王都②
こんばんは!
皆さんGWは満喫されたでしょうか?
私は何とも言えないGWでした・・
また今日から頑張って投稿していきます!、
ぜひ読んで頂けると嬉しいです!
翌日、王都の青空に突き刺さるような白亜の巨塔、王城「グランゼリア城」の謁見前室。
アレンは、これ以上ないほどに背筋を伸ばし、ガチガチに緊張していた。
「アレン、そんなに肩を怒らせなくても大丈夫だよ。失敗したって陛下は首を刎ねたりしないよ」
「お、お父様……笑わないでください。セバスから教わった作法を、頭の中で何度も繰り返しているんです。もし足がもつれたら……」
「ははは! あのセバスの特訓を耐え抜いたアレンなら大丈夫だ。いつもの通りにしていなさい」
バルトの快活な笑い声に少しだけ解された頃、「準備が整いました」と文官が告げた。左右に控える門番が、重厚な装飾が施された巨大な扉をゆっくりと押し開く。
目の前に広がったのは、目が眩むほどの壮麗な空間だった。高い天井には歴代の王を描いたフレスコ画が広がり、左右に並ぶ巨大な柱には金箔の装飾が施されている。窓からは色とりどりのステンドグラスを透過した光が差し込み、真紅の絨毯を美しく彩っていた。
アレンはバルトの一歩後ろを、心臓の鼓動を抑えながら確かな足取りで進んだ。
広間の一番奥、数段高い壇上に置かれた王座には、若々しくも威厳に満ちた男が座っている。その傍らには、一人の可憐な少女が立っていた。周囲には鋭い視線を放つ近衛騎士たちと、知性を湛えた初老の男性が控えている。
中央付近まで進んだ時、バルトが足を止め、滑らかな動作で片膝を突いた。アレンも一拍遅れず、練習通りに深く頭を下げて跪く。
「面を上げなさい。楽にしてくれ、バルト」
響いたのは、意外にも柔らかい声だった。立ち上がったアレンが視線を上げると、そこにはバルトと同年代の、優しそうな微笑みを浮かべた国王エドワードがいた。
「陛下、本日はお時間をいただき感謝いたします。此度は息子の洗礼の儀に際し、ご挨拶に伺いました」
「堅苦しい挨拶は抜きにしよう。君とは学園時代からの仲ではないか。……して、そちらが噂の?」
「はい。我が嫡男、アレン・フォン・ロドリスです」
紹介を受け、アレンは一歩前に出ると、右手を胸に当てて完璧な角度で頭を下げた。
「初めまして、エドワード国王陛下。アレン・フォン・ロドリスにございます。本日はお目通りを叶えていただき、身に余る光栄に存じます」
その淀みのない挨拶と気品ある立ち振る舞いに、国王の隣にいた初老の男性――王国宰相フランツ・フォン・ベルシュタイン侯爵が感心したように頷いた。
「これは、噂に違わぬ神童ですな。ロドリス侯爵、教育が行き届いている」
「ありがとうございます、ベルシュタイン侯爵」
すると、エドワード陛下が傍らの少女を促した。
「アレン君、こちらは娘のシシルだ。君と同じ八歳でね。明日は共に洗礼を受けることになる」
王女シシルは、春の陽だまりを凝縮したような金色の髪と、吸い込まれそうなほど純粋な瞳をしていた。彼女は一歩踏み出すと、ドレスの裾を摘んで淑女の礼を捧げた。
「初めまして、アレン様。シシル・フォン・グランゼリアです。お会いできるのを楽しみにしておりましたわ」
アレンとシシルの視線が重なった。
何千人もの人々が行き交う王都で、同い年の、けれど特別な世界に住む二人の間に、目に見えない絆のようなものが走る。
アレンは顔が熱くなるのを感じながらも、誠実に答えた。
「はい、シシル様。僕も、とても嬉しいです」
その後、大人たちが政治や近況について短く言葉を交わす間も、アレンは時折振られる問いにハキハキと答え、シシルはその様子を頬を赤らめて見守っていた。
「さて、名残惜しいが時間が来たようだ。続きは洗礼の儀の後の晩餐会で話すとしよう。アレン君、明日は期待しているよ」
「はっ。ありがとうございます、陛下!」
城を退出した後、アレンは深い溜息とともに脱力した。
緊張のあまり、城の廊下の景色や宰相との会話はすでに記憶から薄れかけていたが――。
ただ一つ、自分を見つめていたシシルの真っ直ぐな瞳と、その微笑みだけは、アレンの心に鮮烈に焼き付いていた。




