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第11-4話:私の手を掴むこと!

「きゃー!」


「「ッ!?」」


 庭園の傍に建っているショッピングモールのあたりから響く、甲高い女性の悲鳴が耳をつんざいた。


「向こうの方からだ……!」


「行こう、大和」


 ルイの言葉の通りに、横のレンガ造りの建物の間を縫うように広場へと駆ける。

 あーくっそ、さっきまではちょっと背伸びできて嬉しかったヒールが邪魔くさい。


 広場の方からは、顔に焦りを浮かべあからさまに動揺した人達がこちらに逃げ込んでくるのを目の当たりにして、向こうに何かがいるというその疑いは半ば確信へと変わった。


 レンガ造りの壁の終わり際、高電圧注意という注意書きがされた配電設備らしきボックスの裏へと隠れる。

 その裏からすっかり人が掃けた広場の方へと顔を覗かせると——。


「ねえルイ、あれなんだっけ」


 広場の真ん中に植わっていた一本の広葉樹の周りに、異様な外見をした二十体ほどの()()がたむろしていた。

 その装いは、頭にターバンを巻いたりアラビアンな鎧を身に着けたりなど様々。

 

 けれど、異様なのはその装いじゃなくて表情。

 比喩じゃない文字通り透き通った青白い肌を持つそれは、その表情が読み取れないどころか鼻や口などの顔のパーツが一切無いのっぺらぼう。

 手足の動きや背丈こそ人間のそれではあるけど、その異様な外見からしてただの人間とは到底言えなかった。


 ニュースなんかで何回か見たことがある、いまいち正体については知らない奴ら。

 でも確かなのはその手に握られてるのが槍や剣などの武器だってこと。

 なら見過ごすことはできない。


 このデートを上空から見守ってくれていた黒鳥——改め黒鷲(アドラー)へアイコンタクトを送り、物陰から乗り出そうとしたところで。

 ルイが私の肩を強く引いてくる。


「待て大和。あれは異能者じゃない、霊兵だ」


「霊兵?」


「ある程度の強さを持った異能者が召喚できるしもべみたいなものだ」


 ある程度の強さ……。

 つまり、今まで私のことを狙ってた弱い異能者じゃ召喚すらできなかった代物ってことね。

 そりゃ直接見たことがないわけだ。


「周りに危害を加える様子もないし、言い方はおかしいかもだけど迷子なだけだ。こちらから出れば余計な被害が出る可能性もある」


 そう言われたら、確かに路頭に迷ってるだけに見える……かも。

 けど異能周りの厄介事には変わりない、この物陰からしばらく観察に徹するべきか——。


 そうやって結論をつけたところで、私たちの後ろから何か黒い影が迫ってきているのが黒鷲(アドラー)の視線から視えた。

 そこから一瞬遅れて、強く踏み込む足音が鼓膜を揺らす。


「ルイッ! 伏せて!」


 無鋒剣(カーテナ)を右手へ最高速度で顕現させ、その黒い影を迎撃しようとするも。

 抜き身の刀を持ったそれは私たちのことを軽々しく飛び越えると、あの霊兵の一団へと駆けていく。


「ッ!? あっちの方に行くの!?」


「馬鹿野郎、好きにさせておけばいいのに突っ込むっていったい誰——」


 珍しく言葉を荒げながらも、顔を上げ駆けていった影を目にした途端に固まるルイ。


 奇しくもそれは私も同じで、影は霊兵の一団へと割り込むなり次々と手にかけていく。

 その影は霊兵たちとは異なりきちんと人間の肌を持っていて、毛髪は銀髪。

 目つきから多分日本人だってことも分かるけど、目を引くところはその強さ。


 一閃、一突き、そしてまた一閃。

 攻撃を加える度に、霊兵たちが光の粒子となって消えてゆく。


 その戦いの素振りを目の当たりにし、「強い」というシンプルかつ強力なインパクトを植え付けられた。


 そして最後の霊兵を片付け、両足を落とされた霊兵を足蹴にしながら首へ一閃を加える男。

 

 ……見たところ、霊兵はダメージを受けると異能者とは違って光の粒子となって消え、死体は残さないみたいで。

 だから、多分あいつらは生きた人間ではないことは見て分かる。

 それでもその男が霊兵へ加えた一蹴りに、何か蔑むような意図が含まれていることぐらいは手に取るように分かった。



「…………」


 勝利に息の一つすら漏らすことなく、首を鳴らしながら腰に差されていた鞘に刀をしまう。

 男の装いは和洋折衷、黒のナポレオンジャケットと袴が一体になったような服を着込んでいて、肩の部分に目立っている肩章が日光に反射して黄色く光り輝いていた。

 周囲を見渡したあと、その釣り上がった目は最後私たちの方へと向けられ、その足も同じ方向に運ばれてくる。


 ——今度は、私たちか。

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