第35話:聖域に『全自動洗濯機』を作ったが、ヒロインたちの下着を洗おうとして修羅場になった件
勇者カイルが結界で蒸発(除菌)し、聖域はかつてない静寂と清潔さに包まれていた。
俺は、かねてより要望の多かった「家事の自動化」に着手することにした。
「……よし、完成です。名付けて『神域の全自動ドラム式・魔力洗濯機』!」
俺の目の前には、世界樹の木材と魔王合金を組み合わせた、白銀に輝く巨大な装置が鎮座していた。
これには『超高速回転』と『聖水の微細気泡』、さらには『次元乾燥機能』を詰め込んである。
「……ゼクス。これは、私たちの服を勝手に洗ってくれる魔法の箱なの?」
アルテミス様が不思議そうに覗き込む。
「ええ。どれだけ頑固な返り血も、魔族の返り汁も、これに入れれば一瞬で『おろしたての新品』の香りと肌触りに戻りますよ。……さあ、溜まっている洗濯物を出してください」
俺がそう言うと、三人のヒロインは顔を見合わせ、それぞれのカゴを持ってきた。
だが、俺が無造作にそのカゴを預かろうとした、その瞬間――。
「……待って。ゼクス、今、中身を見たわね?」
アルテミス様が顔を赤くし、カゴをぎゅっと抱きしめた。
「え? いや、洗濯機に入れるために仕分けをしようと……」
「……ダメですわ! ゼクス様、この中には私の……その、……『聖女の祈りが込められた(すごく薄い)肌着』が入っていますのよ! 殿方に見せるわけには……!」
「……ゼクス様。私の『夜用・暗殺服(シルク製の下着)』、……さっきまで着てたやつ。……匂い、嗅いじゃダメよ?」
「嗅ぎませんよ!? ただ洗いたいだけですって!」
修羅場だった。
俺はただ「効率的にお掃除」をしたいだけなのに、乙女心という名の『最強の結界』が俺の前に立ち塞がる。
「……わかったわ。ゼクスに洗ってもらうなら、条件があるわ」
アルテミス様が、意を決したように指を立てた。
「……貴公も、今着ている服を全部脱いで、ここで一緒に洗いなさい! 私たちの下着と一緒に回されるのが嫌なら、貴公も同じ条件になるべきよ!」
「ええっ!? つまり俺も全裸に……!?」
「……それが公平ですわ。……さあ、ゼクス様。……お洗濯、始めましょう?」
エルナとリリスが、じりじりと距離を詰めてくる。
結局、俺は「洗濯機のデモンストレーション」という名目で、ヒロイン三人に囲まれながら(なぜかみんなでタオル一枚になって)、洗濯機が回るのをじっと見守るという、世界一気まずい「お洗濯タイム」を過ごすことになった。
――数分後。
洗い上がった服からは、俺の調合した『天界のソープ』の香りが漂い、三人はその仕上がりに感動していたが……。
「……ゼクス。……やっぱり、今夜は服を脱いだまま、この柔軟剤の香りを貴公の体に直接……」
「……お掃除の後は、仕上げが必要ですよ、ゼクス様」
脱ぎたてホカホカの洗濯物よりも、俺の周囲の熱気の方が、よっぽど次元乾燥が必要なレベルまで上がっていた。
お読みいただきありがとうございます!
便利な発明のはずが、なぜか脱衣イベントに発展してしまう……これぞ聖域の日常ですね(笑)。
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