ロドリス領〜王都③
皆さんこんばんは!
今回は、のちのち面倒になりそうな登場人物のお話です。
なかなか洗礼の儀まで行かず、まだかよ!と言われそうですが、もうそろそろです(汗)
少々お待ちください!
ぜひ読んでいただけると嬉しいです。
貴族専用門へと馬車が進む中、前方に人だかりと不穏な怒鳴り声が見えてきた。
豪奢な馬車が門の直前で止まっており、一人の男が門番を指さして激昂している。
「私を誰だと思っているんだ! ヴェール・フォン・グロスタ伯爵であるぞ! この私を信用できないと言うのか!」
「申し訳ございません、グロスタ伯爵。王都への登録のない魔道具の持ち込みに関しましては、こちらの書類に詳細をご記入頂き、預かったのち『魔法・魔道具研究所』の方で確認させて頂くのが王国の法となっております。確認が取れましたら、お屋敷までお届けさせて頂きますので、何卒ご理解を.....」
門番が困り果てていると、伯爵の傍らに立っていた少年が、冷ややかな視線で門番を睨みつけながら口を開いた。
「お父様、この男、伯爵家である我が家にたてついたのです。無礼者として懲らしめてやりましょうよ」
その光景を馬車の窓から見ていたバルトは、深くため息をつくと「少し外へ出る」とアレンに告げた。ロドリス家の馬車もまた、検問を受けるために停止しなければならないからだ。
「……グロスタ伯爵、門番を困らせるのはそのあたりにしておいてはどうかな」
バルトが馬車から降り、静かに、しかし重みのある声で声をかけた。
「うるさっ......なっ……!?」
怒り狂っていたグロスタ伯爵が振り返る。そこには、爵位も領地の規模も自分より格上の「南部の守護」、バルト・フォン・ロドリス侯爵が立っていた。
「ロ、ロドリス侯爵……! これは失礼、つまらぬ揉め事をお見せしてしまいましたな。いや、この門番があまりに融通が利かないもので……」
先ほどまでの尊大な態度はどこへやら、伯爵は顔を引きつらせて揉み手をし始めた。
「王都の治安を維持するための法だ。我ら貴族が範を示さねばなるまい。門番の言う通りにするべきだよ」
「えぇ、それはもうすぐにっ」
伯爵はバルトの放つ威圧感に気圧され、気まずさを隠すように手続きを済ませた。そして、バルトの背後にいたアレンに目を留めた。
「おや、そちらに居られるのはご子息ですかな?……侯爵に似て、実に見事な佇まいだ!」
「ああ、そうなんだよ伯爵!アレンおいで」
アレンは伯爵の先程までの態度の変わり様と、この雰囲気の中でも親バカっぷりを見せる父に若干呆れながらも完璧な貴族の礼で挨拶をこなす。
「初めましてアレン・フォン・ロドリスでございます、グロスタ伯爵。」
「ほほう、その歳で完璧な礼が出来るとは、さすがロドリス侯爵のご子息であられる!恥ずかしながら、これは私の愚息のエリックでごさいます。ご挨拶しなさい!」
「はっはじめまして、ロドリス侯爵!エッエッエリック・フォン・グロスタです!」
エリックは、突然挨拶をする様に振られた驚きと、上位貴族であるバルトを前に緊張し、挨拶も礼もぎこちなくなってしまい、顔を真っ赤にしていた。
「なんと情けない.....。ご子息の爪の垢でも煎じて飲ましてもらわねば。まぁよい。ロドリス侯爵、私どもはこれにて失礼させて頂きます」
嵐の様に去って行くグロスタ伯爵の後ろで、エリックはアレンを睨みつけ馬車に乗り込んだ。
不安そうにバルトを見上げるアレン。バルトはアレンの肩に手を置き、検問の書類を門番に渡しながら、静かに首を振った。
「気にする必要はない。グロスタ家は歴史こそ古いが、現当主になってからは芳しくない噂ばかりだ。父が父なら、子も子か……。アレン、ああいう大人になってはいけないよ」
ロドリス家の馬車も滞りなく検問を終え、門の向こう側へと進む。
アレンは窓から遠ざかるグロスタ伯爵の馬車を見つめながら、初めて感じた「貴族の負の側面」に、少しだけ胸がざわつくのを抑えられなかった。
(グロスタ家馬車内)
「父上、あの魔道具は良かったのですか?」
「良いわけなかろう! せっかく手に入れた『魅了の指輪』を……ッ! クソッ、あいつらさえ来なければ、適当に言いくるめて通れたものを!あれさえあれば、あんな事やこんな事もできたのだぞ!」
「しかし、父上、大丈夫なのですか?研究所で調査され魅了の効果がある魔道具だと分かれば何か処罰を受けるのでは?」
「ふんっ、書類には『たまたま流れの商人から購入した品』で何の効果があるか分からない、と記入しておいたわ。何か言われても、研究所で調べてもらう予定だと言えば問題なかろう」
「さすがは父上ですね!それにしても、あのアレンとかいうヤツ、鼻に付くヤツでした。」
「エリック、洗礼の儀でヤツより優れたスキルを授かれば、この先ずっとお前はヤツより上だ!期待しているぞ!」
「はいっ父上!必ず!」
次回からは王都編に突入です!




