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まことのことばはここになく 修羅のなみだはつちにふる
宮沢賢治『春と修羅(mental sketch modified)』
「エイリ」
呼び止められて、私は眉を顰めながら振り返る。
嫌な呼び名だった。
その名前で呼ばれた後には決まって厄介な出来事が降りかかる。
「テストの答案見せなさい」
秋谷と飯田、いつも積極的に嫌がらせをしてくる二人のクラスメイトだった。
どうしようか一瞬悩んだけど、結局大人しく前の授業で返された答案を渡した。
彼女たちはそれに目を通すと私の机を思いっきり蹴り上げた。
「あんたがクラスの平均点下げてるって分からないの」
「こんな点数でよく恥ずかしいと感じないのかな」
二人が口々に罵倒を言い合う。
他の教科では平均点を上回っていたし、そこまで悲惨な点数というわけではない。
しかし、彼女たちの嫌がらせをするのに理由なんて必要ないことは分かっている。
この学校では皆が疲れているし、クラスメイトはいずれ受験で互いに蹴落とし合うライバルでしかない。
この学校で中途入学者であり、なおかつ特殊な身の上であった私が過酷な勉強のストレスの捌け口になるのは必定だった。
「謝りなさいよ」
無視しようと思ったが、彼女たちの瞳を一瞥して考え直した。
その奥では嗜虐心が爛々と燃えていて、今はその意に従った方が得策だと思った。
ぎこちなく「すみませんでした」と途切れがちに答えると、彼女たちは鼻を鳴らして消えていった。
「宇宙人が」去り際、秋谷の陰口が聞こえてきた。




