第64話:魔力覚醒アロマを作ったら、ヒロインたちの愛の魔力まで限界突破して部屋の結界が消し飛んだ件
大国から貢がれた『流星の柑橘』や『金剛石の白檀』を贅沢に配合し、俺はついに人間の限界を超えて魔力を引き出す究極のブースター香水――『極光の魔香』を完成させた。
「……よし。まずは皆さんの魔力の「巡り」を良くするために、今夜のディフューザーに一滴だけ混ぜておきますね」
これが、俺の調香師人生における最大の計算違いになるとは思いもしなかった。
その日の深夜。
自室で次の調合レシピを書いていた俺の鼻腔に、熱を帯びた、やけに妖艶で甘い香りが滑り込んできた。
(……おかしい。俺がセットしたのは爽やかな魔力活性のアロマのはず。なのに、どうしてこんなに『本能を揺さぶるノート(残香)』になっているんだ……!?)
直後、――ドガァァァァァンッ!! という凄まじい爆発音が響いた。
驚いて顔を上げると、俺の部屋に施されていたはずの「特級防御結界」が、内側からの超魔力によってガラスのように粉々に砕け散っていた。
煙の向こうから現れたのは、瞳に見たこともない怪しい光を宿した、アルテミス様、エルナ、リリス、カガミの四人だった。
「……み、みんな!? 一体どうしたんだ、その物凄い魔力は……!」
「……ふふ、ゼクス。貴公がくれたアロマのおかげで、私の中の『愛の魔力』が全開になってしまったわ……。もう、自分を抑える結界なんて、私の魔力の前には紙切れ同然よ……?」
アルテミス様が、神剣ではなく「極上の微笑み」を湛えて一歩ずつベッドへ近づいてくる。
「……ゼクス様。聖女としての理性という不浄が、今、完璧に浄化されましたわ……。さあ、私と朝まで濃厚な聖典の解釈をいたしましょう……!」
エルナは聖痕を限界突破させて後光を放ち、リリスは「……ゼクス、もう逃がさない……」と影の魔力で俺の退路を完全に塞いでいる。さらに新入りのカガミに至っては、
「主様が覚醒させてくださった私の鏡の力……今夜は主様のすべてを100倍にして、私の鏡の中に『反射(永久保存)』して差し上げますわ!」
「100倍は物理的に死ぬからやめて!?」
香りの成分が、彼女たちの「内に秘めた好意」と化学反応を起こし、魔力依存の超絶アプローチへと変換されてしまったらしい。
「……だ、ダメだ! 調香師として、この暴走した香りを中和しなければ……!」
俺は必死に手を伸ばし、枕元に置いてあった『強制睡眠アロマ・ラベンダーナイト』のボトルを、砕け散った結界の空間に向けて全力で投げつけるのだった。
お読みいただきありがとうございます!
魔力を高めるはずが、ヒロインたちの「恋心」を臨界突破させてしまったゼクス。
物理的な結界すら力技で粉砕するヒロインたちの愛、強すぎます(笑)。
天才調香師といえど、女心とアロマの組み合わせだけは、まだ完全にコントロールできないようですね。
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