第22話:神域の移動拠点で迎える最初の夜、誰が俺の隣で寝るかでもめた結果……
『世界樹の揺り籠号』が魔界の入り口に差し掛かった頃、辺りは紫色の月が昇る夜を迎えていた。
車外は瘴気が渦巻いているが、車内はゼクスの調香した「森林浴の香り」が漂い、至極快適な空間だ。
だが、寝る時間になって、ある「重大な問題」が発生した。
「……ゼクス。この『三美神の寝室』、キングサイズのベッドが一つしかないではないか。……つまり、誰が貴公の隣で寝るか、ハッキリさせる必要があるわね」
アルテミス様が、ナイトウェア(これもゼクスが調合した、肌触り最高のスライムシルク製)に身を包み、鋭い視線を投げかける。
「……妥協はしませんわ。ゼクス様の安眠を守るのが、聖女としての務めですから」
「……私も。魔族は夜の方が元気なの。……ゼクス様を、朝まで離さないわ」
エルナとリリスも一歩も引かない。
空気がピリついたその時、屋根の上から魔王がひょいと顔を出した。
「おいおい、そんな時はトランプで決めるのが魔界の流儀だぞ? ほら、余が持ってきた『魔石のカード』で勝負しろ」
魔王が差し出したのは、触れるだけで相手の動揺を読み取るという、魔界でもイカサマ不可能な禁断のトランプだった。
「……いいでしょう。正々堂々と勝負ですわ!」
三人がカードを引き合い、火花を散らす。
だが、数分後――。
「……な、何これ!? カードの表面が、ゼクスの顔に見えて集中できないわ!」
「……このカードから、ゼクス様のジャムの香りが……。ああ、もう勝負どころではありませんわ……」
実はこのカード、魔王が持ってきたものにゼクスの「浄化成分」が染み込んでしまい、いつの間にか『本音を強制的にリラックスさせる癒やしアイテム』に変化していたのだ。
結局、勝負はつかず、三人はフラフラと俺の両脇に倒れ込んできた。
「……もう、どうでもいいわ。……ゼクス、……おやすみなさい」
「……むにゃ。……ゼクス様……大好きです……」
「……しっぽ……抱き枕にしていいわよ……」
右に王女、左に聖女、そして足元には丸まった魔族の姫。
俺は身動き一つ取れない状態で、天井を見上げた。
(……これ、魔界の大掃除に行く前に、俺の体力が削られそうなんだけど)
屋根の上で「カカカ、若いのう!」と笑う魔王の声をBGMに、俺の波乱に満ちた魔界遠征、最初の夜が更けていくのだった。
お読みいただきありがとうございます!
ヒロインたちのパジャマパーティ(?)回でした。
次回はついに魔界の国境! そこでは、ゼクスの『ただの石鹸』が魔族たちに革命を起こします!
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