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旅はのんびりと?(2)

「狩りをしようトウカ!」


和な旅にルーラがとうとう我慢できなくなって提案してきた。


狩りをしなくてもアイテムストレージに食料が沢山入っているので食事には困らない。この世界にしてはかなり快適な旅をしていると思う。それにフィーリアの料理は中々旨い。


俺も一緒に手伝ったので【調理:Lv1】スキルを習得している。


なんでも嫁入り授業と題して街の有力コックに弟子入りに行ったこともあるらしい。

貴族の娘は基本趣味でもない限り料理をしないそうだが、今では俺の美味しそうに食べる姿が見れるのであの辛い日々を乗り越えてよかったと涙ながらに語っていた。


「唐突だな。で?狩りをするって何を狩るんだ?」


マップで確認できる範囲には狼の群れや兎、鹿が数匹映っている。魔物はゴブリンやグロールと言う豚の魔物が群れで行動している。


ゴブリンのレベルは3~4、グロールは5~6とグロールの方が強めだが、こっちはフィーリアのレベル15、ルーラは25、俺は57だ。もうそこら辺の野良モンスターじゃ相手にもならない。


「獲物は鹿を狙う!仲間が近くに旨そうな鹿がいると知らせてきたのだ」


どうやら狼の獣人であるルーラは狼系の動物・魔物とある程度のコミュニケーションを取れるらしい。


さっきから聞こえていた遠吠えは狼からルーラへの挨拶と貢ぎ物である鹿が近くにいることを知らせる遠吠えだったらしい。流石獣人だ。


話を聞けばどの亜人種も同系統の動物や魔物とやり取りが少なからずできるらしい。

コミュニケーションは魔物より動物の方が簡単だそうだ。

魔物は話してる途中で襲いかかってくることもざらにあるらしい。困った奴らだとルーラが怒っていた。


その忠誠心の度合いは種族として上位かどうか、相手が強者かどうかにもよるらしい。


ルーラの部族シルバリングファング族は至高の狼王と呼ばれているそうで、その中でも銀の毛並みの獣人は神にも近い扱いをされるそうだ。


そんな部族の姫を奴隷にしていて良いのかと不安になる。


ルーラの関係者にあったら絶対に厄介なことになりそうだ。


「よし行くか。ルーラ先導を頼んだぞ」


マップには鹿の位置も出ているが、ここはルーラに案内を頼む。どの程度正確に把握出来ているのかもわかれば今後何かの役にもたつだろう。


「任せなさい」


「フィーリア大変な時は言えよ」


「わかったわ」


一応俺も装備を揃えて着込んでいる。ルーラの分の装備がまだ無いから早めに何とかしないといけないな。

ステータスやスキルがスピード重視な構成だから身軽に戦うスタイルなのだろうが、そうなると鉄鎧は難しいか。


早めに何か考えよう。


因みに武器はフィーリアの短剣の予備を渡している。短剣と言っても刃渡りが25センチ程もある短剣だ。腰に2本差している。


馬車は森の端に木々の間に隠してきた。【隠密行動】スキルのお陰で上手く隠せたし、痕跡も消しながら素早く隠せた。


「ん、トウカは弓も使えるのか?」


弓の準備をしているとルーラが聞いてくる。


「あぁ。一通りの武器は使える。得意なのが刀ってだけだな。俺の流派は多種多様な場面に対応出来るように色んな武器を習うんだよ。よし行くか」


俺の合図にルーラが遠吠えをすると直ぐに遠吠えが返ってくる。


ルーラが先導して森を走っていく。方向から見れば鹿の位置は約10キロ先。


ルーラは軽快に森の中を走っていく。障害物は時に飛び越え、木々を蹴って跳躍してすり抜けていく。

俺はルーラの後をついていくのにかなり余裕がある。もっと飛ばして走っても良いくらいだ。前世じゃ考えられない速度も出せそうだ。


だが、フィーリアはそうはいかないようで、悪路にかなり苦戦している。レベル差がルーラとフィーリアじゃ10も離れてる上にフィーリアは魔術師系のスキルにステータス数値だ。近接戦闘系のステータスにスキルも備えたルーラとじゃかなり差が出る。


「大丈夫か?」


「もう少しスピードを緩めてくれると助かるわね」


気丈に振る舞ってはいるがかなり辛そうだ。


「ほら乗れ」


フィーリアの前に屈む。フィーリアは始め戸惑った様子も見えたが直ぐにおぶさってきた。いわゆるおんぶ状態だ。


「しっかり捕まってろよ」


「うん」


フィーリアをおんぶして一気に加速する。人一人抱えてるとは思えない早さだ。


【運搬:Lv1】を習得しました。習得したスキルは直ぐにONにする。フィーリアは物じゃないよって突っ込みたくなる。


それにしてもフィーリアをおぶって走っただけで運搬スキルを手に入れてしまった。流石難易度easy。


ルーラはこちらの様子に気づかずにどんどん進んで行ってしまった。少しは気を使ってほしいが、走り出した時からすでに獲物を狙う獣同然に集中していたので気を使うのは無理だろう。これも獣人としての本能かね。


置いていかれてもこっちにはマップ機能があるのでルーラは捕捉済みだ。


ステータスとスキル、前世でクソ親父と鬼爺に夜叉みたいな母親に鍛えられた経験を生かし一気に加速する。

時に野山に放置され野宿させられた経験が活かされてる気がする。前世じゃ決して感謝してやらないが今はその経験がありがたい、気もする。


考えてるうちに【悪路走破】スキルのレベルが上がる。


やはりスキルレベルが上がると違う。感覚がより研ぎ澄まされ、よりどう走れば良いかが自然とわかってくる。

あと数秒もしないうちにルーラに追い付けるだろう。



「追い付いたぞルーラ」


茂みに身を潜めるルーラの背後から気配を消して近づき声を掛ける。


「流石トウカ。担いでいても追い付けると思っていたぞ。それにしてもフィーリアは羨ましいぞ。後で私とも変わってくれ」


「何言ってるのよ。ルーラが置いてくからじゃない!」


「まぁ。いいから。で?獲物は?」


「あれが獲物だ」


わかっておいてくなら一声かけてほしいぞルーラ。


報連相は大切です。


「それでどう狩る?」


高レベルの俺達にとって鹿を追いかけることはさほど難しくない。俺とルーラは【悪路走破】スキルを持っているので直ぐに追い付ける。フィーリアはこの距離なら精神魔法を使えば動物相手なら楽勝だ。


故に過程を楽しむならどう狩るかが大切だ。


「そうだのぉ。トウカのその弓の実力を見せてもらおうか」


「なんだせっかく来たのに自分でやらないのか?」


「よいよい私からトウカへのプレゼントだ」


「じゃぁお言葉に甘えて失礼っと」


さっと茂みから体をだして流れるように弓を引き絞り矢を放つ。


矢は木々や茂みの隙間を抜けて鹿へと迫る。あと数センチ。確実に仕留めた。そう思った。


「はっ」


「えっ」


鹿はこめかみに迫った矢を超反応で頭を振って回避する。頭を降った瞬間鹿の頭部が見えなかった。


な、なんて鹿だ。動物の域を超えてるぞ。


「お~凄い鹿だ」


呆気にとられた俺とフィーリアはアホな顔をしてる。自分でもわかる。ありゃ今の弓じゃ無理だ。弓が違っても仕留めれるかわからない。


ルーラは茂みから出て仁王立ちで感心している。


「お~じゃないわ!何だあれ!」


「わ、私も初めて見ました。あの距離で矢を躱す鹿」


「私もだ。この世は不思議がいっぱいだな」


不思議がいっぱいだでは片付かないと思いますけどルーラさん。


ま、鹿肉は手に入らなかったが【弓術:Lv1】【照準:Lv1】スキルを獲得出来たから良しとするか。


弓で狙った鹿は狩れなかったが、帰りの道中で兎を数匹仕留めた。

見た目が可愛いと矢を射るのに躊躇してしまう。だが、フィーリアもルーラも気にした様子もなく狩りをしていた。ここら辺は異世界人とのギャップですかね。


そんなこんなで狩りを終えた俺達は馬車に戻り、ルーラが血抜きを手早く済ませた兎をフィーリアがささっと丸焼きに。


お姫様の血抜きの手早さに驚きつつも兎を一匹丸々3人でおやつ代わりに美味しくいただいた。

中々歯応えがあって脂がのって旨かった。また香辛料が肉の旨味を引き立てていて食がどんどん進んでしまった。


残りの兎はアイテムストレージにしまってあるので、また美味しく頂こう。

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