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城郭の調香師 第1部 赤い月の呪いと調香師と紫の炎  作者: 悠 聖藍


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第1部 第25話 手紙その2

 僕はジュリアンからの手紙を読んでみる。


 親愛なるスチュワート様へ


 この度は、ご迷惑をおかけしてしまい、大変申し訳ありません。

大好きなスチュワート様に嫌われることを覚悟の上で、私はこんな事を起こしてしまいました。


 私は、自分の妹を守るためと言いながら

実のところは、あの女に復讐したかっただけなのかもしれません。


 私は、自分の特異遺伝子をずっと呪って生きてきました。

両親にも妹にもその力はなく、なぜ私だけが特異遺伝子を持って生まれたのかと。


 母は、そんな私を忌み嫌い、稼ぎが悪くとも家族のために精一杯働いていた父に

暴言を浴びせるようになりました。


 やがて父は精神的に追い詰められ、私と妹を残して、この世を去ってしまいました。


 父がいなくなった後、母はまるでせいせいしたかのように

男遊びに明け暮れるようになりました。


 私は自分と妹を守るために家を出て、やがてその能力を認められ

裏の運び屋としてその世界に身を投じてしまいました。


 当時の私には、それしか生きる選択肢がなかったのです。


 それでも、妹には真っ当に生きてほしくて、私が裏の仕事をしている事は伏せていました。

ですが、私の不注意でそれが妹に知られてしまい、私は国家情報調査局に逮捕されました。


 その後、この城郭都市でパティシエの親方を紹介していただき

あとはご存知の通り、パティシエの従業員として生きてきました。


「え?警察じゃなく、国家情報調査局…NIA に逮捕???」


「どうやらそうみたいだね。続きを読んでみなさい」


「わかりました」


 正直に言えば、私は当初、パティシエの仕事にほとんど興味がありませんでした。


 しかし、親方の作るスイーツはどれも本当に美味しく

私の心を強く揺さぶりました。

パティスリー・アンを訪れるお客さんたちは、皆、目を輝かせながらスイーツを買っていく。

親方は必要最小限の言葉しか発しないのに

それでもなお、これほどまでに人の心を感動させることができる。

その姿に、私は深く感激すると同時に、強い憧れを抱きました。


 そして、ここまで面倒を見てくださった親方への恩に報いるためにも

私自身もパティシエとして生きていこうと、心から決意したのです。


 そんな折、ふと立ち寄ったのが、スチュワート様の香水工房でした。

スチュワート様のお人柄はもちろん、その香りにも強く心を惹かれ、

本当にこの城郭都市に来ることができて良かったと、初めて思えました。


 最後に、お詫びとして、私が全力で作ったケーキがあります。

もし、私の行いが決して許されるものではないとお思いでしたら、

どうかそのケーキをお捨てください。


 メゾン・ド・リュミエレル社のコンペが

素晴らしいものとなることを、心よりお祈りしております。


                   ジュリアン

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