第61話 王太子殿下、来られない人のことも考える
誰かが楽しみにしてくれることは、嬉しいものです。
まだ始まってもいない企画の話をしてもらえる。
必ず行きます、と言ってもらえる。
どんな展示になるのかと、目を輝かせてもらえる。
自分たちが長い時間をかけて考えてきたものを、誰かが待ってくれている。
それは、準備を続ける人にとって、大きな力になります。
けれど。
期待が増えれば増えるほど、忘れてはいけないことがあります。
会場へ入れる人の数には限りがある。
茶席へ座れる人は、さらに少ない。
時間が合わない人もいれば。
混雑が苦手な人もいる。
王太子殿下が参加すると聞いただけで、近づきにくいと感じる人もいる。
楽しみにしてくれている人の全員を、同じ形で迎えることはできません。
ならば。
来られない人には、何も届けられないのでしょうか。
予約を取れなかった人は。
混雑で引き返した人は。
人前で言葉を書くことに、どうしても勇気を持てなかった人は。
企画の外へ置いてしまってよいのでしょうか。
春祭りまで、あと二週間。
王国史礼法研究会は。
正式許可をいただいた喜びから。
実際に人を迎える責任へ。
少しずつ、足を進めていました。
◇
朝の開放学習室。
私が扉を開けると。
アルノルド殿下は、机いっぱいに紙を広げていました。
昨日までの配置図や役割表とは違います。
小さな数字。
時間。
来場人数。
必要枚数。
どうやら、体験紙や案内紙の印刷数を計算しているようです。
そして。
その横には、当然のように心得紙が置かれていました。
『期待されても、全員が来られると思わない』
『人が多いことを成功だと思いすぎない』
『殿下目当ての人を責めない』
『予約できない人へ、申し訳ないを繰り返さない』
『ナリアと一緒に説明する回を増やそうとしない』
『茶席二名を、特別な二名と呼ばない』
『整理札がなくなっても池へ行かない』
私は。
最後まで読み。
一度、目を閉じました。
池。
今日もあります。
「ごきげんよう、殿下」
「ルイート嬢、ごきげんよう」
殿下は顔を上げました。
目元に少し疲れがあります。
「昨日、遅くまで計算されましたか?」
「少し」
「少し?」
「……かなり」
正直です。
私は殿下の向かいへ座りました。
紙を見ます。
「体験紙、二百枚?」
「ああ」
「多くありませんか?」
「少ないかもしれない」
殿下は真剣な顔でした。
「学園の生徒数を考えると」
「全員が来場するわけではありません」
「だが、掲示板の前で話していた者は多かった」
「はい」
「昨日も、廊下で必ず行くと言われた」
「はい」
「茶席へ入りたい者も」
「茶席は一日三回、各回二名です」
「六名」
殿下が小さく言いました。
少ない。
そう思っているのでしょう。
「六名しか座れない」
「はい」
「楽しみにしている者が、もっといる」
「そうですね」
「増やせないだろうか」
来ました。
殿下は、やはり考えていました。
自分たちを待ってくれる人がいる。
なら、全員を迎えたい。
優しさでもあります。
しかし。
現実には限界があります。
「殿下」
「はい」
「なぜ、茶席を二名に減らしたのでしたか?」
殿下は黙りました。
分かっています。
「一人ずつの言葉を、急がず聞くため」
「はい」
「三名だと、時間が足りない」
「はい」
「机も狭い」
「はい」
「なら」
殿下は。
自分で答えを出しました。
「増やさない方がいい」
「私は、そう思います」
殿下は人数表を見つめました。
「六名」
「はい」
「選ばれた者だけが、特別な時間を受け取るように見えないだろうか」
そこが気になっていたようです。
茶席へ入れる人。
入れない人。
そこに優劣があるように見えてしまうこと。
「茶席を、企画の中心にしすぎなければよいと思います」
「中心にしない」
「展示と体験紙だけでも、企画が完結する形です」
「はい」
「茶席は、希望する方が、少人数で言葉について話せる追加の場」
殿下は少し考えました。
「追加の場」
「はい」
「茶席へ入れなくても、企画へ参加したことになる?」
「もちろんです」
私は体験紙の完成版を取りました。
「この一枚だけでも、ご自身の言葉を考えられます」
「はい」
「展示だけ見て、誰かへの言葉を心の中で考える方もいるでしょう」
「はい」
「紙へ書かなくても?」
「それも参加です」
殿下は。
少し驚いたような顔をしました。
「書かなくても」
「はい」
「茶席へ座らなくても」
「はい」
「展示を最後まで見なくても?」
「入口の一文だけを読み、自分の言葉について少し考えて帰る方もいるかもしれません」
殿下は黙りました。
企画へ参加する。
その意味を。
少し狭く考えていたのでしょう。
すべてを見る。
書く。
茶席へ座る。
そこで初めて、企画を受け取ったことになると。
「では」
殿下は。
人数表の横へ、新しい言葉を書きました。
『参加の形は一つではない』
心得紙ではなく。
企画の紙へ。
私は、その一文を見て少し笑いました。
「とても大切だと思います」
「なら、茶席を増やすより」
「はい」
「茶席へ入れない人にも、持ち帰れるものを考える方がいい」
殿下自身が、そこへ辿り着きました。
「そうですね」
「体験紙を、会場の外でも受け取れるようにできないか」
「入口前に置きますか?」
「混雑する」
「では、別の場所にも?」
殿下の目が少し明るくなりました。
「図書室」
「図書室?」
「言葉や手紙に関する本の近くへ、少数置いてもらう」
なるほど。
春祭り当日。
会場へ来なくても。
図書室へ立ち寄った人が。
体験紙を一枚持ち帰れる。
「図書委員と司書の先生へ相談が必要ですね」
「ああ」
「ですが、良い案だと思います」
殿下は。
少しだけ嬉しそうに頷きました。
「ナリアにも聞きたい」
自然に出ました。
私へ許可を求めるのではなく。
礼法と体験紙の中心担当であるナリア様へ。
「はい」
私は答えました。
「ぜひ、直接」
殿下は、もう心得紙を見ませんでした。
自然に相談する準備ができています。
◇
レオン様は。
学習室へ入るとすぐに。
殿下が作った人数表を見ました。
「二百枚は多いです」
一言目でした。
殿下の肩が、少し下がります。
「やはり」
「会場内で使用する想定枚数としては」
「会場内では?」
レオン様は鞄から、昨日までの来場予測表を取り出しました。
いつ作ったのでしょう。
予想はしていましたが。
本当に持っています。
「小講義室の定員。開場時間。体験席の回転。立ち書き台。通路混雑。これらを考えると、会場内で実際に使われる体験紙は八十枚から百二十枚程度です」
「そんなに少ない?」
「見学のみの方もいます」
「はい」
「一枚を長く使う方もいます」
「はい」
「余白を含め、百五十枚で十分です」
殿下は二百という数字を見ました。
そして。
自分で線を引き。
百五十へ直しました。
「余った場合は?」
私が尋ねると。
「春祭り後の研究会活動で使用できます」
無駄にはなりません。
「図書室にも置きたい」
殿下が言いました。
レオン様のペンが止まりました。
「会場外配布ですか?」
「ああ」
殿下は、先ほど私と話したことを説明しました。
会場へ入れない人。
混雑が苦手な人。
茶席へ座れない人。
すべてを見なくても。
自分なりの形で参加できるように。
レオン様は、黙って聞いていました。
途中で否定しません。
最後まで聞き。
少し考えます。
「良い案です」
殿下の表情が明るくなりました。
一度で受け取ります。
「ありがとう」
「ただし」
来ました。
「図書室へ置くだけでは、説明不足になる可能性があります」
「入口の三文を、体験紙の裏に載せる?」
殿下がすぐに考えます。
「はい」
レオン様は頷きました。
「会場配布用と、持ち帰り用で二種類に分ける方法があります」
「二種類?」
私は尋ねました。
「会場用は、受付で説明を受ける前提。持ち帰り用は、裏面に短い説明と注意事項を入れる」
「印刷数が増えますわね」
エレナ様の声が、扉の方からしました。
ちょうど入ってきたところです。
今日も菓子箱。
そして。
小さな陶器の札が入った籠を持っています。
「ごきげんよう」
「ごきげんよう、エレナ様」
エレナ様は籠を机へ置きました。
『蜂蜜』
『小麦』
『卵』
『乳』
材料表示用の見本札です。
「菓子工房から届きましたの」
「もう?」
「はい」
「早いですね」
「正式契約が済みましたので」
エレナ様は、誇らしそうです。
それから。
体験紙の話へ戻ります。
「持ち帰り用を別に印刷するのは、良いと思いますわ」
「費用は?」
レオン様が尋ねます。
「茶菓予算に余裕はありません」
エレナ様が、すぐに牽制しました。
「まだ何も言っていません」
「蜂蜜の質は下げませんわ」
「下げろとは言っていません」
いつものやり取りです。
殿下が、少し笑いました。
「王国史資料の写し費用が、予定より少なく済んだ」
全員が殿下を見ました。
「王家側で写しを用意してもらえることになった」
「費用負担は?」
レオン様が尋ねます。
「王家の教育資料提供として扱われる」
「では、その分を体験紙へ回せます」
「蜂蜜へは?」
エレナ様が聞きます。
「回しません」
「念のためですわ」
本当に、蜂蜜に関しては一歩も引きません。
「持ち帰り用は、何枚?」
私は尋ねました。
レオン様が計算します。
「図書室へ三十枚。会場出口へ、持ち帰り希望者用として五十枚。予備二十枚」
「合計百枚」
殿下が言いました。
「会場用百五十。持ち帰り用百」
「はい」
「全部で二百五十」
最初の二百より増えました。
殿下が少し複雑そうです。
「減らしたはずが」
「用途が違います」
レオン様は冷静です。
「必要数を分けた結果です」
殿下は頷きました。
ただ多く刷るのではなく。
誰に。
どこで。
どのように渡すか。
考えた枚数です。
「図書室へ置くなら」
エレナ様が言いました。
「小さな箱も必要ですわね」
「箱?」
「紙だけ積むと、散らかります」
確かに。
「春の花を描いた箱」
殿下が言いました。
エレナ様の目が輝きました。
「素敵ですわ」
殿下は、少し得意そうです。
「ただし」
レオン様が言いました。
「装飾は控えめに。図書室です」
「分かっていますわ」
エレナ様は言いましたが。
どこまで控えめになるか。
少し不安です。
◇
ナリア様が入ってきたのは。
持ち帰り用体験紙の裏面へ、何を書くか話し始めた時でした。
「ごきげんよう」
「ごきげんよう、ナリア」
殿下は立ち上がりました。
「今日も来てくれてありがとう」
「ごきげんよう、殿下。本日もよろしくお願いいたします」
ナリア様は。
机に広がる枚数表を見て、少し目を丸くしました。
「印刷枚数ですか?」
「ああ」
殿下が答えました。
「それと、会場へ来られない者にも体験紙を渡せないか考えている」
ナリア様は、すぐに席へ着かず。
殿下の顔を見ました。
「会場へ来られない方へ?」
「はい」
「どうして、そのように?」
殿下は。
少しだけ迷いました。
うまく説明しようとしているのでしょう。
ですが。
大きな言葉にしません。
「茶席は六名しか入れない」
「はい」
「会場も、混雑すれば入場を止めることがある」
「はい」
「でも、来られなかった者が、企画へ参加できなかったことにはしたくない」
ナリア様の目元が。
少し柔らかくなりました。
「はい」
「図書室へ、持ち帰り用の体験紙を置く案が出ている」
「とても良いと思います」
即答でした。
殿下の顔が明るくなります。
でも。
聞き返しません。
「ありがとう」
ナリア様は、体験紙の完成版を手に取りました。
「会場用とは、少し変えるのですか?」
レオン様が答えます。
「裏面へ、短い説明を入れます」
「どのような?」
「今、考えていたところです」
ナリア様は席へ着きました。
体験紙を裏返します。
白い面。
ここへ。
会場の説明なしでも使える言葉を置く。
「最初に」
ナリア様が言いました。
「これは、正しい文を書くための紙ではないと伝えたいです」
「はい」
私は頷きました。
「会場では、受付で説明できます」
「持ち帰りでは、紙だけですものね」
エレナ様も言います。
殿下がペンを取りました。
「『立派な言葉を作る必要はありません』」
ナリア様が頷きました。
「はい」
「次は」
殿下は考えます。
「『誰かへ伝えたいことを、一文から考えるための紙です』」
「分かりやすいです」
ナリア様が言いました。
「そして」
少し考え。
「『書いた後、すぐに相手へ渡さなくても構いません』」
殿下のペンが止まりました。
出口展示にも使った言葉です。
「持ち帰る時間」
「はい」
ナリア様は答えました。
「会場へ来られない方は、一人で書くことになります。書いた後、どうすればよいか迷うかもしれません」
「渡さなくてもいい」
「はい」
「書くだけでもいい」
「はい」
「途中でやめても?」
殿下が尋ねました。
ナリア様は、柔らかく頷きました。
「もちろんです」
殿下は。
少しだけ紙を見つめました。
自分にも。
まだ渡していない言葉があります。
書いたかもしれない言葉。
心の中だけの言葉。
途中で止めた言葉。
「なら」
殿下は書きました。
『最後まで書けなくても構いません』
ナリア様が、その一文を見ました。
そして。
「とても大切だと思います」
静かに言いました。
「言葉にできない日もありますものね」
殿下の目が、少し揺れました。
「ああ」
それだけ。
でも。
二人は。
言葉にできない苦しさを。
それぞれ知っています。
殿下は。
好きなのに、逆の言葉しか出なかった。
ナリア様は。
傷ついても、身分差の前で何も言えなかった。
最後まで書けなくてもいい。
それは。
春祭りへ来る誰かのための言葉であり。
二人が過去の自分へ渡す言葉でもあるのかもしれません。
「裏面案」
レオン様が清書します。
『これは、正しい文や立派な文を書くための紙ではありません。誰かへ伝えたいことを、一文から考えるための紙です。最後まで書けなくても、すぐに相手へ渡さなくても構いません。ご自身の言葉を、ご自身の速さでお持ち帰りください』
最後。
「ご自身の速さ」
私は繰り返しました。
「良いですね」
ナリア様も。
「はい」
殿下は。
少しだけ微笑みました。
「急がない」
「はい」
ナリア様が答えます。
「この研究会が、一番学んできたことです」
その通りです。
◇
持ち帰り用体験紙が決まると。
次は。
春祭り当日の告知文です。
正式開催決定の札は、すでに掲示されています。
ですが。
会場。
開場時間。
茶席の予約方法。
展示の内容。
注意事項。
これらをまとめた正式な案内を、学園掲示板へ出す必要があります。
「告知は、明日の昼に掲示します」
レオン様が言いました。
「茶席の予約受付は、その翌朝から」
「先着?」
殿下が尋ねます。
「はい」
「六名だけ」
「はい」
殿下の表情が、また少し曇りました。
ナリア様が気づきます。
「気になりますか?」
殿下は。
少し迷い。
正直に答えました。
「ああ」
「入れない方が?」
「申し訳ないと思う」
ナリア様は。
すぐに「仕方ありません」とは言いませんでした。
少し考えます。
「殿下」
「はい」
「茶席へ入れない方は、殿下に断られたことになるのでしょうか」
殿下は目を瞬かせました。
「いや」
「研究会が嫌っているから、入れないのでしょうか」
「違う」
「では」
ナリア様は、穏やかに続けました。
「人数に限りがあるだけです」
「はい」
「申し訳ないと思うことと、自分たちが悪いと思うことは違います」
以前。
殿下は。
何かが思い通りにならないと。
自分が悪い。
自分が不甲斐ない。
そう思いすぎていました。
今も。
全員を迎えられないことを。
自分の不足だと感じかけています。
「できないことがある」
殿下が言いました。
「はい」
「だから、できる形を増やす」
「はい」
「持ち帰り用体験紙」
「はい」
ナリア様は微笑みました。
「茶席へ入れなくても、企画へ参加できます」
朝。
私が殿下へ伝えたこと。
今度は。
殿下が自分の言葉でナリア様と共有しています。
「なら、告知にも書こう」
殿下が言いました。
「何を?」
「茶席へ入れなくても、展示と体験紙は予約不要だと」
「はい」
「体験紙は、図書室でも持ち帰れる」
「はい」
「茶席の予約だけを大きく書かない」
レオン様が頷きました。
「重要です」
告知案。
『王国史礼法研究会
春を招く言葉――王国史に見る招待と感謝の礼法』
『王国史に残る招待文・返礼文の展示と、短い言葉を考える体験を行います。展示および体験紙の利用に予約は必要ありません。内容を研究会へ見せる必要もありません』
『少人数制茶席は、一日三回、各回二名。事前予約制です。予約できなかった方も、展示・体験へ自由に参加できます』
『持ち帰り用体験紙は、会場出口および図書室に用意します』
最後に。
『殿下の資料説明時間は、安全上公表いたしません』
必要な情報。
すべて入っています。
ですが。
少し硬い。
「題名の下に」
エレナ様が言いました。
「一文、柔らかな誘いを入れませんか?」
「どのような?」
私が尋ねます。
エレナ様は。
少し考え。
「『まだ言葉にならない気持ちも、どうぞそのままお持ちください』」
室内が静かになりました。
とても良いです。
殿下も。
ナリア様も。
その一文を見つめています。
「まだ言葉にならない」
殿下が小さく言いました。
「はい」
エレナ様が答えます。
「書ける方だけの展示ではありませんもの」
ナリア様が頷きました。
「入口で、言葉が出なくても大丈夫だと分かります」
私は。
少しだけ笑いました。
「採用しましょう」
レオン様も頷きました。
告知文の最初。
題名の下に。
『まだ言葉にならない気持ちも、どうぞそのままお持ちください』
その一文が入りました。
誰かを誘う言葉。
誰かへ感謝する言葉。
そして。
まだ出せない言葉。
すべてを。
拒まない場所。
この研究会が。
本当に作ろうとしているものが。
少しずつ、はっきりしてきました。
◇
昼休み。
正式な告知文は、まだ掲示されていません。
ですが。
茶席が予約制になるという話は。
すでに食堂へ広まっていました。
「六名だけですって」
「少ないですわね」
「一回二名なら仕方ありません」
「予約は先着?」
「明後日からだそうです」
「朝早く行かなくては」
「殿下が参加する回は分からないのでしょう?」
「どの回にもいらっしゃらないそうですわ。殿下は資料説明だけ」
「では茶席はナリア様たちと?」
「それでも参加したいです」
予想以上です。
茶席そのものへの関心も高い。
エレナ様の蜂蜜菓子。
少人数で言葉を考える時間。
それを楽しみにしている方がいます。
同時に。
「六名に入れなかったら、何もできないの?」
「展示は自由ですって」
「体験紙も」
「図書室でも持ち帰れるそうです」
「それなら安心ですわ」
「人が多いところが苦手なので、図書室でいただこうかしら」
「私も、会場で書くのは恥ずかしいです」
持ち帰り案は。
もう役に立ちそうです。
私は。
その会話を聞きながら。
朝、殿下が考えたことを思い出しました。
来られない人にも。
参加の形を。
殿下が今ここにいれば。
きっと安心したでしょう。
ナリア様は。
食堂へ入る前から。
令嬢たちに囲まれていました。
「クラウゼン様、茶席ではどのようなお話を?」
「書いた文を必ず見せるのですか?」
「何も書けなかった場合も、参加できます?」
「好きな方への招待でもよいのでしょうか?」
一度に質問が来ます。
ナリア様は。
以前なら。
圧倒されていたかもしれません。
今日は。
一度呼吸をしました。
「順番にお答えしますね」
穏やかに言いました。
令嬢たちも。
少し静かになります。
「茶席では、ご自身が話してよいと思う範囲だけお聞きします。文を見せる必要はありません」
「何も書けなかったら?」
「書けなかった理由を話す必要もありません。紅茶とお菓子を召し上がりながら、展示で気になった言葉についてお話しいただいても構いません」
「好きな方への招待は?」
ナリア様の頬が。
ほんの少しだけ赤くなりました。
殿下を思い出したのでしょうか。
「もちろん構いません」
でも。
声は落ち着いています。
「ただし、書くことと渡すことは別に考えてください。お相手が受け取れる時と場所を大切に」
「はい」
令嬢たちは、真剣に頷きました。
「茶席へ入れなかった場合も?」
「展示と体験紙へ自由に参加できます。図書室にも、持ち帰り用を置く予定です」
「それならよかったですわ」
「ありがとうございます」
「楽しみにしております」
令嬢たちは。
満足そうに離れていきました。
ナリア様は。
私たちの席へ来ると。
少しだけ肩を落としました。
「緊張しました」
「立派でした」
私が言うと。
ナリア様は、小さく笑いました。
「ありがとうございます」
エレナ様が。
今日も包みを出します。
「持ち帰り用体験紙決定祝いですわ」
「そこも祝うのですか?」
「大切ですもの」
今日の菓子は。
小さな封筒の形でした。
ナリア様が、思わず笑います。
「本当に封筒ですね」
「中に何か入っていますか?」
私が尋ねると。
「蜂蜜餡が少し」
「言葉を包んでいる?」
「はい」
完全に体験紙です。
私たちは食べました。
外側は軽い焼き菓子。
中には、ほんの少しだけ柔らかな甘さ。
「見えないところに入っていますね」
ナリア様が言いました。
「言葉も、外からは見えませんもの」
エレナ様が答えました。
ナリア様は。
菓子を見つめながら。
「でも、なくなったわけではない」
小さく言いました。
「はい」
私は答えました。
「まだ渡していないだけです」
ナリア様の頬が、少し赤くなりました。
何を思ったのでしょう。
殿下への言葉でしょうか。
以前の傷でしょうか。
それとも。
自分でもまだ分からない気持ちでしょうか。
私は聞きませんでした。
持ち帰る時間も。
必要ですから。
◇
放課後。
掲示板へ出す正式告知文の最終確認を行いました。
大きさ。
文字の配置。
題名。
会場。
時間。
予約方法。
持ち帰り用体験紙。
注意事項。
そして。
『まだ言葉にならない気持ちも、どうぞそのままお持ちください』
題名のすぐ下。
一番目につく場所です。
「少し詩的すぎませんか?」
レオン様が言いました。
エレナ様の表情が、少し曇ります。
自分の提案です。
ですが。
反論する前に。
殿下が言いました。
「僕は、必要だと思う」
エレナ様を庇うためではありません。
理由を続けます。
「企画名と説明だけでは、言葉を書ける者のための展示に見える」
「はい」
「この一文があれば、まだ書けない者も入ってよいと分かる」
ナリア様も頷きました。
「私も、残したいです」
「理由は?」
レオン様が尋ねます。
「体験紙の裏面にも、『最後まで書けなくてよい』とあります」
「はい」
「告知と体験紙で、同じ考えを伝えられます」
私も言いました。
「詩的ではありますが、内容と離れてはいません」
レオン様は。
三人の意見を聞き。
少し考えました。
「分かりました」
採用です。
エレナ様が、少し安心したように微笑みました。
「ありがとうございます」
殿下も。
「良い言葉だ」
短く言いました。
エレナ様の表情が、さらに明るくなりました。
研究会では。
誰かの案を採用する時も。
理由があります。
好きだから。
親しいから。
ではなく。
企画へ必要だから。
そのうえで。
案を出した人への感謝も忘れません。
とても良い形です。
告知文は。
明日の昼休みに掲示。
茶席予約は。
翌朝、開放学習室前の受付机で開始。
予約札は六枚。
一人一枚。
代理予約は不可。
参加時間は選択可能。
ただし。
殿下の資料説明時間とは無関係。
重ねて告知します。
「予約開始時に、人が集まりすぎる可能性があります」
レオン様が言いました。
「六名だけですものね」
私が答えます。
「先着順をやめる?」
殿下が尋ねました。
「抽選?」
「はい」
全員が少し考えました。
先着順なら分かりやすい。
ですが。
朝早く来られない人は不利です。
授業や家庭の事情。
遠方から通う生徒。
朝に委員会活動がある者。
「抽選の方が公平でしょうか」
ナリア様が言いました。
レオン様は、時間を確認します。
「申し込み期間を一日。希望者が六名を超えた場合、抽選」
「その方が、急いで並ばなくてよい」
殿下が答えます。
「はい」
「混雑も減る」
「はい」
「では、抽選」
決まりました。
これも。
来られない人を考えた結果です。
早く来られる人だけではなく。
誰にでも、同じように機会がある形。
申込用紙には。
名前。
希望時間。
第二希望。
食品材料の確認。
それだけ。
殿下への個人的な文を書く欄は、もちろんありません。
「抽選は誰が?」
エレナ様が尋ねます。
「教師立ち会いで行います」
レオン様が答えます。
「研究会員が選んだと思われないように」
殿下が頷きました。
「僕たちの知人が選ばれても、選ばれなくても」
「公平に」
「はい」
ナリア様も。
少し安心したようでした。
自分と親しい方が申し込んだ場合。
選んだと思われるのは、負担です。
「当選者には?」
「翌日、封書で通知します」
エレナ様が言いました。
「封筒は、花の印を」
「控えめに」
レオン様がすぐに言います。
「分かっていますわ」
本当に分かっているでしょうか。
◇
告知の掲示前に。
私たちは。
学園内で数人へ、文章が分かりやすいか確認してもらいました。
これまで体験紙へ協力してくださった方々。
そして。
図書委員の生徒。
下級生。
騎士科。
文章を読むのが得意な人。
苦手な人。
掲示板と同じ高さへ仮に貼り。
少し離れて読んでもらいます。
「題名は見えます」
「会場も」
「予約が抽選になったのですね」
「茶席へ入れなくても大丈夫だと分かります」
「図書室でも紙をもらえるのが嬉しいです」
「最初の一文が、少し気になります」
最後。
トーマス様です。
以前。
二人の先輩へ感謝文を書いた下級生。
「気になる、というのは?」
ナリア様が尋ねました。
「良い意味です」
トーマス様は言いました。
「まだ言葉にならない気持ちも、というところ」
「はい」
「僕は、前の体験紙で、最初は何を書けばいいか分かりませんでした」
「はい」
「だから」
少し照れながら続けます。
「分からないまま行ってもいいのだと思えます」
エレナ様の目元が、少し潤みました。
自分の一文が。
ちゃんと誰かへ届いています。
「ありがとうございます」
声が、いつもより柔らかいです。
トーマス様は。
少し迷い。
「先輩へ、紙を渡しました」
私たちは。
一瞬、動きを止めました。
「お二人へ?」
殿下が尋ねます。
「はい」
「どうだった?」
殿下の声は、穏やかです。
結果を急がせません。
「驚いていました」
「はい」
「でも」
トーマス様は。
嬉しそうに笑いました。
「ありがとう、と言ってくださいました」
その場に。
小さな拍手が起きました。
誰が最初か分かりません。
協力者の令嬢。
図書委員。
私たち。
大きくはありません。
でも。
温かい拍手です。
トーマス様は、恥ずかしそうに頭を下げました。
殿下は。
目を少し潤ませています。
ですが。
奇声は上げません。
池へも行きません。
「渡せたのだな」
「はい」
「自分の言葉で」
「はい」
殿下は。
少しだけ笑いました。
「よかった」
それだけ。
でも。
その言葉には。
この企画を作ってきた意味が。
少しだけ形になった喜びがありました。
ナリア様も。
トーマス様へ言いました。
「相手が受け取れる時と場所を、考えてくださいましたか?」
「はい。稽古が終わった後に、一人ずつ」
「とても良いと思います」
「ありがとうございます」
書くこと。
持ち帰ること。
そして。
渡すこと。
そのすべてを。
自分の速さで選んだ人がいます。
春祭りは、まだ始まっていません。
でも。
私たちが作った体験紙は。
もう一人の生徒の言葉を。
誰かへ届けました。
殿下が。
ナリア様を見ました。
ナリア様も。
殿下を見ます。
二人の間に。
同じ喜びが流れたのだと思います。
「作ってよかった」
殿下が言いました。
ナリア様は。
ゆっくり頷きました。
「はい」
短い。
でも。
十分な言葉でした。
◇
開放学習室へ戻った後。
殿下は。
しばらく黙っていました。
机の上には。
正式告知文。
持ち帰り用体験紙。
印刷枚数表。
茶席申込用紙。
たくさんの準備があります。
ですが。
殿下の目は。
そのどれでもない場所を見ています。
「殿下?」
私が声をかけると。
殿下は顔を上げました。
「トーマスは、渡せた」
「はい」
「僕たちの紙を使って」
「はい」
「でも」
殿下は。
少し言葉を探しました。
「僕は、まだ」
ナリア様が。
殿下を見ました。
室内の空気が。
少しだけ止まります。
殿下には。
まだ渡していない言葉があります。
好きです。
大切です。
ずっと。
いろいろ。
でも。
それを今。
口にすることはできません。
「まだ、渡せない」
殿下は。
正直に言いました。
以前なら。
自分を責めたでしょう。
下級生にできたのに。
王太子である自分にはできない。
不甲斐ない。
そう思ったかもしれません。
今も。
少しだけ、その影があります。
ナリア様は。
すぐに励ましませんでした。
少し考えます。
そして。
「殿下」
「はい」
「トーマス様は、ご自身の速さで渡されました」
「はい」
「殿下には、殿下の速さがあります」
体験紙の裏面。
ご自身の言葉を、ご自身の速さでお持ち帰りください。
その言葉が。
今。
殿下へ戻ってきます。
「遅すぎない?」
殿下が尋ねました。
一回。
ナリア様は。
すぐには答えません。
「私は」
ゆっくり言いました。
「殿下が、急いで言葉を渡されるより」
殿下の目を見ます。
「私が受け取れる形を考えてくださる方が、嬉しいです」
室内の空気が。
完全に止まりました。
私も。
エレナ様も。
レオン様も。
動けません。
殿下は。
息をしているでしょうか。
ナリア様自身。
言ってから。
頬が真っ赤になりました。
でも。
目を逸らしません。
殿下は。
何度も言葉を飲み込みました。
今。
ここで。
好きだと言えば。
ナリア様は、まだ受け取れないかもしれません。
でも。
彼女は。
言葉を選んでくれることが嬉しいと。
はっきり伝えてくれました。
「……分かった」
殿下の声は。
少し掠れていました。
「急がない」
「はい」
「でも」
殿下は。
慎重に。
一つだけ尋ねました。
「いつか、受け取ってもらえるように、考えていてもいい?」
未来を決めつけない。
期限を求めない。
ただ。
自分が想いを持っていてよいか。
尋ねました。
ナリア様は。
長い時間。
黙っていました。
誰も急かしません。
窓の外。
春祭り準備の音。
遠くの楽器。
廊下を走る足音。
開放学習室の中だけ。
時間がゆっくりになったようでした。
やがて。
ナリア様は。
ほんの少しだけ笑いました。
「はい」
短い。
でも。
明確な返事でした。
「考えていてください」
殿下の目が。
大きく見開かれました。
涙が。
少しだけ浮かびました。
ですが。
泣き崩れません。
立ち上がりません。
池へも行きません。
両手を膝の上で握り。
呼吸をして。
それから。
「ありがとう」
言いました。
たった一言。
ナリア様も。
「はい」
答えました。
それ以上。
何も足しません。
今は。
そのくらいが。
一番受け取りやすいのです。
私は。
視線を少しだけ下げました。
エレナ様も。
扇を閉じ。
胸元へ置いています。
レオン様は。
記録していません。
さすがに。
この場面は。
活動記録へ書くべきではないと分かっているのでしょう。
長い沈黙。
温かい沈黙。
殿下は。
ナリア様からもらった短い許可を。
何度も確認しませんでした。
考えていてよい。
その言葉を。
一度で。
大切に受け取りました。
◇
沈黙を破ったのは。
やはりエレナ様でした。
静かに。
本当に静かに。
菓子箱を開きます。
「本日の分ですわ」
声も。
いつもより控えめです。
箱の中には。
小さな封筒型の蜂蜜菓子。
昼に食べたものより。
さらに小さい。
「一つだけ?」
私が尋ねると。
エレナ様は頷きました。
「今日は、一つで十分ですわ」
殿下が。
菓子を見ました。
そして。
ナリア様を見そうになり。
でも。
見すぎないように。
少しだけ視線を戻しました。
一つずつ。
全員で食べます。
外側は。
軽い。
中の蜂蜜餡は。
ほんの少し。
でも。
飲み込んだ後。
香りが長く残りました。
「少ないのに」
殿下が言いました。
「残る」
エレナ様が微笑みました。
「短い言葉ほど、残ることもありますもの」
ナリア様の頬が。
また少し赤くなりました。
殿下も。
でも。
誰もからかいません。
今日は。
その言葉を。
そのまま残しておくべき日です。
◇
その日の最後。
正式告知文は。
教師確認へ提出されました。
持ち帰り用体験紙。
百枚。
会場用。
百五十枚。
図書室配布箱。
材料表示札。
茶席申込用紙。
すべて。
次の段階へ進みます。
レオン様が進捗表へ印をつけました。
『印刷枚数 確定』
『持ち帰り用体験紙 完成』
『茶席申込方法 抽選制に決定』
『正式告知文 教師確認中』
『図書室配布 申請予定』
「明日」
レオン様が言いました。
「展示板の固定具を、用務員へ相談します」
「はい」
「午後は、王家資料の写し確認」
「はい」
「そして」
少しだけ紙をめくります。
「茶席申込用の抽選箱を準備します」
エレナ様の目が輝きました。
「花を」
「控えめに」
レオン様が即答しました。
「分かっていますわ」
またです。
殿下が。
少し笑いました。
ナリア様も。
学習室の空気が。
ようやく、いつもの研究会へ戻ります。
ですが。
先ほどの言葉は。
なくなっていません。
考えていてもいい。
考えていてください。
短い二つの言葉が。
二人の間へ。
静かに残っています。
◇
帰り道。
正式告知前だというのに。
掲示板の前には、また生徒たちが集まっていました。
今日の仮札には。
『詳細案内 明日掲示予定』
それだけです。
「明日ですって」
「茶席は抽選になるらしいですわ」
「先着ではないのね」
「それなら授業前に並ばなくて済みます」
「図書室でも体験紙をいただけるとか」
「人が多いのが苦手なので助かります」
「まだ言葉にならなくても来てよいらしいです」
「何ですか、それ」
「告知に入るそうですわ」
「素敵ですわね」
まだ正式に貼られていない一文まで。
広がっています。
噂は早いです。
でも。
悪い広がり方ではありません。
言葉を書ける人だけではない。
茶席へ入れる人だけではない。
殿下へ会える人だけではない。
誰でも。
自分の形で参加できる。
その考えが。
少しずつ学園へ伝わっています。
殿下とナリア様は。
少し前を歩いていました。
今日は。
いつもより少し距離があります。
気まずいからではないでしょう。
先ほど交わした言葉を。
それぞれ。
胸の中で持ち帰っているのだと思います。
殿下は。
何度もナリア様を見ません。
ナリア様も。
何かを言おうとしません。
でも。
歩く速さは。
自然に近い。
同じ道を。
急がず。
進んでいます。
中庭の池。
夕陽。
風。
水面へ。
春祭りの飾りが映っています。
まだ完成していない飾り。
まだ火の入っていない灯り。
でも。
そこに置かれることは決まっています。
いつか。
灯すために。
今は。
風へ耐えられるように整えている。
殿下の言葉も。
きっと同じです。
まだ。
渡す時ではありません。
でも。
考えていてよい。
いつか。
相手が受け取れる形に整えて。
渡すために。
エレナ様が、私の隣へ来ました。
「マリア様」
「はい」
「今日は、大きな一歩でしたわね」
「はい」
「殿下、告白しませんでした」
「本当に、よく耐えました」
「ナリア様も」
「はい」
「考えていてください、と」
私は。
前を歩く二人を見ました。
「受け取る準備を、少しずつ始めてくださっているのかもしれません」
「そうですわね」
「でも」
「はい」
「まだ急がせません」
エレナ様は。
優しく微笑みました。
「もちろんですわ」
レオン様が前から言います。
「明日は固定具です」
「分かっています」
私たちは笑いました。
現実。
準備。
次の作業。
それがあるから。
二人も。
恋だけに飲み込まれず。
少しずつ進めるのでしょう。
王太子殿下。
今日のあなたは。
自分たちの企画を楽しみにしてくれる人が増えたからこそ、会場へ来られない人のことも考えました。
茶席へ座れる六名だけを、特別な参加者にはしませんでした。
展示を見る人。
体験紙を書く人。
図書室から一枚持ち帰る人。
何も書けないまま入口の言葉だけを読む人。
すべての形を。
参加として受け取ろうとしました。
そして。
トーマス様が自分の言葉を渡せたことを喜びながら。
まだ渡せない自分を、以前のように責めきりませんでした。
ナリア様には。
ナリア様が受け取れる形を考えてほしいと言っていただけました。
考えていてよいと。
待っていてよいと。
短い許可をいただきました。
どうか。
その言葉を。
恋が叶った証だと急いで解釈しないでくださいませ。
まだ。
告白の許可ではありません。
婚約の約束でもありません。
ただ。
あなたが大切に考えていることを。
ナリア様は、拒まずに受け取ってくださいました。
それだけです。
でも。
今の二人にとっては。
その「それだけ」が。
どれほど大きなことでしょう。
来られない人にも、届く形を考えるように。
まだ受け取れない相手にも、届く時を待つ。
言葉は。
早く渡せばよいのではありません。
相手が受け取れる場所。
受け取れる時。
受け取れる形。
それを考える時間もまた。
誰かを大切にするということなのです。




