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『スナッチ・オブ・ザ・ダーク 〜強奪スキルで異世界を支配する〜』  作者: みちお


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ロドリス領〜王都①

いざ、洗礼の儀へ向けて出発です!

ぜひ読んでいただけると嬉しいです。


ロドリス侯爵家の屋敷前は、かつてない活気に包まれていた。王都での「洗礼の儀」へ向かうアレンの門出を祝うためだ。


「セバス、少しの間、領地のことは任せたよ」

父バルトの言葉に、老執事は深く頭を下げる。


「御意に。バルト様、アレン様、道中お気をつけて」

「ありがとう、セバス!行ってくるよ」


アレンは馬車のステップに足をかけ、名残惜しそうに振り返った。

「お母様、リィナ、セバス、みんな行ってきます!!」


「お兄様......お土産を忘れないでくださいね!」


 母エレーナの隣で、六歳になった妹のリィナが寂しそうに、けれどもしっかりとした口調で見送る。アレンは「リィナらしいね、わかったよ!」と満面の笑みで応え、豪華な馬車へと乗り込んだ。


馬車の前後を固めるのは、騎士団長ガイアス率いる精鋭たちだ。


「出発だ。アレン様の晴れ舞台を汚さぬよう、気を引き締めて行け!」


 ガイアスの号令と共に、馬車が動き出す。領都アズールの街並みには領民たちが溢れかえり、窓から顔を出して手を振るアレンに、温かい声が次々と飛んだ。


「いよいよですね坊ちゃん! どんなスキルを授かっても、アレン様はアレン様だよ!」

「行ってきまーす!!」


その様子を車内で見守っていた世話係のミラが、楽しげに目を細めた。


「相変わらずアレン様は領民から大人気ですね。これでお転婆が少し収まれば、完璧な次期領主様なんですけど」


「ミラ、お転婆なんて人聞きが悪いよ!」

そんな明るい雰囲気で旅は始まった。


王都までは一週間から十日ほどの行程だ。

最初の中継地として訪れたのは、父バルトの親友であるライオネル・フォン・カシム男爵が治めるカシム領。領主館の前では、男爵と妻のソフィア夫人が総出で一行を迎え入れてくれた。


「ようこそいらっしゃいました、ロドリス侯爵! 皆さんお疲れでしょう、さあ中へ!」


「お久しぶりでございますわ、ロドリス侯爵」


「今日はすまないね、ライオネル、ソフィア。アレン、ご挨拶しなさい」


バルトの促しに、アレンは一歩前に出ると、流れるような動作で右手を胸に当て、完璧な貴族の礼を披露した。


「初めまして、カシム男爵。アレン・フォン・ロドリスです。本日は大勢で訪問したにも関わらず、快く迎え入れていただきありがとうございます」


その場にいた全員が目を見開いた。バルトさえも絶句している。セバスとの厳しい特訓の成果が、見事に発揮された瞬間だった。


「ロドリス領は安泰ですな、侯爵! アレン君、実は君が生まれた時にお祝いに駆けつけたのを覚えているかな?」


アレンがバルトの顔をチラリと見た。


「そうだそうだ! すっかり忘れていたよ。アレンは勉強も訓練も真面目でね、みんなの期待の星なんだ。昔の僕とは大違いさ!」


「お父様、流石に恥ずかしいです……」


そんな親子のやり取りを、男爵の傍らにいた一人の少女が微笑みながら見つめていた。


「アレン君、これは娘のアリスだ。挨拶しなさい」


「ロドリス侯爵、お久しぶりです。アレン様、初めまして。アリス・フォン・カシムと申します」


アリスはアレンより一つ上の九歳。少し背が高く、落ち着いた雰囲気を持つ可憐な少女だ。


「アレン、アリスちゃんは君の一つ上の九歳でね、去年洗礼の儀を受けたんだよ。アドバイスをもらったらどうだい?」


バルトの提案に、アリスは「私でよろしければ」と可憐に微笑んだ。その笑顔に、アレンは思わずポッと見惚れてしまう。


「ガイアス殿、騎士団の方々には、いつも通り当家の騎士団宿舎に部屋を用意してある。そちらを使ってくれ」


男爵の言葉に、ガイアスが拳を胸に当てて応える。

「寛大なお計らい、感謝いたします。皆、カシム騎士団の迷惑にならぬよう、迅速に移動を開始せよ」


ロドリス騎士団の面々は、バルトの護衛として度々訪れている為、スムーズに案内された宿舎まで移動して行く。カシム領の騎士たちと合流し、互いの交流を深めながら休息を取ることとなった。


その夜の食事の席は和やかなものとなった。バルトとライオネルは、貴族の子供や特殊なスキルを授かった平民の子供が13〜15歳の3年間通う「グランゼリア王国学園」で共に切磋琢磨した仲だ。


「ライオネル、そろそろ堅苦しいのは終わりにしないか?」


「いやいや、みんなが見ている前では流石に無理ですよ……はぁ、わかったよバルト。私も正直、こっちの方が話しやすいしね」


親友同士の砕けた会話に、アレンやミラは驚きつつも食卓を囲んだ。だが、話が南部の治安に及ぶと、男爵の表情が少し陰った。


「それよりバルト、耳に入っているかもしれないが、街道沿いに盗賊が出ているらしい」


「ああ、報告は聞いている。治安のいい南部では珍しいな」


「尻尾が掴めないらしいんだ。しかも、君たちが王都へ向かうこのタイミングで……」


「きな臭いが、ガイアスたちや僕がいる。少々の荒事は心配ないよ」


アレンは食後、案内された部屋でミラが淹れてくれたお茶を飲んでいると、扉がノックされた。


「アレン様、お時間よろしいでしょうか」


「もちろん!ちょうど退屈していたところでした」


アレンは喜んで彼女を招き入れた。アリスは洗礼の儀当日の流れを丁寧に教えてくれた。


「なるほど、ありがとうございますアリスさん! 何も分からず恥をかかずに済みそうです」


「ふふっ、それは良かったです。アレン様……私のスキルは**『心眼』**というものです。まだレベルが低いので人となりが見える程度ですが、アレン様がとても心の優しい方だということは分かりますわ」

アリスの瞳には、アレンの身体を包む淡く青い光が見えていた。純真で、濁りのない魂のオーラだ。

「アリスさん! いいんですか? 大事なスキルを僕に話しても」

「アレン様になら。……それと、私のことは『アリス』と呼んでください。お父様たちのような関係になれたら嬉しいですわ、アレン君」

上目遣いで見つめられ、アレンはドギマギしながら承諾した。

「わかったよ、アリス。これからよろしくね!」

「ありがとう、アレン君」

アリスの笑顔に、アレンの顔は林檎のように赤くなった。

アレンに初めてできた、大切な友達だった。

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