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第18-4話:現代の騎行

「——ッ!」


 斬る、壊す、進む。

 町田さんの言うとおりに、小川の上流を目指して進むたびに霊兵の密度が上がっていく。

 ……そして、逃げ遅れたのかその場で斃れている人たちの数も。


 黒鷲(アドラー)で捜す限りまだ無事な一般人の姿も見当たらず、ここら一帯は既に「終わった」あとで、もっと言えばそれだけ長い間霊兵たちが屯していたとも言える。


「ブーッ、プーッ!」


 そうやって川に沿って山間の奥へと入っていっていると、正面から一台の大型トラックが突っ込んできた。

 前には数体の霊兵、トラックはその進路を変えながら急停止すると、それを霊兵たちが取り囲み始めた。


「クソっ!」


 させるものかと黒鷲(アドラー)を攻撃へ回しながら、トラックを囲んでいた霊兵を掃討すると。

 眉を寄せて怒りと困惑を混ぜたような表情をした運転手が、窓を開けてその姿を現した。


「この時代に弓だの槍だの、なにがどうなってんだ!? てかお嬢ちゃん誰だ」


「すみません、細かく説明してる暇はないんです! さっきの奴らは轢き殺すつもりで街の東側まで逃げてください!」


「っていうけどよお、嬢ちゃんの方こそ向こうには行かないほうがいいぜ。さっきみたいなのがウジャウジャいやがる」


 さっきみたいなのがウジャウジャ……?

 霊兵が一箇所に沢山いるってことは、つまり……!


「ありがとうございます!」


「おおっちょっと!」


 運転手が呼び止めるのを振り切り更に山間の奥へと入ると、建築会社の社名が入った薄く汚れたコンクリート建築に、数にして五十やそこらの霊兵たちが張り付いているのが視界に入った。

 今までにない密度……あそこだ、あそこに違いない。

 もはや門すら無視してフェンスを乗り越えながら敷地へと入ると、その音に気がついた霊兵が一気にこっちへ振り向く。


 数が多い、それにこいつらに感けている暇なんて。

 偵察すらもう要らない、黒鷲(アドラー)を近くへ呼び戻して屋上にいた弓兵を薙ぎ払い、角材を掴んで近付いてくる霊兵をまとめて掃討する。

 飛んできた矢を弾き、槍を叩き折り、装甲を裂く。


 そうやって霊兵を瞬く間に半数以上減らしたとき、建物の影から様子の異なる霊兵が一体出てきた。

 他の霊兵と同じ透明な身体を持った両手剣の霊兵、けれどその青さが圧倒的に濃ゆい。

 気の所為かその装いも他の霊兵と比べて豪華で、何かが違うことぐらいは私にも分かった。


「……!」


 瞬間、踏み込んでくるその霊兵。

 早い、そして無鋒剣(カーテナ)で受け止めた剣も重たい。他の霊兵と違って、私との鍔迫り合いが成立するのか。

 他の霊兵とは何かが違うのを感じつつも——舐めてくれるな、私のことを。


 一歩距離をとり、無鋒剣(カーテナ)を思い切り上段に構える。

 がら空きになる脇腹、そうなれば相手は下段から切り上げてくるに決まっている。


 だから——そこから人間の速度を超えた切り込みで叩き切る。

 異能者だから成り立つ業、普通の人には真似の出来ない力任せの剣技。

 けれどそれでいい、相手を壊して守りたいものを守れるなら、武道として成立していなくたって。


 首を刎ねると、その霊兵は光の粒子となって消えてゆく。

 そうなればあとは掃討戦、黒鷲(アドラー)と協力して霊兵を次々と片付け——


 そして建物の中、事務室か何からしき場所にそれはあった。

 青白く光る、獅子や十字の文様が刻まれた魔法陣のような何か。冷気が出ているのか、冷房が止まっているのにこの部屋だけが冬場のように凍てついている。

 まるでファンタジー世界から出てきたような外見に気圧されつつも、それが目的の「源泉」だってことは理解できた。


 目の前で召喚された二体の霊兵を刺し壊しつつ、その上に立つ。

 冷える足先、夜目になっていたこともあってその淡い光がまぶしい。


 でも、詳しく観察している暇はない。源泉へと刃を突き立ててその表面を掻っ切る。

 すると一瞬眩い光を放出し——目を開けたときにはその光が失われていた。

 


 ——そこからしばらくしても、霊兵が再び出る様子はなく。

 ルイにスマホで確認を取ると「助かった」「よくやってくれた」と連絡を貰った。



「はあ…………!」


 これで、これで事態に収集がつく。

 確かなやりきったという感覚とともに、ここ一時間以上走りっぱなしだった脚を、キンキンに冷えた床へと着けた。

 あとは、エドワード黒太子をどうにかするだけで。


 安堵や疲れとともに、そのエドワードをどうにかする方法が思い浮かばないことへ小さく溜息をついた。

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