第11-2話:手を掴むこと!
「……変わったよ、やっぱり。もちろん良い意味でね」
「それは、どういう感じで」
「具体的にって話になると、そうだね。一番はお互い正直になったことかな。あれから一回きちんと話し合って、お互いが隠してたことを話して……正直な関係になれた気がする」
あの病室のあとにルイと三人で食事をした夕方。
日の落ちていく帰り道で、一駅歩きながら話したいと言ってきた香蓮と、途中の公園で脚を休めながら何時間も話しちゃったっけ。
少し前のことなのに、随分懐かしい思いをしながらルイの表情を見る。
ルイは一瞬はにかんだけれど、すぐまた顔に影を落とした。
「そうか、正直にか……僕も、そうあるべきかもしれないな」
そうあるべき……多分「隠してたことを話す」とか「正直な関係」であるべきって話かな。
ベンチへ腰掛けながら前かがみになるルイに対して、私もその背をピンと伸ばし覚悟を示しながら彼の方へと向き合った。
「実はな。僕は、僕じゃないんだ」
「…………え?」
自分でも分かるぐらいに気の抜けた声。
「信じられない」とか「受け入れられない」じゃなくて、普通に言っていることの意味が分からない。
本当は一発で理解してあげるべき場面なのかもしれないけど、本当に意味が分からないからどうにも……。
「じゃあ、簡単な例え話をしよう」
理解出来ていない私を見かねてか、前かがみから一転、今度はベンチの背もたれに体重を預けたルイがその続きを口にする。
「異能者は二種類に分けられる。その種類ってのは分かるかな」
あっ、どんな話だろうって思ったら「ゲーム」の話か。
異能だとか、やり直しを賭けた儀式とかっていう。
っていきなり聞かれても思いつかないな。
「……良い異能者か、それとも悪い異能者か。とか?」
「っておい、そうじゃないだろ」
調子を崩したようにベンチの上でコケたような動作をするルイ。
そう言われても、私にとってはそれが全てなんだから仕方がない。
「……まあそれも間違ってないかもしれないけど、そんな分類は今から言う分類の前には全く意味を成さない」
ルイは左の握りこぶしを身体の前に出すと、その手で一、二と数字を刻んでいく。
「一つ、過去の異能者。ロムルスやジャンみたいなあらゆる時代の英雄や支配者たちが、死の後にこの時代へとやって来て異能を授かるケース。二つ、現代の異能者。大和含め今のところ七人しか確認されていない、現代人の親から生まれた子が異能を授かるケース。この二つだ」
あー、なんか前モールで話した時にルイがそんなことを言ってた気が。
「てか現代の異能者って七人しかいないんだ。私も自分とルイ以外知らないなあ」
何気なしに口にしたその言葉に、ルイは息を詰まらせるような表情を浮かべた。
……あれ、今私なんかおかしなこと言ったかな。
実は私とルイ以外にも知ってる人で他に現代の異能者がいる……なんて予想したあとで。
「ごめん、大和。僕は、その七人に含まれていないんだ」
今度こそ、その言葉の意味を疑った。
「ルイが……えっ……えっ?」
そう言われて、ボトルを握る手に込められる力が僅かに強くなる。
肺が凍ったみたいに息が出来なくて、脳みそが全力で他の「可能性」を探った。
七人には含まれていないけど実は八人目の、とか。
実は第三の分類があって、とか。
けれど、それじゃわざわざ種類だとか人数だとかを細かく話した意味が分からなくて。
ルイが「過去の異能者だ」って以外の結論を導き出せなくて。
でもそれよりも、私が衝撃を受けたのは。
私がそんなに酷い顔をしていたのか、その口を固く噤みながら瞼を震わせ、怯えるような表情をしていたことで。
皮肉にもその表情を目の当たりにして、却って冷静になることができた。
「……順を追って話そう」
小さく息を呑み、視線を落とすルイ。
ここからは一旦彼の話に耳を傾けようと、小さく息を吐き出し聞くことに専念する。
「僕が物心ついたのは、幼稚園に入ってしばらくした頃だったと思う。その時は広島に住んでいて、お義父さんと二人で暮らしてたんだ」
……今のところ、普通の話だ。
トヨタがどうのとか言ってたからずっと愛知で暮らしてたと思ってたけど、それは別にどうってことはない。




