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365日のサンタクロース  作者: 鈴木
2008年のサンタクロース
3/17

2008年4月19日

桜の見頃もすっかり過ぎて、少しずつ緑の濃くなってきた季節。

葉桜から覗く空は、生憎と灰色だった。


それでもいつもと変わらず忙しない街中を悠々と歩くあたしは、夕飯の買い物を済ませて、いつも通りの休日を満喫しながら、自宅へと足を進めた。



「……あんた、何してんの?」



自宅マンション前。

いつぞやに見た懐かしくも暑苦しい赤に、思わず、夕飯のサンマを落としそうになった。



「あっ、おにぎりごちそうさまでした!」



いつの話をしてるのか。

おにぎりをあげたのは、確か、1ヶ月以上前だったような。

とりあえず、どこからどう見ても不審者以外何者でもない正真正銘サンタクロースの襟首をひっつかんで、引きずるように自宅へと駆け上がった。



「で?あんた、ノルウェーはどうしたの?」



紅茶が切れてたので代わりに玄米茶を出しながら、相変わらずな付け髭を外すサンタクロースに、首を捻ってそう言った。



「桜が見頃だって聞いて来たんですけど……」

「……は?桜?」



何の話だ。



「はい。アメリカで行き倒れちゃって、そのときマイケルが“日本では今頃桜が見頃らしい”って言ってたんで……」



マイケルって誰だ。

というか、やっぱりまた行き倒れたのか。


──こいつ大丈夫か。


いつぞやに抱いた不安に、あたしはまた駆られた。

玄米茶を啜るサンタクロースってのも笑える構図だが、こいつの思考回路の方がよっぽど心配になる。



「大体、アメリカまでは行けたんでしょ?何でまた日本に」



ものすごく無駄なことだと思うのは、きっと、あたしだけじゃなかろう。

詳しくはないが、桜ならアメリカにもあったはずだ。

日本から贈られた桜が植えられた並木道を、いつだったかテレビで見たことがある。

ああ、あっちとこっちでは季節が違うか……いや、季節が異なるのは南半球であって、アメリカは同じくらいじゃなかったっけ?

時差を考えながらサンタクロース青年をぼんやりと眺めていると、玄米茶から視線を上げた彼が、えへへと照れくさそうに笑って言った。



「……あなたと見たくって」



二の句が継げないとは、まさに、このことかもしれないと──あんぐりしながら、そんなことを思った。



「……もう見頃は過ぎて葉桜だけど、それでもいいなら見に行く?」

「はい!」



嬉しそうに笑ったサンタクロースに、呆れて溜め息が出たけれど。



「とりあえず、着替えてからね」



ユニセックスのスウェットしかなかったのでそれを着せて、にこにこしながら隣を歩くサンタクロースが、日本生まれだと聞いたのはこの日の夕飯時。

ちゃっかりサンマを一緒に食べるはめになったあたしは、この状況がおかしいことに、まだ、気づいていなかった。



「サンマって秋じゃないんですか?」

「うるさいな、食べたかったのよ」






end?

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