第27話:魔界遠征が快適すぎて、魔王が「隠居してゼクスの弟子になりたい」と言い出した件
魔界の深淵へと進む『世界樹の揺り籠号』の車内。
外は千年級の瘴気が吹き荒れる地獄絵図だが、一歩車内に入ればそこは別世界だ。
「……ふぅ。この『神域のマッサージチェア』、魔王の椅子より座り心地が良いぞ。ゼクス殿、これには何の魔法をかけたのだ?」
魔王サタンが、ゼクス特製の「揉み出しオイル」が自動で塗布される椅子に深く沈み込み、とろんとした目で問いかけてくる。
「あ、それは世界樹の若枝のしなりを利用した低反発構造ですね。仕上げにリラックス効果のあるアロマを染み込ませてあります」
「……至高だ。このまま一生揺られていたい。……なぁ、ゼクス殿」
魔王は、手元の保冷庫からキンキンに冷えた『神域の炭酸レモネード』を取り出し、一気に飲み干すと、神妙な面持ちで俺を見つめた。
「余は決めたぞ。……この大掃除が終わったら、魔王を隠居して、貴殿の弟子になる!」
「「「……えぇぇぇぇぇぇっ!?」」」
車内にヒロイン三人の絶叫が響き渡った。
「お父様、何をバカなことを! 魔界はどうするんですの!?」
「そうですわ! 魔王様がいなくなったら、魔界の均衡が崩れてしまいます!」
アルテミス様とリリスが詰め寄るが、魔王の決意は固いようだった。
「……リリスよ。余は疲れたのだ。数百年間、怖い顔をして瘴気にまみれ、不味い酒を飲み続ける生活に。……だが、ゼクス殿の側にいれば、毎日空気が美味く、飯が美味く、角までピカピカになる。これこそが真の『覇道』ではないか!」
魔王は俺の手をガシッと掴み、瞳を輝かせる。
「ゼクス殿! 余を、いや、私を一番弟子にしてくれ! まずは床掃除からでも、ポーション瓶の洗浄からでも何でもやる! 代わりに、あの『イチゴジャム』の作り方を教えてくれ!」
「……いや、魔王さんに床掃除をさせるわけには……」
俺が苦笑いしていると、エルナが「……それなら、魔王様は『ゼクス様ファンクラブ・魔界支部顧問』という役職で妥協してはどうでしょう?」と提案し、なんとかその場は収まった。
「……よし、決まりだ。そうなれば、この深淵の掃除も『入門試験』のようなものだな! 行くぞゼクス師匠! 私が屋根の上から全力でナビゲートしてやる!」
すっかり「弟子モード」になった魔王を乗せて、馬車はさらにスピードを上げる。
「……ゼクス。貴公、ついに魔王の人生観まで『洗浄』してしまったのね……」
アルテミス様の呆れた呟きと共に、馬車はついに魔界の最深部、千年のヘドロが溜まった『奈落の底』の入り口へと到達した。
お読みいただきありがとうございます!
ついに魔王すらも「お掃除」の魅力に取り憑かれてしまいました(笑)。
次回、ついに最終決戦の地へ。そこには、ゼクスの『サイクロン掃除機』を待つ「巨大な汚れ」が潜んでいます!
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