第65話:ヒロインたちのお詫びのハーブティーを飲んだら、今度は俺の男の魔力が覚醒して立場が逆転した件
昨晩の『極光の魔香』による大暴走から一夜明け。
粉々に砕け散った俺の部屋の結界を前に、アルテミス様、エルナ、リリス、カガミの四人が、正座して深く頭を下げていた。
「……本当にすまなかった、ゼクス。いくらアロマで魔力が昂ったとはいえ、淑女として、いや騎士としてあるまじき野蛮な真似を……」
「私としたことが、聖女の義務を忘れて本能のままにおねだりしてしまうなんて……」
一同は顔を真っ赤にして猛省している様子。
そんな彼女たちが「お詫びと、昨夜のほてりを冷ますために」と淹れてくれたのが、聖域の庭で採れた薬草を使った『特製ハーブティー』だった。
「ゼクス様、私たちの反省の気持ちです。どうぞ召し上がってくださいな」
カガミから差し出されたカップを受け取る。
立ち上る湯気からは、カモミールやレモングラスの清涼な香りが漂っている――はずだった。だが、天才調香師である俺の嗅覚は、その奥に隠された「別の成分」を敏感に察知してしまった。
(……待て。この、ほんの少し鼻腔をくすぐる野生的な甘い芳香は……。一昨日に王たちから貢がれた、雄の生命力を極限まで高める幻の薬草【千歳人参】の花の蜜じゃないか!?)
「あっ、ゼクス様ダメです! それ、リリスさんが『隠し味に元気が出るハーブを』って間違えて混ぜちゃったやつで――」
サクヤの制止の叫びは間に合わなかった。
ゴクリ、と喉を鳴らして飲み干した瞬間、俺の体内で「眠っていた男の魔力」が凄まじい勢いで爆発した。
――ドクンッ!!
「……っ、あ、熱い……。なんだ、この体の芯から湧き上がる衝動は……」
俺の全身から、いつもの清浄なオーラではなく、圧倒的な「王の威圧感」を孕んだ黄金の魔力が立ち上る。瞳の奥に宿る職人の冷静さは消え失せ、代わりに猛々しい本能の光が灯っていた。
「ゼ、ゼクス……? なんだか、急に目つきが凄くカッコよく……じゃなくて、男らしくなっているのだけど……?」
アルテミス様が思わず後ずさりする。
俺は静かに立ち上がり、逃げ道を塞ぐように一歩、彼女たちへと歩み寄った。
「……夕べは、ずいぶんと派手にやってくれましたね、皆さん」
いつもより明らかに低い、低音の効いた声。
その声の波動(と、俺の体から放たれるフェロモン級の極上アロマ)に、四人は一瞬で気圧され、顔を真っ赤にして身をすくませた。
「ひゃいっ!? ゼ、ゼクス様、これはその、事故でして……!」
「……待って、今のゼクス、色気が強すぎて直視できない……!」
立場は完全に逆転した。
いつもはアプローチされる側の俺が、覚醒した「男の調香師」として、お詫びをしてきた彼女たちを一人ずつ壁際に追い詰めていく――。
聖域の居間は、夕べとはまた違った意味で、朝から最高潮の熱気に包まれるのだった。
お読みいただきありがとうございます!
今回は立場が完全に逆転し、ゼクスが「攻め」に回るハプニング回でした。
間違えて超強力なスタミナハーブを混ぜてしまったリリスちゃん、グッジョブと言うべきでしょうか(笑)。
調香師としての本能と男の魔力が合わさると、ヒロインたちも形無しですね。
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