第66話:俺のフェロモンアロマが強すぎて、裏山の雌の魔獣が全部押し寄せてきた件
『千歳人参』の蜜によって、俺の「男の魔力」が限界突破したその時。
いつもなら照れて顔を赤らめるはずのヒロインたちが、突如としてキッと表情を引き締め、それぞれの武器を構えて立ち上がった。
「……ゼクス、危ないわ! 貴公のその甘すぎるフェロモン、屋敷の外まで完全に漏れ出しているわよ!」
アルテミス様が窓の外を指差す。
見れば、聖域の裏山から地響きを立てて、凄まじい数の「雌の魔獣」たちが目をハートにして猛ダッシュでこちらに向かってきていた。
「グルゥゥゥ……(あの良い匂いのオトコ、私のものよ!)」
「キュィィィン!(聖域の調香師サマ、結婚してー!)」
伝説の雌ドラゴンの群れから、もふもふしたジャイアントウルフ(雌)まで、種族を超えた求愛の嵐。
これには、さっきまで俺の色気に蕩けかけていたエルナも、即座に聖女の真顔に戻った。
「……ゼクス様。夕べの私たちの暴走を棚に上げて言いますが、『女の敵は女』、そして『人間のライバルならまだしも、魔獣にゼクス様を渡すなど万死に値する』ですわ!!」
「そうだ。……ゼクスをモフモフの獣たちに奪われてなるものか。……全員、駆逐する」
リリスの影が、嫉妬の炎でドス黒く燃え上がる。
カガミも本体の八咫の鏡を掲げ、怒りの表情で銀髪を逆立てた。
「主様の初めての添い寝(鏡合わせ)は、この私が予約しておりますの! 野生の獣ども、鏡の裏側に反射して消え去りなさい!」
さっきまでの甘やかなピンク色の空気が、一瞬にして「ガチの防衛戦」へと変貌する。
アルテミス様の神剣が閃き、エルナの聖なる雷が炸裂し、リリスの影が魔獣を絡め取り、カガミの光線が山を揺らす。彼女たちの連携は、かつてないほど完璧だった。嫉妬パワー、恐るべし。
「……みんな、ありがとう! でも、原因は俺の体臭だ。俺が自分で片付けます!」
俺は『男の魔力』を逆手に取り、即座に調香室へダッシュ。
貢がれた『天空のミント』と『清浄の精油』を自分のフェロモンと超高速でブレンドし、自身の魔力で一気に気化・拡散させた!
「調香術・中和奥義――『賢者の氷河』!!」
俺の体から、熱いフェロモンを一瞬で氷結させるような、超強力な清涼感の波動が放たれた。
それを浴びた魔獣たちは、一瞬で「スンッ……」と正気に戻り、
「グル?(……あれ? 私、なんでこんなところでオスを探してたのかしら?)」
と、急に恥ずかしくなったように顔を赤らめながら、一斉に山へと走って帰っていった。
「……ふぅ。なんとか、生態系の危機は脱しましたね」
俺が冷たいミントの香りを漂わせながら汗を拭うと、背後から「じーっ」と熱い視線が。
振り向くと、魔獣を追い払って息を切らせたヒロイン四人が、ギラついた目で俺を囲んでいた。
「……ゼクス。魔獣は帰ったけれど、私たちの『嫉妬の火の粉』は、まだ消臭できていないのだけど?」
「……はい、そうですわ。ゼクス様、責任を取って、今夜は四人全員と『お話』をしていただきますわよ?」
「ひぇっ……」
お茶の効果が切れてすっかり草食系に戻った俺は、魔獣よりも恐ろしいヒロインたちの笑顔の前に、ただただ震えることしかできないのだった。
お読みいただきありがとうございます!
ゼクスが放つ「男の香り」の威力、まさか野生の魔獣すべてを狂わせるレベルとは……。
でも、そのおかげでヒロインたちが完璧な正気に戻り(嫉妬の鬼と化し)、聖域の絆が(?)深まりましたね。
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