第23話:魔界の国境で怖い門番に襲われたが、『特製洗顔フォーム』で洗ったらファンクラブが結成された件
『世界樹の揺り籠号』が魔界の国境、通称『嘆きの門』へと到達した。
そこには、身長三メートルはあろうかという筋骨隆々のオーガや、全身から瘴気を放つ魔族の戦士たちが立ち塞がっていた。
「止まれ! ここから先は魔王様の許可なき……って、おい、屋根の上に乗っているのは魔王様!? 何をなさっているのですか!」
門番の隊長が驚愕して叫ぶ。魔王サタンは優雅にジャムパンを齧りながら答えた。
「ああ、気にするな。余は今、このゼクス殿の『大掃除』に同行しているのだ。道を開けろ」
「そ、そんな馬鹿な! 魔王様が人間に屈するなど……! 貴様、魔王様を何らかの術で操っているな!? 出てこい、卑怯な人間め!」
門番たちが武器を構え、殺気立つ。
アルテミス様たちが武器を手に取ろうとしたが、俺は一足先に馬車から降りた。
「あの、卑怯な術とかじゃなくて……。それより皆さん、肌荒れが酷いですよ。魔界の瘴気のせいで角質がガチガチになってる」
「……あ? 何を言って――」
「ちょっと失礼。これ、新作の『神域の泥洗顔(毛穴の闇までスッキリタイプ)』です。……くらえ、泡爆弾!」
俺は調合したばかりの液体を指で弾き、風魔法で拡散させた。
一瞬で国境付近が、世界樹の香りがする「もこもこの白い泡」で埋め尽くされる。
「なっ、なんだこの泡は!? 目が……目が染みない! どころか、めちゃくちゃ気持ちいいぞぉぉ!?」
「おい、見てくれ! 俺のガサガサだった肌が、一瞬で赤ちゃんのゆで卵みたいに……!」
数分後。
そこには、武器を投げ出し、お互いの顔を洗い合ってキャッキャと騒ぐ魔族たちの姿があった。
俺の洗顔フォームに含まれる「神域の洗浄成分」が、彼らが数百年溜め込んできた「呪いの老廃物」を根こそぎ洗い流してしまったのだ。
「……ゼクス様、……いえ、ゼクス師匠! ありがとうございます! こんなに顔が軽くなったのは生まれて初めてです!」
「……俺、もう戦うのやめます。これからはこの肌を維持するために、丁寧な洗顔を心がけます!」
門番たちは、かつての禍々しいオーラをどこへやら、ツヤツヤの美肌を輝かせて俺に跪いた。
「おい、お前ら! ゼクス様にお礼の品(魔界の特産品)を持ってこい! あと、今日から俺たちは『ゼクス様美肌守護隊』を自称するぞ!」
こうして、魔界への入り口は戦火に包まれるどころか、俺の「公式ファンクラブ第一支部」として機能し始めた。
「……ゼクス。貴公、魔族を美肌にするだけで国境を突破するなんて、もはや外交の概念が壊れるわよ……」
アルテミス様の呆れ顔を背に受けながら、俺たちの馬車はツヤツヤの門番たちに盛大に見送られ、魔界の深淵へと進んでいくのだった。
お読みいただきありがとうございます!
魔族さえも美肌で懐柔してしまうゼクス。
次回、いよいよ魔界の都市へ。そこでは、ゼクスの『ただの入浴剤』がさらなる騒動を巻き起こします!
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