊を打ち砕く、手堅い一撃!


 これだとまだ剥がしただけ、浅い。間髪入れない追撃を。

 それに呼応するようにフレイルは無鋒剣(カーテナ)へと再び形を戻す。

 狼狽するエドワードへ駆け、その一閃を腕目掛けて浴びせた。


「ガアアアッッッ……!」


 けれど、真に目を見開いたのはその次の瞬間で。

 まるで無鋒剣(カーテナ)が幻かのように、ただただその腕へ無鋒剣(カーテナ)()()()

 にも関わらず絶叫を上げるエドワード。右腕を抑えながら、その場に両膝を突いた。彼の荒げる吐息が、この川辺一帯に響き渡る。


 何が起こったのかは分からない。エドワードの腕からも血が一切出ていない。

 激しい痛みを抑えるように蹲るエドワードへ、次の一撃を————入れさせてはくれない。

 左腕を振るい、追撃を加えようとする私や須藤を退け、そして初めて自分から後ろへと下がっていった。


慈悲の剣(カーテナ)よ……! 英国王の象徴よ……! なぜ私に歯向かう……! なぜその女に味方する……!」


「知らないわよ、そんなの」


 相変わらずこの剣に執着を見せるエドワード。

 そんなに欲しいなら檻にぶち込んだあとにくれてやりたいけど、私の手から離れると消えるもんだからそうもいかない。


「いいぞ大和。だが……これでは足りん、もっと強力な一撃が欲しい」


「強力な一撃って、どんな」


「知らん。強ければ強いほどいい。その時間は俺たちが稼ぐ、いいな」


 すると私の返事を待つことなく前へと切り込む須藤。

 近付く夜明け、彼が向かうエドワードの背にそびえ立つ山の向こうから明光が差す。


 エドワードの方もただやられているだけじゃない。

 須藤が傷つけた傷から血を取り出し、それを更に全身へと纏わせる。

 

 荘厳な獅子の意匠をしていた前腕部。

 それも今となっては象徴も美しさも全てかなぐり捨てた、ただの棘の付き棍棒に成り下がっていた。


 更に分厚くなる彼の装甲……鈍重なあの戦車をもっと強く、激しく、一撃で打ち砕くようなイメージ。

 エドワードの鎧を全て打ち破り、この戦いを終わらせる武器…………!


 私の役割を確かめ、そう決意するとともに無鋒剣(カーテナ)が再び光り輝き出す。

 前衛の須藤、後衛のルイ、切り札を用意する私。これは怠慢なんかじゃない、役割の差。


 けれど、須藤に前衛を担わせすぎた。変形の間にも、須藤は苛烈に攻めることが出来てない。

 最悪の場合を想定してか、ルイもこの戦いで初めて武器を抜き右手に剣を手にしていた。


 長い、長い変形時間。

 もう時計の長い針が一周するほど待ったけれど、無鋒剣(カーテナ)の光は止まらない。

 そして——長い鍔迫り合いを経て疲れを溜めていた須藤が、刀で攻撃を受けつつもエドワードの一撃で跳ね飛ばされる。


「ッ……!」


 瞬間、私の方へギロリと白い眼光が突き刺さる。

 厄介な前衛を潰した、だから秘策を準備している奴を殺す。

 当たり前の動きなのに、この状況で的確な動きをしてくるのが歯がゆい。


 無鋒剣(カーテナ)を持たない私の前に出るルイ。

 けれど……彼じゃダメだ。あのジャンに対しても劣勢だった彼を、私は見てしまってる。

 彼も今回ばかりは「大丈夫」とは言わず、奥歯を震わせながら剣をエドワードの方へと向けている。


 光球をいくつも並べ、エドワードの胸の外殻に火を着けるも。

 止まらず、身を焦がしたまま燃え盛る外殻を纏い、一歩、また一歩と歩みを進める。


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