第1部 第26話 ジュリアンのケーキ
僕はジュリアンの手紙を読み終えた。
「え?ケーキ?」
そう呟いた、まさにその時、シェーンさんが調香室をノックして現れた。
「若、北十番街のパティスリー・アンのオーナーシェフの方がお見えになりましたが、どうしますか?」
「わかった。応接室に案内してくれ」
「かしこまりました」
シェーンさんは、パティスリー・アンのオーナーシェフ
つまり、ジュリアンの親方を応接室に案内した。
僕も師匠にお願いして同席させてもらう事にした。
「早朝、突然、失礼」
「いえ、お久しぶりです。アルノーさん」
パティスリー・アンのオーナーシェフであるアルノー・ベルジュさん。
その腕前は超一流だが、必要最小限の単語でしか話さないからわかりにくい。
「我、詫、弟子、迷惑」
「いえ、ご丁寧にありがとうございます。あれはジュリアンのせいではありません」
すげー!!師匠、あんな短い単語だけですべてを読み取ってる!!
「調香師、コンペ、応援」
「ああ、ジュリアンから聞いたんですね。ええ、ありがとうございます」
あれだけで、なんで会話が成立するんだよ!!
「弟子…作成…譲渡…詫…」
「ジュリアンが、私のために作ったケーキをアルノーさんがわざわざ持ってきてくれたのですね」
「弟子…不始末…我…謝罪」
アルノーさんは、深々と一例し、師匠に謝罪した。
「アルノーさん、頭を上げてください。あれはジュリアンのせいではありません。私はジュリアンを責めるつもりもありません。なのでアルノーさんお願いします。どうかジュリアンがいつでも戻って来れるように、どうか居場所を作ってあげてください。ジュリアンはアルノーさんのおかげで立ち直ったと言ってもいい」
アルノーさんは頭をあげて声を震わせながら言った。
「我、感謝、本当、謝罪、ジュリアン、悪意、無」
そう言って、アルノーさんはケーキが入っている箱を開けた。
「ジュリアン…丹精…真心…誠心…」
そのケーキは、チョコレートとベリーの赤紫色に輝き
芳醇でジューシーな香りでいっきに応接室は包まれた。
「…これは…!!なんと見事なケーキなんだ!!」
「すごい…見た目も豪華だけど、ベリーの香りがすごくいい!!これ、買ったら絶対に高いやつだ!!」
「ジョン…!!」
アイナが、失礼な事を言うなという目で僕に訴えた。
「あ、す…すみません…!」




