第52話 王太子殿下、春祭りの準備で隣を見る
何かを一緒に作る時間は、人の距離を少しだけ変えます。
ただ話すだけでは分からないことがあります。
考え方の癖。
迷った時の視線。
相手が何を大切にしているのか。
どこで立ち止まり、どこで笑うのか。
同じ机に資料を広げ、同じ目的へ向かって言葉を重ねる。
それは、恋人らしい甘い時間ではないかもしれません。
けれど、相手を知るにはとても大切な時間です。
春祭りの準備が始まったアルスード学園は、朝から少しだけ浮き足立っていました。
廊下の空気が、普段より明るいのです。
窓辺では数人の令嬢が色布の見本を広げ、別の廊下では男子生徒たちが展示用の木枠について話し合っています。
音楽研究会の生徒たちは、朝から楽譜を抱えて歩いていました。
花飾り担当らしい令嬢たちは、花壇の前でああでもないこうでもないと相談しています。
「春祭り、今年はどこが一番人を集めるかしら」
「音楽研究会の演奏会は毎年人気ですわ」
「花飾りの展示も綺麗でしょうね」
「王国史礼法研究会も何か出すそうですわよ」
「この前の小発表が良かったものね」
「殿下とナリア様も関わられるのかしら」
そんな声が、廊下のあちこちから聞こえてきます。
王国史礼法研究会。
少し前までは、殿下とナリア様の関係を守るための、かなり苦しい口実でもありました。
けれど今では、学園内でも一つの研究会として認識され始めています。
それが嬉しいような、不思議なような。
私は廊下を歩きながら、少しだけ肩の力を抜きました。
小発表。
感謝と招待の研究。
小さな茶会。
そして春祭り。
私たちは、ちゃんと次へ進んでいます。
開放学習室に入ると、すでに殿下が来ていました。
今日は机の上に、いつもの心得紙ではなく、数枚の資料が広げられています。
王家所蔵資料の写しでしょう。
古い春祭りに関する記録。
茶会の招待文。
王宮園遊会で使われた返礼の一文。
見ただけで、殿下がかなり準備してきたことが分かります。
「ごきげんよう、殿下」
「ルイート嬢、ごきげんよう」
殿下は顔を上げました。
その表情は、少し誇らしげです。
けれど、以前のように「褒めてほしい」と視線で訴える感じではありません。
自分ができる役割を果たそうとしている顔でした。
「王家資料ですか?」
「ああ。閲覧許可が下りたものの写しだ。春祭りそのものではなく、王宮の春の園遊会に近い記録も多いが、招待と返礼の例としては使えると思う」
「すごいですね」
「まだ選別が必要だ」
殿下は資料を見下ろしました。
「その選別を、ナリアにも相談したい」
ナリア様にも。
私はその言葉に、ほんの少しだけ胸が温かくなりました。
以前なら、殿下はまず私に「これでよいだろうか」と聞いたかもしれません。
ですが今は違います。
礼法のことならナリア様へ。
王国史のことなら私へ。
法的確認ならレオン様へ。
場の空気や茶菓ならエレナ様へ。
殿下は少しずつ、相手の得意分野を見て頼るようになっています。
それは、王太子としても、研究会の一員としても、大きな変化でした。
「ナリア様も、きっと喜ばれると思います」
「そうだろうか」
「はい」
殿下は少しだけ安心したように頷きました。
けれど、すぐに心得紙を一枚だけ取り出しました。
今日の心得は、少ないです。
『春祭り準備を口実にしすぎない』
『相談は相談。誘いではない』
『ナリアの意見を聞く』
『先回りしない』
『研究会の一員として動く』
少ないと言っても、十分多い気もします。
ですが、以前の紙束に比べればかなり絞られています。
「殿下」
「はい」
「今日も良い心得です」
「昨日考えた」
「眠れましたか?」
「まあまあ」
まあまあ。
以前よりは良さそうです。
そこへ、エレナ様とレオン様が入ってきました。
エレナ様は、今日も当然のように小さな包みを持っています。
「本日は春祭り準備用ですわ」
「準備用」
私が繰り返すと、エレナ様はにこりと笑いました。
「作業を始める日は、甘すぎてはいけませんの。手が止まりますから」
「なるほど」
「けれど、味が薄すぎると気分が乗りません」
「なるほど……?」
「ですので、少し香ばしく、でも軽いものにしました」
エレナ様の蜂蜜菓子は、もはや研究会の一部です。
誰も疑問に思わなくなっています。
レオン様も席に着くなり、資料を確認し始めました。
「王家資料の写しですか」
「ああ。使えそうなものを持ってきた」
「正式展示に使用する場合は、教師の確認と王家側の許可範囲の再確認が必要です」
「分かっている」
殿下は頷きました。
「その辺りは、レオンに確認してほしい」
「承知しました」
自然です。
とても自然に、殿下がレオン様へ頼りました。
レオン様も当然のように受け取っています。
研究会らしい。
そう思った時、扉が叩かれました。
ナリア様です。
「ごきげんよう」
ナリア様が入ってきた瞬間、部屋の空気が少し柔らかくなりました。
今日のナリア様は、いつもより少し明るい表情をしています。
春祭りの準備を楽しみにしているのでしょうか。
殿下は立ち上がりました。
「ナリア、ごきげんよう。今日も来てくれてありがとう」
「ごきげんよう、殿下。本日もよろしくお願いいたします」
いつもの挨拶。
ですが、その後すぐに殿下は私を見ませんでした。
昨日と同じです。
まっすぐナリア様へ向きました。
「ナリア」
「はい」
「春祭りで使えそうな王家資料の写しを持ってきた。礼法の観点から、展示に向くものを一緒に見てもらえないだろうか」
ナリア様は、一瞬驚いたように目を瞬かせました。
それから、ゆっくり微笑みました。
「はい。喜んで」
殿下の表情が少しだけ和らぎました。
けれど、喜びすぎません。
先回りもしません。
「ありがとう」
短く言って、資料をナリア様の前に広げました。
私は、その様子を少し離れた席から見ていました。
いつもなら、殿下とナリア様の間に何か起きないか、咳払いの準備をしていたでしょう。
今も完全に気を抜けるわけではありません。
ですが、今日は違いました。
二人は、ちゃんと資料を見ています。
殿下はナリア様の指先が資料に触れるのを見すぎないように気をつけています。
ナリア様は、殿下が持ってきた資料を大切そうに扱っています。
その姿を見て、私は思いました。
もう、私が常に間に立つ必要はないのだと。
寂しくないと言えば嘘になります。
でも、それ以上に頼もしかった。
◇◇◇
春祭り企画の正式な準備は、その日から本格的に始まりました。
まずは展示内容の選別です。
私たちが計画しているのは、研究会としての小さな展示茶席。
題名は仮に、
『春を招く言葉――王国史に見る招待と感謝の礼法』
となりました。
少し長いですが、内容は伝わります。
展示する資料は三種類。
一つ目は、王国史に残る春の園遊会や茶会の記録。
二つ目は、招待状と返礼文の例。
三つ目は、来場者が実際に短い招待文や感謝文を作れる小さな体験紙。
そして、時間を区切って小さな茶席を開く。
ただし、あくまで研究会内の活動として。
大規模にしすぎない。
これが重要でした。
「大きくしすぎると、運営が回らなくなります」
レオン様が冷静に言いました。
「また、殿下がいるというだけで人が増える可能性があります」
「それは……避けたい」
殿下は少し困った顔をしました。
ナリア様が考え込みます。
「殿下が常に茶席におられるのではなく、資料展示の一部で短く説明される形ならどうでしょう」
「説明?」
「はい。王家資料について、研究会の一員として短く」
殿下は少し考えました。
「王太子としての挨拶ではなく、資料の説明役か」
「はい」
「それなら、王族目当てではなく資料に関心を持っていただけるかもしれない」
レオン様が頷きました。
「有効です。殿下の参加時間も限定できます」
私はそのやり取りを聞きながら、また少し感動していました。
ナリア様が、殿下の立場を理解した上で提案しています。
殿下も、それを素直に受け取り、考えている。
以前の二人では難しかった会話です。
殿下は、王太子としての役割を重くしすぎず、研究会の一員としてどう動くかを考えている。
ナリア様は、殿下を遠くの王族としてではなく、同じ研究会の仲間として見ながら助言している。
二人の距離は、派手に近づいたわけではありません。
でも、確実に自然になっています。
エレナ様が手を上げました。
「茶菓についてですが」
「はい」
全員が自然に聞く姿勢になります。
もう完全に正式議題です。
「当日は、蜂蜜菓子を出すとしても、あまり数を増やしすぎると茶席ではなく菓子目当てになります」
「それは問題ですね」
私が言うと、エレナ様は少しだけ残念そうに頷きました。
「ええ。非常に残念ですが、研究会の趣旨を守るためです」
「エレナ様がそれを言うと重みがありますね」
「苦渋の決断ですわ」
ナリア様が笑いました。
「でも、少量でも印象に残るお菓子なら、茶席の雰囲気を作れると思います」
「さすがナリア様」
エレナ様の目が輝きます。
「では、春の花をイメージした小さな蜂蜜菓子を二種類ほどにしましょう」
「二種類」
レオン様が記録します。
「茶菓、二種類。提供数制限あり」
春祭り準備の資料が、少しずつ埋まっていきます。
私は王国史展示の担当として、園遊会の記録を読みました。
百年前、王妃が春の庭で開いた小規模茶会。
地方貴族を招き、正式な式典では話せないことを穏やかに聞いた記録。
そこに添えられた招待文が、とても良いものでした。
『春の庭にて、遠き地の風を聞かせていただけましたら幸いです』
短く、美しい。
相手を招く理由がある。
私はその文を読み上げました。
「素敵ですわね」
エレナ様が言います。
ナリア様も頷きました。
「相手の話を聞きたい、という気持ちが伝わります」
殿下は、少し真剣な顔になりました。
「王妃は、地方貴族の不満を直接聞くために茶会を開いたと聞いたことがある」
「はい。記録にもあります」
私は資料を示しました。
「式典ではなく茶会という形を取ったからこそ、相手も少し話しやすかったようです」
ナリア様が静かに言いました。
「茶会は、ただ楽しむだけの場ではなく、相手の言葉を聞く場にもなるのですね」
「はい」
殿下はナリア様を見ました。
「それは、今の研究会にも近い気がする」
「研究会に?」
「話しやすい形を整えて、相手の言葉を聞く」
ナリア様の表情が柔らかくなりました。
「そうですね」
その短いやり取りに、私はまた胸が温かくなりました。
二人は、自分たちの経験を研究に結びつけています。
恋愛相談から始まった研究会が、本当に言葉と礼法を考える場所になっているのです。
◇◇◇
昼休み。
食堂では、春祭りの企画提出が近いこともあり、生徒たちの会話がさらに賑やかになっていました。
「礼法研究会の展示茶席、もし実現したら行きたいですわ」
「招待文を作る体験ができるらしいです」
「楽しそうですわね」
「殿下も説明役をされるとか」
「でも短時間らしいですわ」
「ナリア様の礼法解説も聞けるのかしら」
噂が早い。
まだ正式決定していないのに、もうかなり広がっています。
これは、うまく調整しないと人が集まりすぎるかもしれません。
私は少し不安になりました。
ナリア様は、今日も私たちの席へ来ました。
エレナ様が春祭り準備用の蜂蜜菓子を出します。
「本日は二種類の試作ですわ」
「もう試作が」
ナリア様が嬉しそうに目を輝かせました。
可愛いです。
殿下が見たら固まるでしょう。
今日この場に殿下がいなくてよかったかもしれません。
エレナ様は二つの小さな菓子を並べました。
一つは淡い花蜜の香り。
もう一つは少し香ばしい蜂蜜焼き菓子。
「茶席で出すなら、どちらが良いと思いますか?」
エレナ様が尋ねます。
ナリア様は真剣に食べ比べました。
「花蜜の方は春らしくて素敵です。でも、少し香りが強いかもしれません。紅茶によってはぶつかるかも」
「なるほど」
「香ばしい方は、少し地味ですが、会話を邪魔しないと思います」
「会話を邪魔しない」
エレナ様は満足そうに頷きました。
「殿下と同じ表現ですわね」
ナリア様の頬が赤くなりました。
「そ、そうでしたか?」
「はい。先日の茶会で殿下もそう仰っていましたわ」
ナリア様は少し照れたように笑いました。
「では、殿下もこちらの方がお好きかもしれませんね」
何気ない一言。
ですが、私は聞き逃しませんでした。
殿下もこちらの方がお好きかもしれませんね。
ナリア様が、殿下の好みを自然に思い浮かべました。
それは小さなことです。
でも、とても大切なことです。
相手がどう感じるかを考える。
相手の言葉を覚えている。
その積み重ねが、二人の距離を作っていきます。
「ナリア様」
「はい?」
「殿下の言葉、よく覚えていらっしゃいますね」
私が言うと、ナリア様は一気に赤くなりました。
「あ、いえ、その、研究会の発言ですから」
「はい。研究会の発言ですね」
「マリア様」
「すみません」
エレナ様は扇の陰で楽しそうに笑っています。
ナリア様は蜂蜜菓子を見つめながら、小さな声で言いました。
「でも……殿下が、どう感じるかを考えることが増えた気がします」
私は、静かに頷きました。
「それは、素敵なことだと思います」
「そうでしょうか」
「はい」
ナリア様は少しだけ微笑みました。
「では、少しずつで」
また、その言葉です。
少しずつ。
この作品の中で、何度も何度も積み重ねてきた言葉。
私はその言葉を聞くたびに、二人の恋が急がず進んでいることを感じます。
◇◇◇
放課後。
開放学習室には、春祭り企画用の紙が壁に貼られていました。
レオン様が持ってきたものです。
項目ごとに整理されています。
題名。
目的。
展示内容。
茶席内容。
役割分担。
必要物品。
時間配分。
注意点。
非常に見やすい。
非常にレオン様らしい。
「まず、正式提出用の企画書を作成します」
レオン様が言いました。
「本日中に骨子を固め、次回教師へ相談しましょう」
「分かりました」
私は頷きました。
殿下は王家資料の使用許可について、追加で確認する事項をまとめています。
ナリア様は、展示する招待文と返礼文の礼法上の注釈を作り始めました。
私は、その二人の作業机を見ました。
殿下とナリア様は隣ではありません。
斜め向かいです。
でも、資料を渡す時に自然に会話が生まれます。
「ナリア、この文は展示に向くだろうか」
「拝見しますね」
ナリア様が資料を受け取ります。
「……とても良い文ですが、少し格式が高すぎるかもしれません。来場者が自分でも使える表現としては、こちらの短い文の方が分かりやすいと思います」
「なるほど。では、格式の例として一つ、実用例として一つに分けるのはどうだろう」
「良いと思います」
殿下が紙に書き込みます。
「ありがとう」
「こちらこそ」
自然です。
驚くほど自然です。
殿下は私を見ません。
ナリア様も私を見ません。
二人で資料を選び、意見を交わし、結論を出しています。
私は、自分の担当資料へ視線を戻しました。
見守りすぎもよくありません。
今の二人には、任せる時間が必要です。
けれど、どうしても耳はそちらへ向いてしまいます。
しばらくして、ナリア様が少し困ったように言いました。
「殿下、こちらの返礼文なのですが」
「はい」
「とても美しいのですが、『心より』という表現が二度続いています」
「重いか?」
殿下が自分で言いました。
ナリア様は少し笑いました。
「はい。少しだけ」
「そうか」
殿下は素直に頷きました。
「一つ削ろう」
「その方が、すっきりすると思います」
殿下が文を直します。
私は、思わず微笑みました。
重いか。
殿下が自分で聞けるようになりました。
そしてナリア様も、少しだけ重いと自然に伝えられるようになりました。
どれほど大きな変化でしょう。
エレナ様が私の隣に来て、小声で言いました。
「マリア様」
「はい」
「今の、見ました?」
「見ました」
「咳払い、いりませんでしたわね」
「はい」
「少し寂しい?」
「少し」
「嬉しい?」
「とても」
エレナ様は満足そうに微笑みました。
「順調ですわ」
順調。
本当に、その通りです。
春祭りの準備は始まったばかり。
けれど、二人はもう、自分たちで会話を重ね始めています。
この先、きっとまた迷うでしょう。
殿下が重くなりかける日もあるでしょう。
ナリア様が遠慮しすぎる日もあるでしょう。
私の咳払いが必要になることも、まだあるかもしれません。
でも今日。
二人は確かに、自分たちの言葉で準備を進めました。
それが、第52話前半の大切な一歩でした。
★★★
春祭りの企画書作りは、思っていたよりずっと地味な作業でした。
華やかな花飾りもありません。
紅茶の香りも、まだありません。
蜂蜜菓子も、今はただの試作品です。
机の上にあるのは、資料、便箋、インク、役割分担表、許可申請用の下書き。
けれど、こういう地味な作業ほど、その人の本当の姿が出るのかもしれません。
目立つところだけを引き受けようとする人。
面倒な確認を誰かに任せる人。
自分の意見ばかり押す人。
逆に、遠慮しすぎて何も言えなくなる人。
そして。
相手の言葉を聞きながら、少しずつ一つの形を作ろうとする人。
今のアルノルド殿下とナリア様は、まさにその途中にいました。
開放学習室の壁には、レオン様が貼った春祭り企画用の大きな紙があります。
『春を招く言葉――王国史に見る招待と感謝の礼法』
仮題ではありますが、かなり形になってきました。
その下には、展示内容が三つ。
一、王国史に残る春の園遊会・茶会の記録展示。
二、招待状、当日の挨拶、返礼文の例と解説。
三、来場者が短い招待文・感謝文を作れる体験紙。
さらに、時間限定の小さな茶席。
これだけ見ると、かなり立派な企画です。
問題は、私たち五人で無理なく運営できるかどうかでした。
「展示だけなら可能です」
レオン様が淡々と言いました。
「しかし茶席を同時に行う場合、人員配置が必要です」
「受付、展示説明、茶席、茶菓管理、混雑対応……」
私は指で数えながら、少し顔をしかめました。
「五人ではぎりぎりですね」
「殿下の参加時間を限定すれば、混雑はある程度抑えられます」
「僕がいるせいで混雑する前提なのだな」
殿下が少し複雑そうに言いました。
レオン様は遠慮なく頷きます。
「はい」
「否定してほしかった」
「事実ですので」
いつものやり取りです。
ナリア様が資料から顔を上げ、少し考えながら言いました。
「茶席を常時開くのではなく、展示を中心にして、茶席は一日に数回だけにするのはどうでしょうか」
「数回?」
殿下がナリア様を見ます。
見すぎではありません。
ちゃんと提案を聞く姿勢です。
「はい。たとえば、午前に一回、午後に二回。各回の人数も少なくします」
ナリア様は紙に簡単な表を書きました。
「茶席を体験したい方は、先に展示を見ていただき、短い招待文か感謝文を書いていただく。その後、茶席でその文について少し話す形にすれば、研究会らしさも出ます」
私は思わず声を上げました。
「それ、とても良いですね」
エレナ様も頷きます。
「茶菓も無理なく準備できますわ」
レオン様はすぐに記録しました。
「茶席、回数制。参加条件として展示閲覧と体験紙記入。各回少人数」
殿下は、ナリア様の書いた表をじっと見ていました。
「ナリア」
「はい」
「この形なら、来た人もただ茶を飲むのではなく、言葉について考える時間になるな」
「はい。せっかく研究会で開くのですから、ただの茶会ではなく、言葉を交わす茶席にできたらよいと思いました」
言葉を交わす茶席。
とても良い響きです。
殿下も同じように感じたのでしょう。
表情が柔らかくなりました。
「良いと思う」
短い言葉。
けれど、ナリア様には十分届いたようでした。
ナリア様の頬が少し赤くなります。
「ありがとうございます」
「採用しよう」
殿下が言いました。
迷いのない声でした。
ナリア様の意見を、きちんと企画の中心に入れる。
それは、ただ褒めるよりもずっと大きな信頼の表れです。
私は、そのやり取りを見て胸の奥がじんわり温かくなりました。
前半でも感じていたことです。
もう、二人は私の合図なしで話し合える。
しかも、ただ雑談するだけではありません。
企画を作るための意見交換ができています。
殿下が問い、ナリア様が考え、殿下が受け取り、形にする。
これができるようになったのは、本当に大きい。
「では、企画書の目的欄を少し直しましょう」
私は紙を引き寄せました。
「『来場者に王国史上の招待文と返礼文を紹介し、実際に短い文を作ることで、言葉が関係を温める役割を学んでもらう』」
「良いと思います」
ナリア様が頷きます。
「ただ、『温める』は少し柔らかい表現なので、正式な企画書では『整える』か『築く』の方がよいかもしれません」
「確かに」
私は書き直しました。
「言葉が関係を築き、整える役割を学ぶ」
「よろしいかと」
レオン様が確認します。
「目的欄、問題ありません」
エレナ様が茶菓の項目へ視線を落としました。
「茶菓は二種類。花蜜の軽いものと、香ばしい蜂蜜焼き菓子。ですが、来場者へ出すなら香りが強すぎない方を中心にした方がよろしいですわね」
ナリア様が先ほどの昼休みの試食を思い出したのか、微笑みました。
「私もそう思います」
殿下が顔を上げました。
「香ばしい方か?」
ナリア様は少し驚きました。
「はい。殿下も、会話を邪魔しないとおっしゃっていましたよね」
殿下の動きが止まりました。
覚えていた。
ナリア様が自分の言葉を覚えていてくれた。
それは殿下にとって、かなり嬉しいことだったでしょう。
ですが、ここで崩れてはいけません。
殿下はゆっくり息を吸いました。
吐きました。
「覚えていてくれたのか」
声は少しだけ柔らかくなっていました。
ナリア様の頬が赤くなります。
「はい。印象に残っていましたので」
殿下は、また少し止まりました。
でも、今度も戻ってきました。
「ありがとう。僕も、あの菓子は茶席に合うと思う」
自然です。
とても自然に返せました。
エレナ様が扇で口元を隠しています。
嬉しそうです。
レオン様は……記録しようとして、私の視線に気づいてやめました。
偉いです。
この場面は、活動記録ではなく、胸の中にしまっておくべき場面です。
◇◇◇
作業は続きました。
春祭り当日の来場者が体験する流れを、実際に確認します。
まず受付。
そこで簡単な説明紙を受け取る。
次に展示を見る。
王国史に残る招待文や返礼文を読み、気に入った一文を選ぶ。
その後、体験紙に自分の短い招待文か感謝文を書く。
希望者は時間指定の茶席へ参加し、自分の書いた文を元に、研究会メンバーと短く話す。
「質問対応が必要ですね」
私が言うと、レオン様が頷きました。
「想定質問を準備しておくべきです」
「たとえば?」
殿下が尋ねました。
「招待文でどこまで親しさを出してよいか。身分差のある相手へ誘いを出す時の注意。感謝文で重くなりすぎない表現。断る余地を入れる書き方」
殿下の目が少し泳ぎました。
すべて身に覚えがある項目です。
ナリア様も少し頬を赤くしています。
私は笑いを堪えながら言いました。
「私たちがこれまで研究してきた内容が、そのまま役立ちますね」
「そうだな」
殿下が小さく答えました。
「経験に基づいている」
レオン様が真顔で言いました。
「説得力があります」
「その言い方は少し恥ずかしい」
「事実です」
エレナ様が楽しそうに笑います。
「殿下の心得紙を展示すれば、大変分かりやすいのでは?」
「絶対にしない」
殿下が即答しました。
ナリア様がくすくす笑っています。
「少し見てみたい気もします」
「ナリア」
「す、すみません」
ナリア様は慌てましたが、まだ笑っています。
殿下は顔を赤くしながらも、少しだけ嬉しそうでした。
ナリア様が冗談を言えるようになった。
それを喜んでいるのでしょう。
しかし、心得紙展示は絶対に避けたいようです。
私も賛成です。
あれは秘伝書です。
公開してはいけません。
作業の途中、殿下が一枚の古い返礼文を手に取りました。
「この文はどうだろう」
ナリア様が覗き込みます。
「拝見します」
そこには、古い貴族が王宮の春の茶会に招かれた後の返礼が記されていました。
『春の庭にて賜りました穏やかな御時間、領地へ戻りましても忘れがたく存じます』
私は読んだ瞬間、少しだけ危険を感じました。
忘れがたく。
最近の殿下が一度使いかけた重い表現です。
殿下も気づいたようで、少し気まずそうにしました。
ナリア様はその文を見て、静かに言いました。
「美しい文ですね」
「重くないか?」
殿下が自分で聞きました。
ナリア様は少し考えます。
「この文の場合、相手が王宮であり、正式な返礼ですから、このくらいの重みは許されると思います」
「なるほど」
「ですが、親しい相手への短い返礼としては、少し重いかもしれません」
「やはり」
殿下は真剣に頷きました。
「展示では、『正式な返礼の重み』として紹介し、隣に『親しい相手へ向ける場合の柔らかな表現』を並べるのはどうでしょうか」
ナリア様が提案しました。
「比較展示か」
殿下が言いました。
「分かりやすいな」
「はい。来場者も、自分の使いたい距離感に合わせて考えられると思います」
レオン様が即座に記録します。
「正式文と親しい文の比較展示。採用候補」
私は頷きました。
「とても良いです」
殿下も、ナリア様へ向き直りました。
「ありがとう。ナリアのおかげで展示が分かりやすくなってきた」
ナリア様の頬が赤くなります。
「殿下が良い資料を持ってきてくださったからです」
殿下の耳も赤くなりました。
ですが、二人ともそれ以上重ねません。
ありがとう。
こちらこそ。
それで終えられる。
その短さが、今の二人には心地よいのだと思います。
◇◇◇
しばらくして、レオン様が企画書の下書きを読み上げました。
「企画名。春を招く言葉――王国史に見る招待と感謝の礼法」
「はい」
「目的。王国史に残る春の茶会、園遊会の招待文および返礼文を紹介し、来場者が短い招待・感謝の言葉を作ることで、言葉が関係を築き、整える役割を学ぶ」
「良いと思います」
「内容。資料展示、礼法解説、体験紙記入、少人数制茶席」
「はい」
「運営人数。五名。茶席は一日三回、各回少人数。殿下の資料説明は時間限定」
殿下が頷きました。
「その方がよい」
「必要物品。展示板、写し資料、体験紙、筆記具、茶器、茶葉、茶菓、受付札」
エレナ様が小さく手を上げました。
「茶菓の材料欄も必要ですわ」
「追記します」
「蜂蜜は質の良いものを」
「予算欄に関わります」
「そこは譲れませんわ」
エレナ様とレオン様が真剣に話し始めました。
蜂蜜菓子の予算。
これも研究会運営上、大切な項目らしいです。
ナリア様はそのやり取りを楽しそうに見ていました。
殿下も少し笑っています。
研究会らしい空気でした。
かつての緊張や危うさだけではなく、こうした穏やかな笑いが増えたこと。
それが本当に嬉しい。
企画書の骨子が固まったところで、次は教師へ見せるための提出用清書です。
これは私とレオン様で整えることになりました。
殿下は王家資料の使用範囲の追加確認。
ナリア様は礼法解説文の作成。
エレナ様は茶菓試作と茶席の空気作り。
役割分担も決まります。
「ナリア」
殿下が声をかけました。
「はい」
「礼法解説文について、必要なら僕が資料の背景説明を手伝う」
ナリア様は少し驚いた後、柔らかく微笑みました。
「ありがとうございます。では、正式文の背景部分で相談させてください」
「ああ」
自然に共同作業が決まりました。
私はそこで口を挟みませんでした。
挟む必要がなかったからです。
エレナ様が隣で、また小さく蜂蜜菓子を差し出してきました。
「見守り追加ですわ」
「ありがとうございます」
私は素直に受け取りました。
本当に必要です。
◇◇◇
夕方が近づく頃。
開放学習室には、紙の擦れる音と、ペンの走る音が静かに響いていました。
窓の外では、春祭りの準備をする生徒たちの声が遠く聞こえます。
誰かが笑う声。
木箱を運ぶ音。
布を広げる音。
学園全体が少しずつ祭りへ向かっている。
その中で、私たちも確かに一つの企画を形にしていました。
殿下とナリア様は、同じ資料を見ながら小さな声で話しています。
「この文の『賜る』は、現代の生徒には少し堅いかもしれない」
「そうですね。注釈を入れましょうか」
「『いただく』に近いが、目上からの恩恵を受ける意味が強い、と書けばよいか」
「はい。ですが、説明が長すぎると展示では読みづらくなります」
「短くするなら?」
「『目上の相手から受ける敬意を含む表現』でしょうか」
「分かりやすい」
その会話に、私は一瞬手を止めました。
二人が、本当に自然に相談しています。
殿下はナリア様の説明を聞き、ナリア様は殿下の歴史知識を受け取る。
互いの得意なものが、同じ資料の上で重なっています。
恋愛として甘い場面ではないかもしれません。
でも、私はこういう場面こそ大切だと思いました。
一緒に何かを作る。
その中で、相手の考え方を知る。
相手の言葉を信じる。
殿下とナリア様に必要なのは、きっとこういう時間です。
派手な告白より先に。
甘い約束より先に。
同じ机で、同じ資料を覗き込む時間。
私はそっと息を吐き、清書作業に戻りました。
今は見守る。
そして、自分の役割を果たす。
それが、今の私にできる一番の支えです。
やがて、企画書の骨子はほぼ完成しました。
あとは教師へ相談し、修正を受けるだけです。
春祭りに向けて、王国史礼法研究会の新しい活動が本当に動き始めました。
研究会が終わる少し前、殿下はナリア様へ資料を返しながら言いました。
「今日は、たくさん助かった」
ナリア様は受け取りながら微笑みました。
「私も、殿下の資料がとても勉強になりました」
「また、明日も相談していいだろうか」
その言葉に、学習室の空気がほんの少しだけ止まりました。
また。
相談。
明日。
それは誘いではありません。
研究会の作業です。
けれど、二人にとっては少し特別な響きを持つ言葉でした。
ナリア様は、赤くなりながらも頷きました。
「はい。もちろんです」
殿下も少し赤くなりました。
でも、言葉を重ねません。
「ありがとう」
それだけ。
よくできました。
私はその一言を聞きながら、静かに活動記録へ書き足しました。
『春祭り企画骨子、概ね完成。資料展示、礼法解説、体験紙、少人数制茶席で構成予定。次回、教師へ相談』
そこには、二人の「また明日」は書きません。
でも、それが今日の一番大きな一歩だった気がしました。
明日も相談する。
明日も同じ資料を見る。
明日も、言葉を重ねる。
その普通の約束が、二人にとって何より自然な次の一歩になっているのです。
★★★
学園の鐘が、放課後の終わりを静かに告げました。
窓から差し込んでいた夕陽は、先ほどよりも低くなり、開放学習室の床へ長い影を落としています。
机の上には、今日一日かけて書き直した企画書。
何度も修正した展示内容。
役割分担表。
そして、殿下が持ち込んだ王家資料の写し。
最初は白かった机の上も、今では紙で埋め尽くされていました。
それだけ、この一日で積み重ねたものがあるということです。
「……ここまでですね」
レオン様が最後の紙を重ね、ゆっくり息を吐きました。
「本日の作業分は終了します」
その一言に、部屋の空気がふっと緩みます。
私は肩を回しました。
思っていた以上に集中していたようで、少しだけ身体が固まっています。
「皆様、お疲れ様でした」
ナリア様が小さく頭を下げました。
「今日は、とても勉強になりました」
「こちらこそ」
私も頭を下げます。
「資料を見比べるだけでも、新しい発見がたくさんありました」
エレナ様は包みを取り出しました。
「それでは、お疲れ様のお菓子ですわ」
「まだあるのですか?」
私が思わず笑うと、エレナ様は胸を張ります。
「働いた後には必要ですもの」
包みの中には、小さな蜂蜜菓子が一つずつ。
今日は試作品ではなく、作業を終えた人への労いとして用意してきたのでしょう。
「甘すぎませんか?」
殿下が尋ねます。
「今日は少しだけ甘めですわ」
エレナ様は微笑みました。
「頑張った日の甘さですもの」
ナリア様は一口食べ、嬉しそうに目を細めました。
「美味しいです……」
「ありがとうございます」
エレナ様も嬉しそうです。
このやり取りも、すっかり研究会の日常になりました。
殿下も菓子を口に運び、小さく頷きます。
「今日は、このくらい甘い方が良い」
「お疲れですものね」
ナリア様が自然に返しました。
「資料もたくさん確認されていましたし」
「少し夢中になっていた」
「私もです」
二人は顔を見合わせ、小さく笑います。
ほんの短い時間。
それだけなのに、私は目を細めました。
以前なら、この笑顔の後には沈黙が重く落ちていました。
どう続ければいいのか分からず、お互いが戸惑ってしまっていたからです。
でも今日は違います。
ナリア様が自然に続けました。
「殿下がお持ちくださった資料、とても興味深かったです」
「そう言ってもらえて良かった」
「特に百年前の園遊会の記録は、ぜひ展示したいと思いました」
「僕もそう思う」
会話が続いています。
無理をしている様子はありません。
私は静かに資料をまとめながら、その光景を見守りました。
少し前なら。
殿下は私を見ていたでしょう。
『次は何を話せばいい?』
そんな視線を送ってきていたでしょう。
でも今は。
もう違います。
殿下はナリア様の返事を待っています。
そして、ナリア様も殿下の言葉を受け止めています。
私は、本当に見守るだけになりました。
それが少し寂しくて。
でも、とても嬉しい。
そんな複雑な気持ちが胸の中でゆっくり混ざり合っていました。
◇
資料を箱へしまい終えた頃には、窓の外は茜色から群青色へ変わり始めていました。
春の夕暮れは穏やかです。
開け放たれた窓から入り込む風が、紙の端を小さく揺らしました。
「今日はここまでにしましょう」
レオン様が企画書を丁寧に封筒へ入れます。
「次回は教師へ相談、その後に修正案を反映します」
「承知しました」
全員が頷きました。
これで春祭り企画は、一歩前へ進みます。
部屋を出ようとした時でした。
廊下の向こうから、何人かの生徒たちの声が聞こえてきます。
「あ、礼法研究会の人たちだ」
「春祭りの準備してたんだよね?」
「殿下もいる」
「本当に展示やるんだ」
「楽しみ」
ひそひそ声。
けれど、悪意はありません。
期待と興味が混ざった声です。
殿下はその声を聞き、少しだけ立ち止まりました。
以前なら、こうした視線だけで緊張していたかもしれません。
しかし今日は違いました。
「期待してもらえるなら、良い展示にしたい」
小さく呟いたその言葉に、私は思わず振り返ります。
ナリア様も聞こえたようでした。
「きっとできます」
自然にそう返しました。
殿下は照れたように笑います。
「ありがとう」
それだけで十分でした。
◇
校舎を出ると、中庭には春の夕風が流れていました。
花壇には色とりどりの花が咲き始め、小さな池には夕焼けの名残が映っています。
私は無意識に、その池へ目を向けました。
あの日。
殿下が落ちた池。
私が思わず叫び。
二人の奇妙な縁が始まった場所。
あの頃は、こんな未来を想像していませんでした。
殿下が笑うようになることも。
ナリア様が自然に冗談を言えるようになることも。
二人が同じ机で資料を広げ、一緒に企画を作ることも。
何一つ、想像できませんでした。
殿下とナリア様は少し前を歩いています。
春祭り当日の動線について話しているようです。
「展示板は入口の近くが良いでしょうか」
「いや、入口だと人が止まりすぎるかもしれない」
「では少し奥へ?」
「その方が流れやすそうだ」
実務的な話。
でも、その実務的な話が途切れません。
私は歩きながら、静かに笑いました。
「マリア様」
隣に来たエレナ様が、小さな声で話しかけます。
「はい」
「今日は一度も咳払いをしませんでしたわね」
私は少し考えてから答えました。
「……本当ですね」
「必要ありませんでしたもの」
「ええ」
その事実が、胸にじんわりと染み込みます。
「相談役のお仕事、少し減ってしまいましたわ」
「そうですね」
「でも、その方が成功なのではなくて?」
私は立ち止まり、もう一度前を歩く二人を見ました。
殿下が何かを言い、ナリア様が笑う。
また殿下が短く返し、ナリア様が頷く。
そこに、私の助言はありません。
でも、ちゃんと会話が続いています。
「……はい」
私は静かに頷きました。
「これが、一番良い形なんだと思います」
エレナ様は優しく微笑みました。
「マリア様が頑張ってこられた証ですわ」
私は少し照れくさくなって笑いました。
「まだ終わってはいませんけれどね」
「もちろんです」
「春祭りもありますし」
「ええ」
「殿下は、きっとまだ何度も転びます」
「間違いありませんわ」
二人で小さく笑います。
その笑い声を聞いた殿下が振り返りました。
「どうした?」
「何でもありません」
私は首を横に振ります。
「殿下、早く行きましょう」
「ああ」
殿下は少し不思議そうな顔をしながらも、またナリア様と歩き始めました。
私はその背中を見送りながら、心の中でそっと呟きます。
王太子殿下。
今日のあなたは、恋を進めたわけではありません。
告白をしたわけでもありません。
特別な約束を交わしたわけでもありません。
けれど、一緒に何かを作るという、とても大切な時間を過ごしました。
そしてナリア様も、あなたと一緒に作ることを自然だと思えるようになっています。
恋は、言葉だけで育つものではありません。
同じ机を囲み。
同じ目的へ向かい。
同じ景色を見ながら歩く。
そんな何気ない積み重ねが、いつか本当の「好き」という言葉を支えてくれるのでしょう。
春祭りまで、あと少し。
新しい季節は、もうすぐそこまで来ています。




