洗礼の儀②
投稿遅くなりました(汗)
ぜひ読んで頂けると嬉しいです。
アレンが前室に戻るタイミングで、最後に呼ばれた王女シシルが洗礼の儀へ向かう所だった。
彼女はアレンの表情が、先ほどまでとは別人のように暗く、鋭くなっていることに気づき、息を呑む。
「……アレン様。とても騒がしい様子でしたが、大丈夫ですか? もしかして、その、お顔が優れないのは望まない結果だったのでは……」
彼女の心配はもっともだった。今の彼は、記憶が戻ったことで「壬生祐介」の冷徹な顔付きが漏れ出していたのだ。
「えっ、いや、そんなことはありません!素晴らしいスキルを授かる事が出来ました!」
(ちっ、面倒だがアレンとしてのイメージを崩す訳にもいかないからな.....これからは気をつけるか)
いつも通りの笑顔で答えるアレンにシシルはどこか背筋が凍る様な違和感を感じていた。謁見の時に会ったあのアレンとは別人な気がしていた。
「そ、そうですか、では私も行ってまいります」
そう言って別れた2人。アレンは前室へと戻るのだった。
アレンが戻ると、前室の空気が険悪なムードで染まっていた。
中心にいたのは、取り巻きを従えてふんぞり返るエリック・フォン・グロスタだ。
「おいおい、黙り込んでどうした? 南部の田舎者には、この『二つ持ち』であるグロスタ様の優秀さが衝撃すぎたか?はっはっはっはっ!」
エリックは自身がスキルを二つ授かったと高笑いする。その視線の先では、カイルが今にも殴りかかりそうなほど顔を真っ赤にし、ゼノンとミーナがそれを必死に抑えていた。
「これからは、東部と南部の差は広がる一方だ。足元にも及ばないどころか、我々の背中を拝むことすら許されなくなるだろうよ。……どうせお前たちの授かったものなど、農耕だの採掘だの、平民に毛が生えた程度の大したことないスキルなんだろうな!」
「なんだと……っ! 僕たちのスキルがそんなわけ――」
カイルが言い返そうとしたその時、背後から落ち着いた、だがどこか底の知れない声が響いた。
「皆さん、どうしたんですか?」
一同が振り向くと、そこには洗礼を終えたアレンが立っていた。カイルたちが駆け寄り、エリックが二つのスキルを盾に南部を侮辱しているのだと説明する。アレンは全てを聞き終えると、エリックに向かってにっこりと微笑みを向けた。
「……なるほど。二つのスキルを同時に授かるなんて、エリック君は本当にすごいですね」
「ふん、当然だ。お前のような貧相な男とは元より器が違うのだよ! どうせお前も、他人には言えないようなゴミスキルだったんだろ?」
勝ち誇るエリックに対し、アレンは小首を傾げ、困ったような、だがどこか相手を憐れむような「極上の笑顔」で答えた。
「ああ、そうですね。詳しくは言えませんが……僕が授かったスキルの数は『三つ』でした」
「……は?」
エリックの動きが止まる。
「神官様も仰っていました。かなり希少な、滅多にお目にかかれないスキルらしいですよ。いやぁ、二つも授かったエリック君には、僕の苦労なんて分からないでしょうね。三つもあると、管理が大変そうで今から不安なんです」
「み、三つ……!? 希少スキルだと……っ!?」
エリックは絶句し、顔を引き攣らせて狼狽え始めた。先ほどまでの尊大な態度はどこへやら、あまりの格の違いに言葉も出てこない。
「ア、アレン……本当かよ! すげぇな!」
「さすがアレン君だね。良かった……」
「アレン様....素敵.....」
南部の三人は驚きつつも、自分たちのことのようにアレンを讃えてくれた。その温かな輪から逃げるように、エリックは「ちっ、どうせ見掛け倒しに決まっている!」と、負け惜しみの捨て台詞を吐いてその場を去っていった。




