第63話:戦争を止めたお礼に、両国の王たちが激レアな香料の原材料を山ほど持ってきた件
国境での戦争が「薔薇の香り」によって奇跡的な和解で幕を閉じてから数日。
聖域の周囲には、昨日までの敵対関係が嘘のように、二つの大国の紋章を掲げた巨大な輸送馬車が、果てしない列を成して並んでいた。
「お掃除調香師、ゼクス殿! 我が国の滅亡の危機を救っていただいたこと、言葉では言い尽くせぬ!」
「我が国からも、至高の感謝を! 陣中を包んだあの至高の香りに相応しい、我が国の国宝級の原材料をすべて貢がせていただく!」
馬車から次々と運び出されてくるのは、金銀財宝……ではなく、俺が事前に「もしあれば欲しい」と呟いていた、世界中の調香師が一生に一度拝めるかどうかの『激レア素材』の山だった。
「……ま、待ってください。これは、100年に一度しか実を結ばないという【流星の柑橘】の果皮!? それに、深海に沈む伝説の鯨からしか採れないとされる【神樹の竜涎香】まで……!」
俺の『神眼鑑定』が、素材の放つ凄まじい純度を捉えて跳ね上がる。
さらに別の馬車からは、カミツ領の巫女サクヤすら目を見張るような植物が運び出されていた。
「……ゼクス殿、あれは……。東洋の霊峰の山頂、永久凍土の下にしか自生せぬという【月下氷蘭】の種ではありませぬか! 温室でも育たぬと言われる幻の……」
「ふふん、サクヤさん。我が聖域の『精霊全自動プランテーション』を侮ってはいけませんわ。この地なら、どんな種でも一晩で最高品質に育ってみせますわよ?」
ルサルカが自慢げに三叉槍を掲げると、周囲の水精霊たちが「はーい、水やりは任せて!」と嬉しそうに歌い出す。
届いた素材はそれだけに留まらなかった。
世界最高の香気を持つと言われる【金剛石の白檀】の原木や、一滴でどんな悪臭も中和する【天空のミント】など、まさに調香師にとっての「神の庭」が、この聖域に完成しようとしていた。
「……ゼクス。これだけの素材があれば、貴公の目指す『世界を香りで包む』調香が、さらに次のステージへ進むわね」
アルテミス様が、誇らしげに俺の肩を抱く。
エルナも「これほど清らかな素材が集まるなんて、やはりゼクス様は神に選ばれた調香師ですわ……!」と胸を躍らせていた。
「よし……! 両国の王たち、ありがとうございます。この最高の素材を使って、次はただ癒やすだけでなく、『人間の持つ可能性や、眠れる魔力を引き出すアロマ』の開発に着手しましょう!」
手に入れた至高の原材料を前に、俺の調香師としての創作意欲は、かつてないほど激しく燃え上がるのだった。
お読みいただきありがとうございます!
王たちからの極上の貢ぎ物によって、聖域が「世界最高の香料の聖地」へと進化しました。
金色の畳に続き、今度は世界中のレア植物が庭に咲き誇ることに……(笑)。
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