↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
87/121

第19-3話:信じること

「なんでっ!?」


 あれだけゲクランが霊兵を巡回させていたのにまだ敵霊兵の取りこぼしがいたの!?

 それともまさか、まさかだけど…………!


「くっ……! エドワードめ、恐怖で得た威信でまた源泉を設置したな!」


 そして、その最悪の可能性は見事当たってしまった。

 私があれだけ苦労して壊した源泉を、こうもいとも簡単に。


「はっ、私が気が付かぬはずがないだろう。源泉が壊されれば腸の蠢く感覚で分かるのはゲクラン、お前も同じはずだろう?」


「源泉をそう簡単に置けるとは、どれだけ人を恐怖させ威信を集めたと……!」


 言の葉の応酬を繰り返す二人、須藤がその隙に斬りかかるもエドワードに弾かれる。

 頭じゃなくて全身の外殻から潤いが失せ、既に外殻も乾ききっていた。


 通らない攻撃、打開できない状況……けど、今私が出来ることが確かに一つあった。

 前線で戦う二人を、少しでもエドワードとの戦いに集中させる……!

 また源泉を探して破壊する、それは私にしかできない。


 そうやって悲鳴が聞こえた側の土手に足へ掛けたときには、エドワードが私のすぐ横にまで迫ってきていた。

 ゲクランの横を突っ切り、エドワードが私のところまで詰め寄ってきているのを黒鷲(アドラー)だけが辛うじて見ていた。


「ッ!?」


 咄嗟に無鋒剣(カーテナ)で受け止めるも、不安定な姿勢で受け切ることができず私の身体は川の中へ再び落とされる。

 さっきより格段に早い速度、それに重たい攻撃。

 

「これが……威信の効果だっていうの……!?」

 

 水の底に手を突き、疲労を無理くり押し込めつつも立ち上がる。

 再び広がる恐怖、助けはない、軍も通用しないって言っていた。

 ここで乳繰り合ってるだけじゃこれの繰り返しの堂々巡り。

 これ以上被害を広げないためにもこの場で! 今! 討ち倒すしかないのに……!

 その決意が固まるにつれて、どうやってという疑問がどんどんと肥大化して頭を圧迫してくる。


 三人の剣、黒鷲(アドラー)の突撃、はたまた徒手空拳、どれも通じる未来が見えなくて。

 どうやって、どうやって、どうやって…………!


「……ん?」


 三人でエドワードを取り囲みながら、必死に状況を打開しようと思いを凝らしていたとき。

 目にゴミでも入ったのか、視界に映る景色に少しだけノイズが入った。

 目を擦ってみるも、そのノイズは全く直らない。


 視界の外から一本のごく細く白い筋……いや、もはや筋というよりも視界が辛うじて認識できるほどの蜘蛛の糸のような、それがエドワードを中心にどこかから伸びてきていた。

 光の筋の大元、そこにあったのは橋があった場所からこちらを見下ろすルイと、その横に侍っていた光球。


「…………なんだ、これは」


 エドワードもそれに気がついたのか、右肩を叩くとともにそこから火があがる。

 

 ……そうか!

 エドワードのあの外殻は血塊……つまりは可燃物の塊。しかも乾いているから良く燃えるのか!

 

 光線として放っていた光を収束させ、紙に虫眼鏡を照射し燃やす要領でエドワードの装甲を焦がし、燃やした。

 ルイの誇らしげな表情を視界の端で捉えるとともに、エドワードの右半身が勢いよく燃え上がる。

 

 火を前にしてか、小さな動作に狼狽を混じらせるエドワード。

 あいつが戦うことだけしか考えていない狂戦士なら燃やしたまま戦っただろうけど……どこまでいっても人間は人間。

 身体の燃える恐怖に抗うことが出来なかったのか、エドワードはその身体を倒して水中でその身を転がした。


 ——そう、エドワードが自ら身を水へ晒した。


「……ッ! 今だッ!」


 ゲクランのその合図で前に出る須藤、幾らか離れたところにいた須藤もそれに続く。

 悠長にしているとまた外殻を再硬化される、それまでに叩き込めるだけのダメージを通す!


 さっきみたいな戦力の逐次投入でもなく、私が一歩遅れているだけでほぼ同時の投入。

 消化し立ち上がったエドワードも初めて両手に埋め込まれた剣で能動的に守りに周り、須藤とゲクランの剣を受け止めた。


 両腕で受け止めた、ということは…………!

 エドワードの正面から駆け、がら空きになったエドワードの胸元へ一閃を浴びせる。

 濡れた段ボールをカッターで斬るような、手堅く、しかし防ぎきらない手の抵抗感。

 それとともにエドワードの胸元から血が滲み、その外殻の下から苦悶の声を漏らしながら私へその白い眼光を向けてきた。


 通ったっ! けど浅い!

 この一撃を決めたのが須藤じゃないのを悔いつつも、続いて浅い連撃を三人で浴びせる。

 時間が経つにつれどんどんと強くなる外殻の抵抗感、三十を数える頃には既にあの硬い外殻へと戻っていく。


 そこへ続いて差し込まれるルイの光線、しかもルイの高級にはまだまだ余裕がある、残光が途切れる心配もない。

 燃やす、軟化させる、斬る、燃やす、軟化させる——。

 防御を剥いだエドワードの異能は、血を作れてしぶといだけの鈍い戦士。


 しかも須藤が鬼のように剣戟を浴びせ、ついにその外殻の一部を剥ぎ落とした。

 いける。やれる。勝てる。

 また帰れる、解決できる、リヴァにも頼らずに済む。


 見えてきた勝ち筋に高揚を安堵を感じた時…………異変は、一番前に立ってエドワードと打ち合っていた須藤に現れた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
analyze
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。