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第42話:夜の砂浜で二人きりの研磨テストをしていたら、深海の王女が求婚しに現れた件

宴の喧騒から少し離れた、サンソル島の静かな入り江。

 月光が照らす波打ち際で、俺はアルテミス様と二人、砂の上に座っていた。


「……見てください、アルテミス様。この研磨剤で磨いた貝殻、月の光を反射して、まるで小さな太陽みたいでしょう?」


俺は昼間に作った『シュリンプ・ブライト』で磨き上げた貝殻を彼女に手渡した。アルテミス様はそれを愛おしそうに受け取り、俺の肩にそっと頭を預けてくる。


「……ええ、本当に綺麗ね、ゼクス。貴公の手にかかれば、どんなに価値のない石ころも、世界一の宝石に変わる。……その手は、魔法の手だわ」


アルテミス様の体温と、潮騒の音。

 普段は凛々しい彼女の、少女のような潤んだ瞳が俺を見つめる。

 ……あ、これ、物語なら絶対にキスをする流れだ。


俺が覚悟を決めて顔を近づけた、その時だった。


――ザバァァァァァァァッ!!


「見つけましたわ! その眩い輝きの主を!」


海を割って現れたのは、下半身がエメラルド色の尾びれになった、青髪の絶世の美女――深海の王女・ルサルカだった。彼女は波打ち際に這い上がると、俺の手をガシッと掴んだ。


「……え、あ、はい?」


「この深海にまで届く清らかな輝き! 私、確信いたしましたわ。あなたこそ、千年に一度、海の底を掃除してくれると予言された『伝説の清掃公爵』様ですね!? どうか、私を第一夫人にしてくださいまし!」


「……ちょっと、待ちなさいよ」


アルテミス様が、氷のような冷たい声で立ち上がった。その手には、先ほどまで大事に持っていた貝殻ではなく、夜光を放つ聖剣が握られている。


「……ようやく良い雰囲気だったのに、空気も読まずに水中から求婚? ……ゼクスは私の『お掃除パートナー』よ。鱗の生えた女に譲るつもりはないわ」


「あら? お掃除には水が不可欠ですわ。陸の女よりも、海の王女である私の方が、ゼクス様の洗浄液と相性が良いに決まっていますわ!」


「……面白いわね。その生意気な鱗、私の聖剣とゼクスの研磨剤で、一枚残らず剥いでピカピカにしてあげましょうか?」


一触即発の「陸と海の女の戦い」。

 その横で、俺は新開発の『シュリンプ・ブライト』を見つめて呟いた。


「……ルサルカさん、求婚は困りますけど、深海の珊瑚礁が汚れているなら、この研磨剤のモニターとして……」


「「今は掃除の話をしてるんじゃないの(ですわ)!!」」


二人の怒声が夜の海に響き渡る。

 どうやら、俺の研磨剤は汚れだけでなく、女たちの独占欲まで鋭く「磨き上げて」しまったようだった。

お読みいただきありがとうございます!

ロマンチックなデート回のはずが、新ヒロイン(?)の登場でさらなる修羅場へ。

ゼクスの無自覚な「輝き」が、ついに深海の王族まで狂わせてしまいました。

楽しんでいただけたら、ページ下部の【☆☆☆☆☆】やブックマークで応援いただけると執筆の励みになります!

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