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第1-5話:檻に差す光

 どこからか差し込む眩いばかりの光の筋。

 それが一瞬のうちにロベールの剣を飲み込み、液状の蝋に変えてしまった。

 

 ……何が起こった? 

 視界の端に屋根の上に人影を見た気がしたけど――そんなことに割かれるほど私の思考に余裕はなかった。

 今確かなのは、殺すという選択が消えたことただ一つ。


「がああああ!!」


 身体を僅かに退き、ロベールの胴を斜めに浅く切り裂く。

 異能者ならば死なない、けれどしばらく立ち上がることができないような一撃。

 骨までは届かせない生々しい肉の抵抗が、無鋒剣(カーテナ)(つか)から伝わってくる。

 仕上げでロベールの腹部目掛けて蹴りを入れる。

 ──暗器で刺し違えよう。

 ロベールが間違ってもその選択をしないようにするための一撃。


 彼の身体は蹴りの衝撃で数メートル転がり、まるで舞台の上の役者のように優雅に受け身をとって片膝をついた。


「素晴らしい……見事な連……携……!」


 ロベールは胸元の傷から鮮血を溢れさせながら、称賛の言葉を送る。

 直後、彼は蒼い顔をしながら意識を失い、浅い血溜まりを作りながら仰向けになりその場に倒れた。


「連携……? 今の光が?」


 当たり前だけどそんな自覚はなく、全くの寝耳に水。

 

 ──そういえば、と思い出しさっき人影を見た屋根の方へと目を向ける。

 公園の近くにある、瓦葺きの屋根の上に、彼は立っていた。


 まるでそこだけ影絵の世界から切り取ってきたみたいに、彼の背後に隠れた夕日が逆光のシルエットを作る。


「いやー、危ないとこだったね。怪我はない?」


 彼は屋根の上から公園の敷地にひょいと飛び降りると、私の元に駆け寄ってきた。


 私と同じ高校の紺色のブレザー。明るい栗色の毛でパッツンのボブ、ぱっちりと開いた大きな目。病気を疑うほど白い肌に低い身長、そして幼い顔つき。

 一年生かとも思ったけど、私と同じ二年のネクタイを身に付ける青年。


「……怪我は、ない」


「良かった! で、君が大和めぐみさんで間違いないよね?」


「そうだけど…………ッ!」


 彼の近くにまるで重力なんて無いみたいに浮かぶ、鈍く光るガラス球を目にする。

 新手の異能者かと勘づき、無意識に片足を後ろへ下げた。


 それでも額に脂汗を浮かべながら笑う青年。

 

 倒れる血まみれの男、その返り血を浴びた刃物を持った女。

 端からみればそんな風に見えるのに、それでも彼は親しみを持った表情でこちらへ歩み寄ってきている。


「そんな警戒しなくても……って。 ああ、名乗りがまだだったね」


 彼はハッとしたような表情を浮かべると私から一歩距離をとり、こほんと高い声で小さな咳をしながら名を口にした。


「僕の名前は本田ルイ。君をここに呼んだ張本人だ、よろしく頼むよ!」

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