王都③
洗礼の儀前夜。
純粋なアレンとして最後の夜。
ぜひ読んで頂けると嬉しいです。
王城からの帰宅後、ロドリス邸の美しく整えられた庭園で南部の洗礼の儀を受ける子供たちや、主要な貴族が集まり晩餐会が行われていた。
この世界において、スキルを持たない八歳未満の子供を領外へ出すことは、魔物や病、不測の事態からのリスクを考慮して避けるべきとされている。そのため、ここに集まった子供たちにとって、同世代の、しかも同じ南部の仲間と顔を合わせるのはこれが初めての機会であった。
「アレン、今日集まったのは、将来お前と共に南部を支える仲間たちだ。紹介しよう」
バルトに促され、三人の子供たちが緊張した面持ちで前に出た。
「リーベルト伯爵家が嫡男、カイルです! アレン様、お会いできて光栄です!」
一人は、燃えるような赤い髪をした少年。正義感の強そうな瞳で、アレンの手を力強く握った。
「ブリス子爵家のゼノンだよ。よろしくね、アレン君」
もう一人は、少し小柄で、好奇心旺盛そうな少年。
「ランドール男爵家のミーナと申します。よろしくお願いいたします、アレン様……」
最後の一人は、凛とした佇まいの少女。アレンと目が合うと、少しだけ頬を赤らめて会釈した。
「みんな、よろしくお願いします! 同い年の友達ができるなんて、本当に嬉しいです!」
アレンの屈託のない笑顔に、三人の緊張も一気に解けた。食事を楽しみながら、彼らはすぐに、何年も前からの親友であるかのように打ち解けていった。
「……それでね、さっきお父様から聞いたんだけど」
情報通のゼノンが、声を潜めて切り出した。
「今回の洗礼の儀に参加する子供の数。僕たち南部は4人だけど、他の地域は......」
アレンは耳を傾けた。初めて聞く、他派閥の規模だ。
「東部は3人、西部は4人。ここまではいいんだけど……北部は5人。そして王都を含む中央は、なんと8人もいるらしいよ」
「8人!? そんなに多いのか」
カイルが驚いて声を上げた。中央の貴族たちは、その数の多さを背景に学園でも大きな勢力を持つことで知られている。
「中央や北部の連中は、自分たちの派閥が一番だと鼻にかけてくるって聞いた。学園に行っても、数の力で威張り散らすんじゃないかな……」
不安げなミーナの言葉に、アレンは力強く首を振った。
「大丈夫だよ。数は向こうが多いかもしれないけど、僕たち南部はみんな家族みたいに仲が良い。一つに固まれば、どこよりも強いはずだよ!」
その言葉に、バルトも満足げにグラスを掲げた。
「その通りだ、アレン。数に頼る必要はない。我ら南部は、一つに固まれば鉄壁だ。お前たちがこうして笑い合っている姿を見て、私は確信したよ。南部の未来は明るいとね」
バルトは子供たち一人ひとりの顔を頼もしそうに見つめた。
「明日はついに洗礼の儀だ。どんなスキルを授かろうとも、お前たちが我が南部の誇りであることに変わりはない。……さあ、明日に備えて今日は英気を養おう。皆、頑張るんだぞ!」
「「「はい!!」」」
子供たちの元気な声が、王都の夜に響き渡る。
アレンは、窓の外に見える大聖堂の尖塔を見つめながら、自らの未来を夢見ていた。
――みんなと一緒に、立派な大人になって、この国を支えるんだ。
希望、友情、忠誠。
八歳の少年が抱きうる全ての美しい感情が、この夜のロドリス邸には溢れていた。
次回はとうとう洗礼の儀!!
洗礼の儀以降の展開が難しい・・




