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氷魔法教室の1年間  作者: うぞぞ
1章

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4/10

新学期-4

長雨が続いた後の、珍しく晴れた日だった。

窓から差し込む陽光が、久しぶりに氷魔法教室を明るく照らしている。


ロイオンは1人、執務机で静かに本を捲っていた。

シュラインとニーナは買い出しに出ていて不在だ。

頁を捲る音だけが、静かな室内に響いていた。


「ただいま戻りました!」


元気な声と共に扉が開く。

ニーナとシュラインが、揃って教室に入ってきた。

2人共、やけに息が上がっている。

額には汗が滲み、ローブの裾は少し汚れていた。


「おかえり、何かあったのかい?」


ロイオンが首を傾げながら尋ねる。

本を閉じ、椅子の背にもたれかかる。


「とんだ大冒険だったよ」


シュラインがため息を吐く。

手にした紙袋を机に置く動作も、どこか疲れている。


なんでも、買い物をしたまでは良かったが、帰り道にガラの悪い連中に絡まれたそうだ。

表通りを外れた路地で、数人の男たちに囲まれたらしい。


「怪我は無かったかい?」

「はい、先輩が守ってくれたので!」

「それは良かった」


ロイオンが目を細める。

2人とも、目立った外傷はない。

少しローブの裾が泥跳ねで汚れているくらいだ。


「先輩、格好良かったんですよ」


ニーナが目を輝かせながら言う。

シュラインが鮮やかに男たちを撃退したと、身振り手振りを交えて話す。

まるで観劇をしたかのような、興奮した語り口だ。


「『今度手を出したらタダじゃおかない』って決め台詞まで」

「話を盛るな」


シュラインがため息を吐く。

実際は氷魔法で水たまりを凍らせ、相手を転倒させた隙に逃げて来たらしい。

決め台詞など言っていない、とシュラインは主張する。


「でも、恰好良かったのは事実ですよ?」

「……そうか」


シュラインが照れるように紅茶を淹れ始める。

カップを取り出し、茶葉を入れる手つきは少しだけ乱れていた。

ニーナは、そんな先輩の横顔を楽しそうに眺めている。


「ニーナを狙った犯行?」

「違うと思う。学生を狙う子悪党だったよ」


シュラインが答える。

だが侯爵令嬢であるニーナを狙う可能性もあった。

だとすれば、今日の買い出しは浅慮だったかもしれない。

そうシュラインは内心で反省していた。


「仮にそうだとしても、先輩が守ってくれるんですよね?」

「頼りにするな。自分の身は自分で守れ」

「そんなぁ」


ニーナが不満そうに、だが楽しそうに答える。

その笑顔を見て、シュラインは小さく息を吐いた。

本当に手のかかる後輩だ、だが不思議と嫌ではない。

紅茶に砂糖を落としながら、シュラインはそんなことを考えていた。


「まぁ今日は早めに帰って、ゆっくり休むといいよ」


ロイオンが静かに言う。

その言葉に、2人は頷いた。


「また買い物行きましょうね、先輩」

「次は何事も無いことを祈る」


ニーナが小さく笑った。

その笑顔は、先程の危険があったことなど忘れたかのように明るかった。

シュラインは紅茶をひと口飲み、温かさと甘さにほっと息を吐く。

窓の外では、雨上がりの空が青く澄み渡っていた。

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