系統診断と選ばれなかった者
古びた墓石。
「母さん行ってくるよ」
沈黙。返事はない。
ただ、風だけが吹く。
手には荷物。
リデアゆっくり振り返る
墓を背にリデアは歩いて行った。
もう後ろは見ない。
学園都市へ
巨大な門。
高い壁。
人の多さ。
初めて見る世界。
ここは学園都市エミュー。
その中心にある学園アオハラ共鳴学院。
俺は今日そこに入学する。
孤児院しか知らない少年にとって、それは別世界だった。
「ここでライセンスを取る」
「強くなる。」
「二度と、失わないために。」
リデアは
アオハラ共鳴学院に向かって歩いていた。
路地裏。
怒鳴り声。笑い声。
男子A「だから気持ち悪ぃって言ってんだよ」
男子B「見ろよ、その首飾り」
男子A「モンスターのペンダントとか頭おかしいだろ」
壁際。少女。うつむいている。
奇妙な牙のペンダント。
リデアが止まる。目が動く。少女の顔が見える。
「……バウメア?」
少女が顔を上げる。驚いた顔。息が止まる。
「……リデア?」
空気が止まる。時間が止まる。
男子A「知り合いか?」
リデアは答えない。
静かに近づく。
バウメアの前に立つ。
リデア「離れろ」
男子B「は?」
リデアの目。静か。だが異様に冷たい。
男子B「なんだよ、お前」
「聞こえなかったか。離れろって言った」
沈黙。
空気が重い。
男子C「……チッ。行こうぜ」
去る。
静かになる。
「そんなんしてるから周りからいつも変わり者扱いされていじめられるんだぞ。そんなん捨てちまえよ」
「ん、、、うん、でもこれお母さんの貰い物だから」
少し悲しそうなバウメア
「…そんなものに縋らなくていいくらい、強くなれよ」
「うん、、それは私が悪いから」
「やっぱりバウメアだな。でもこれからは自分で戦えるようになれよ。孤児院の時みたいに一緒にいれないからな」
「う、、うん」
少し寂しそうな笑顔。二人は学園へと向かった。
学院門前
生徒
「人数多くね?」
「診断怖ぇ…」
試験官
「受験票をお見せください」
「カイン=1=リデア、確認取れましたお入りください」
「レイン=1=バウメア、確認取れましたお入りください」
「いよいよだな」
騒がしい騒音の中リデアは話だした
「う、、うん」
「俺こっちだからまた」
「うん。ご武運を」
二人の声が重なる
集会所
「番号順に並んで〜。おっほん。全員集まったな。今日からここでライセンス取得まで、共に切磋琢磨していくように。
ここで入学生を代表して挨拶をしてもらう。
エストレージャ=1=ツヴァイ前へ」
生徒たちが騒がしくなった
「おいあれ」
「エストレージャ家の」
「おいマジかよあの有名の?」
紹介されて壇上に立ったのは
黒髪に貴族を思わせるかのような風貌の男
「えー、ここにお集まりの皆さん共に頑張ろう。
学園ではさまざまな場面に遭遇すると思う。
けど皆で助け合えば、、、いいや、
建前はここで終わりにしよう。
この学園でトップになるのは僕だ。
以後よろしく。以上で挨拶とさせていただく」
周りの生徒がどよめき出した。
「あいつむかつく」
「エストレージャ家だからって」
「でもかっこよくない?」
「ぜってぇ負けねー」
みんな静かに。
「挨拶ありがとう戻ってくれ」 先生が進行していった。
「そして、、、みんなは基本知識の義務教育はされてると思うが、スライドショー見せた後に系統診断をしていく」
そしてついに来た系統診断。
大広間
巨大な診断装置に大きな水晶のような球。
円形の祭壇。
観客席。
異様な熱気。
生徒たちは騒がしく
会場はかなり盛り上がっていた
「創造系なら勝ち組だろ」
「変体系は危険らしい」
「ミュートとか存在しないって」
リデアは黙っている。
バウメアは少しからかう感じで言ってきた
「緊張してる?」
「別に」
「そう?」 少し笑う。
診断開始
生徒が触れる。光。文字。歓声。
「ここで簡単に系統診断と各系統を説明するぞ。系統診断ではこの水晶を使う。
ここに手をかざすと、共鳴値が教官の方に出て
身分階級と自身の系統が出るぞ。
そして身分階級は名前の数字にそれぞれの階級が刻まれ、
体のどこかにその階級の数字が現れる。
系統は次の五系統だ。」
・生成系:火を起こす、電気を作る、走らせるなど、エネルギーや事象を生み出す 。
・変換系:石を剣にする、空気を水にする、水に味をつけるなど、既存の物質の性質を変化させる 。
・創造系:完全にゼロからモノを作り出す 。
・加護系:他者または自分を強化する。
・変体系:モンスターの姿に似た状態になる。
歓声。拍手。
バウメアの番。 「レイン=1=バウメア前へ」
「はい!」
手をかざす。
水晶に数字が現れる。「9」
教官「レイン=9=バウメア、干渉体!系統は加護!」
数字は右の手に刻み込まれた。
校長「おお、珍しい。あまりノイズは見ないんじゃがな。
それに加護との相性の良い組み合わせじゃな」
バウメアは安心した様子で嬉しそうにも見えた。
ツヴァイ登場
「エストレージャ=1=ツヴァイ前へ」 手をかざす。
会場がざわつく。
教師「……共鳴値、異常」 装置が暴走。
巨大な光。
教官「これは、、、エストレージャ=5=ツヴァイ、共鳴師!系統は生成系!」
生徒たちが一斉に騒がしくなる
「すげぇ……」
「なんか光ったよ」
リデアが見る。
次々に系統診断が終わっていく。
リデアの番が来た。
「カイン=1=リデア」
歩く。静寂。手を置く。
ピシ。
何かの音がした。光が乱れる。
教師「……?」
水晶にノイズが走る。異音。なりやむ。 画面。表示。、、、
「カイン=1=リデア、無響者、系統なし、、、」
静まり返る会場
一人の生徒がポツリと言った
「無響者!?」
沈黙。
誰も声を出さない。
生徒
「……は?」
ざわめき。
生徒
「ミュート?」
「終わったな」
冷たい視線。リデアの呼吸が止まる。
マグル校長
「この反応……」
教官
「以上だ。この後校長から言葉をいただく」
「グリル=5=マグル校長だ。
「まずは系統診断ご苦労じゃった。例年以上に楽しみな世代に見えた。
これからの人生は長い。それぞれ勉学に励むように。」
「それと……カイン=1=リデア。あとで校長室に来なさい」
リデアは悔しい顔をしながら、
返事はせず小さく頷いた。
廊下で俺は明らかに孤立していた。
リデアは立ち尽くす。
生徒たちの声。
「ミュートってマジ?」「初めて見た」「学院入れんの?」「退学だな」
誰も近づかない。リデアだけ空間が空いている。
そこで世の中の理不尽さを知った。
腕に書かれた1の数字を見る。
みんなはもらった身分階級や系統の話で盛り上がっている。
そこへバウメアが近づいてきた。
「リデア、、、」
「来るな」
そういうとバウメアは怯んで後退りした。
「先帰るね」
バウメアはそうとだけ言ってその場を後にした。
「興味深いね。」
そこへツヴァイが近寄ってきた。
「君、本当にミュートなの? まぁ僕が守ってあげるからさ」
そう言ってツヴァイは去っていった。
教師から伝わる冷たい目線
そして聞こえる声。
「前例がない」
「保護対象か? 退学処理か?」
リデアが聞いてしまう。
リデアは校長室へ向かった。
重い扉。静かな部屋。古い匂い。
扉を開ける。
大きな本がずらりと並ぶ中、校長は中央の椅子に座っていた
そして先に話しかけてきた
「まず今日はご苦労じゃ」
その言葉にリデアはムッとしたが
その表情を隠すように言った
「何がご苦労だ、退学にするなら早くしろ。ミュートの俺に用はないはずだ」
リデアは泣きそうな顔になりながら続けて言った。
リデア「俺は、俺は誰一人守れない。ただのミュート者。殺された母さんになんて報告すればいいんだ」
リデアは抑える気持ちが溢れてきて泣いた。
母が殺されたあの日のように。
「……そうか辛い過去をもっとるんじゃな」
リデアが落ち着くのを見守りながら、泣き止んだ後に。
机の引き出しから黒い実を取り出した。梅の実くらいのサイズの黒い実。
「おぬしに話がある」
リデア「なんなんだこれは。しかも食われている」
「ふぇふぇふぇ、2000年代に流行ったスティーブ・ジョブズのアップル社のロゴみたいじゃろ」
「???」
「わからんか、まあいい。それは昔若い時試しにわしが食べた。
そしたら三日三晩動けないくらいになって、あとほらこれ。目が腐敗してしまったんだ」
リデアはさっきまで泣いていたのに、
それを見てあまりの禍々しいその腐敗した目に恐怖を感じ吐きそうにもなった。
やっとの思いで口が開いた。
「これはなんなんだ?」
「しかもさっきまでなかったじゃないか!?」
それはわしの共鳴の力でな
まぁまずいい実の話に戻ろう
そういうと腐敗した目は元の校長の顔に戻っていた
「それは伝記に書かれてる伝説の実とされている。
いまだに調べているがなんの実かはまだわかっていない。
その実は適応するものしか食べてはいけない。
この学園ができた時から私が大切に守ってきた。
そしてこの実を食べれば神がおまえさんに力を称えてくれるだろう」
「なぜそう言える?」
「まあ警戒せんでいい。」
「実はわしも元はミュートじゃ。当時は世界中を旅した冒険家じゃった。
その旅で見つけたある民族の伝記の実を食べたんじゃ。」
その時は異端者とした民族の生贄にさせるところだった。」
民族が神の捧げ物として祀ってたその実を食べて、
わしはレゾナントになったんじゃよ。
その時に食べた実が博識の実、大体のことは全てわかるようになっていた。
民族の言葉もわかるようになって、無事話したらわかってもらえて解放してもらえた。
そしてしばらく旅を続けてこの実を見つけた。」
長々と続けたあと間おいて
再び話し始めた
「だがわしにもわからないこともあった。それはこの実をもう一度食べるとどうなるか、、、」
「結果は見ての通りじゃ。納得いったか?」
「どうする?この話を信じて食べてみるか?それともミュートとしてそのまま生きていくのか。この実はおぬしに預ける。あとは好きにしろぃ。いずれ必要になる時が来る」
リデアは実を受け取り見つめたあと
内ポケットにしまって校長室を出た。
校長は心の中で
15歳の若者にはちと難しい決断じゃな。
と思った。
リデアは考えていた。木の実を食べるか食べないか。
夕暮れ。孤児院。戻ってきた、
見慣れた場所。 孤児院では先にみんなで夕食を食べていた。
バウメアも先にいた。
「ただいま」
みんながリデアの方を見た瞬間。
爆音。地面が揺れる。悲鳴。建物が崩れる。
モンスターが孤児院を襲ってきた。
巨大なモンスター。
リデア「……っ!」
先生が叫ぶ。「みんな逃げなさい!ここは私が!」
孤児院の子供達は逃げる。
最年長のバウメアとリデアは残っていた。
リデアが先生を助けに行こうとする。
巨大な顎が迫り、モンスターは先生を弾いた。
その後リデアも弾かれる。
フラッシュバック
あの時と同じだ。 母。叫び。血。噛みつく影。
母「逃げて……!」 幼いリデア。動けない。
現実。 バウメア「リデア……!」
時間が止まる。
モンスターはバウメアのことを掴んでいた。
「また……」 拳が震える。
「また奪うのか。俺から大切なものを、、、」
ポケットから実が転げ落ちる。思い出す校長の言葉。
「いずれ必要になる時が来る」
その瞬間理性よりも先に
本能がその黒い実を口にしていた
リデアが噛み砕く。静寂。次の瞬間。爆発。
空気が裂ける。骨が軋む。腕が黒く変わる。
皮膚が割れる。鱗。目が変わる。咆哮。
人間の姿に似てる竜。
それは黒い竜に似た何かだった。
モンスターが震える。
黒竜が踏み込む。その瞬間モンスターは逃げ出した。
沈黙。
バウメアは震えている。
竜の姿のリデアはバウメアに近づく。
だが逃げない。
バウメアは竜の瞳を見る。
「……リデア」
優しく触れる。竜の目が揺れる。
その瞬間、**元の姿に戻った**。
夜。壊れた孤児院。 リデアが膝をつく。
呼吸。荒い。 バウメアが隣に座る。沈黙。
「怖くなかった?」
バウメアは優しく話しかけてきた。
「俺、モンスターになった、、、」
「違う」 バウメアは少し笑う。
そうして間をおいた後
「助けてくれた」
そう言って微笑んでくれた。
風。静かな夜。
駆けつけた衛兵によって、その場は片付けられた。
負傷者2名、死亡者は0名。全員無事だった。
そのニュースは多くの人に広がった。
その後ニュースを聞いて一旦学園は閉鎖となり議会が行われた。
教師たち。
「寮制度を導入する」 「生徒保護のために」 「異論はないな」
議会はこれで終わる。
新たな生活が始まる。




