05 お食事会
その後の私は使用人を集めた部屋で同じように自己紹介をさせられた後、先程案内された私にあてがわれた部屋へと戻りました。
荷物の整理などをこなしているうちに夜になり、食堂で先程の紹介された人々、つまり伯爵夫人と、アイリス嬢、そして領地管理人のアルヴィンさんと共に気まずい夕食を頂く事になった。
伯爵の姿が無いのは、今日を含めた数日は別の場所でお泊りらしいです。
「今日から、食事はロザリンド嬢も共に同席します。ロザリンド嬢、何か有れば自由に発言してください」
「あ、はい。私のような者が伯爵家の皆様と同席出来るなどとてもとても光栄です。これからも皆様、どうぞ宜しく御願いします」
と、私が発言した後は終始無言になる食卓である。
アイリス嬢からはキリリと睨みつけられたような気がするし、アルヴィンさんは油断のならないような笑みを見せるだけだ。
でもさすがに客人に対してこの空気は不味いと判断したのか、アルヴィンさんが話を振ってくる。
「ほぅ、叔母上、今日は滅多に開けない特別なワインを開けたのですね。ロザリンド嬢はワインを嗜みますか?」
「えっと、私はあまり……。お酒はスグに酔ってしまって……」
と、か弱い淑女を演じて見た。
はい、これは嘘です。
実は、私はお酒は強い方なのだ。
なぜかというと、長年一緒に過ごした大叔母様が大のお酒好きであり、私が飲めるような年齢になると毎回のようにお酒に付き合わされたからである。
とはいえ、お酒を沢山飲む女性があまり良い眼で見られない事を知っていますので、ここは弱いふりを演じておくのでした。
「そうですか、でも女性はそれが良いでしょう。大酒飲みの女性など見るに耐えませんから」
案の定、アルヴィンさんはそう言って笑いました。
……危なかった!
私は「はははは」と苦笑いを受かべる。
そして乾杯が終わると、料理が次々と運ばれてきました。
クリームとバターたっぷりと使ったトリュフ風味のビーフパイを初めとして、鶏肉を長時間煮込んだ滋養たっぷりのチキンスープ、それにオリーブオイルで炒めたチキンのソテーなどなど。
さらに〆には熟したイチジクのゼリーに同じくイチジクののコンポートを乗せたデザート。
これがまた甘酸っぱくてすごく美味しかったです。
このようにして会話こそ弾まなかったものの、初めての晩餐は無難に過ぎて行ったのでした。
食事の後はお風呂に入ります。
お風呂には良い香りのする香草が入った布袋がプカプカと浮いていて、その匂いを嗅ぐだけで気分が落ち着いてくる。
そんな湯船に浸かりながら身体を軽く手で擦っただけで肌も、そして髪も艶々になった気がしました。
今日は色々逢ったけれど、一日の疲れもヨゴレと共に洗い流された感じです。
お風呂から上がり、身体を丁寧に拭き終わった後は、寝室へと向いベッドへと潜り込みました。
そして今日一日を振り返りながら瞼を閉じました。
初めて、伯爵家で眠る為、緊張のあまりなかなか眠れない、なんてことはなくスグに睡魔が襲ってきます。
明日はどんな一日になるのか、そんな不安は何処へやら、私はあっさりと眠りに就いたのでした。
★★★★★
そんな感じで伯爵家に私が滞在するようになって数日たったある日の朝の事、私は思いのほか早く目覚めてしまいました。
そのまま二度寝をする、という選択肢も有ったのですが、折角なのでそのまま起きる事にする。
カーテンの広げ窓を開けると、朝特有の冷たい風と共に、遠くからカエルの声が聴こえました。
この辺りにはカエルも生息しているようです。
そしてそのままぼーっとしながら外が明るくなる様子をみていると、私の世話をしてくれる侍女がやってきました。
「ロザリンド様、おはようございます。今日は随分と早いですね」
「おはよう。そうね、今日は早く目が覚めてしまったのよ」
「左様でございますか、今日のドレスはどれに致しましょうか?」
「今日も貴女にお任せします」
「了解致しました」
正直な所、上流階級の生活から長い事離れていた私は、ドレスの良し悪しなど分からない身体になってしまったのです。
なので、選ぶところから侍女に丸投げさせてもらいます。
そして数分後、侍女は蒼い色のドレスを携えて戻ってきました。
「このスカイブルーのドレスは如何でしょうか?」
「えぇ、問題ありません。良いのを選んでくれてありがとう」
私はニコリと笑顔を見せてお礼を言い、侍女に手伝って貰いながらスカイブルーのドレスを身に纏いました。
勿論、寸法はピッタリです。
さて次は……。
「今日の髪型はどうされますか?」
「昨日と同じで御願いします」
「了解いたしました」
昨日というか、伯爵家にきてからはいつも同じ髪型なんですけどね。
両サイドの髪を一房ずつ三つ編みにして、それを頭に巻きつけてハーフアップにするのです。
私が指示すると、手際よく侍女は髪を編み込み整えてくれる。
「いつもありがとう」
「いいえ」
そう言ってお辞儀をすると侍女は部屋から出て行きました。
そして私はというと――。
よし、折角早起きしたんだし散歩に行こう!
そう決めた私は部屋を出ると、階下へと足を進めるのでした。




