第52話:1000年放置された『汚れた古鏡』を磨き上げたら、絶世の美少女が爆誕した件
九龍屋敷の広大な広間。ゼクスの放った『式神・サイクロン旋風掃き』によって、数世紀分の埃が晴れたその奥に、それは鎮座していた。
「……ゼクス殿、お気をつけくだされ。あの奥にあるのは、我が国の開祖が用いたとされる【八咫の古鏡】。……ですが、あまりの穢れに、今や触れる者すべてを呪い殺す『暗黒鏡』と化しております」
巫女サクヤが青ざめる。
そこにあったのは、もはや鏡とは呼べない、ドロドロの煤と錆に覆われた「黒い塊」だった。だが、ゼクスの『神眼鑑定』にはその奥に眠る「悲鳴」が聞こえていた。
「……苦しかったですね。1000年も顔を洗わせてもらえなかったなんて。……安心してください。今、最高の輝きを取り戻してあげます」
ゼクスは、サンソル島で開発した最強の研磨剤『シュリンプ・ブライト』に、カミツ領特産の「清め塩」を配合。特注のセーム革に馴染ませると、迷いなく鏡の表面に触れた。
「……神域流研磨術・『明鏡止水』!」
――キィィィィィィィン!!
鏡の表面から、呪いの黒い霧が悲鳴を上げて霧散していく。ゼクスの指先が動くたびに、1000年分の垢が削ぎ落とされ、その下から「神代の黄金」が露出していく。
そして、最後の一拭きを終えた瞬間。
「……ふぁぁぁぁ。……やっと、前が見えるようになりましたわ」
鏡から眩い光が溢れ出し、実体化を始めた。
現れたのは、鏡のような銀髪を足首まで伸ばし、透き通るような肌に白銀の着物を纏った、神秘的な美少女だった。
「……えっ。鏡が、女の子になった……!?」
アルテミス様が驚愕する中、少女はゼクスの前に跪き、その手をそっと取った。
「私はこの鏡に宿る付喪神、カガミと申します。……1000年もの間、誰からも見向きもされず、汚れの中で絶望しておりました。……私をここまで美しく『お色直し』してくださったのは、あなたが初めてです。……主様」
「……あ、いや。俺はただの掃除屋で……」
「いいえ。私は決めたのです。この磨き上げられた魂、すべてをあなたに捧げます。……今夜から、主様の寝室の『鏡合わせ(添い寝)』は私がお引き受けいたしますわ」
「「「「……新入りが、一番不穏なことを言いましたわよ(わね)!!」」」」
アルテミス、エルナ、リリス、ルサルカの四人が一斉に戦闘態勢に入る。
掃除したはずの屋敷に、新たな「女の火花」という名の戦慄が走る。ゼクスのカミツ領での日々は、初日から波乱の予感に満ち溢れていた。
お読みいただきありがとうございます!
「物を大切にすると精霊が宿る」……そんな和の心を、ゼクスが斜め上の技術で体現してしまいました(笑)。
新ヒロイン・カガミちゃんの「鏡属性」は、今後の騒動にどう絡んでくるのか!?
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