EP89 Ai-myu96の真価(sinka)
______一方、洞窟で安全に朝を迎えた私達は、軽く朝食を食べ終わると、アデリアが当然の疑問を口にするのだった。
「糞ウサギ(バニラ・アイス)......おまえ.....何故食わない? ナイト・メア亭でも、かぶら以外レイジーの娘達は飯を食っていなかったが?」
ギクゥ
私は、いづれ話す事だと腹を括っていたのだが、そのタイミングが今来ただけだ。
『相手はアデリア一人。まずアデリアから真実を知って貰うのがいいだろう』
「その......アデリア、これから私が話す事を信じてくれるか?」
ドキィ
『レイジー、ここで ぷ、ぷろぽーずをするのか! 糞ウサギの前だぞ、こういうのはだな、二人っきりの時にだな、ムードを盛り上げてから......一応段取りというものが。まぁ、考えて見ればアタシの娘になるんだ、それならいいか』
「レ、レイジー、やっと言う気になった訳だな。はぁはぁ アタシはずっと前から、き、貴様の態度で知っていたんだ」
「えっ? アデリア、既に気づいていたとは、男として私もまだまだか。正直、いつ言おうかと機会を探っていたんだ」
ドキィ
『やはりこれは、プロポーズで確定だ!!』
「当たり前だろう。何があろうと貴様を信じて来た。それも初めて会ったあの時からだ。ふ、ふん、お前の言いたい事など、既にお見通しのアタシだぞ」
バクん
バクん
「私は心配しすぎていたんだな」
『早く言え。心臓が破裂しそうだレイジー、お前の熱い愛の言葉をだな、でないと気絶しそうだ。気絶したらお姫様だっこをして、目覚めの甘いキ、キッスを』
「そうか、そうだったのか......」
=糞エルフの心拍数が危険レベルに達しますた=
=それは拙いなバニラ=
「アデリア!」
はひぃ(きたぁ!)
「私の言いたい事を知っていたのなら、私をどこまでも信じてくれると言うアデリアに、改めて言う必要は無かったんだな。御免よ、アデリアのその気持ちは素直に貰っておこうか」
はひ?(言わんのかい!)
=今度は心拍数と血圧が急降下、危険レベルだよ=
=この状況、どうすりゃいいんだよ!=
=ショック療法が有効だよ=
ガゴォ~ン
「な、なにをする! この糞ウサギぃ」
=正常値に戻りますた=
アデリアは今のショックで訊きたい事を忘れ、出来たコブを摩っていた。
「なんだこの娘は! さて飯も食べたし、そろそろ出発するとしよう。ここから王都までは、早ければ夕方までには到着出来る。そこでアタシの馴染みの宿をとろう。あたしの庭みたいなもんだ、そこは安心してくれ」
私はアデリアに感心していた。
こっちの言いたい事を知っていて、今迄黙っていてくれたのだ。バニラにド突かれても、穏便に済まそうとして王都を目指し、宿の手配まですると言ってくれたのだ。
「アデリア」
なんだ?
「有難う」
ふふ、アタシとレイジーの間で何を今更?
『口には出さなかったが、お互いの愛を確かめ合ったのだ。本当に不器用な奴だった。レイジー......アタシの夫......これは照れるな』
ポッ
「さぁ行こうかアデリア、バニラ」
「あぁ、今日がアタシ達の門出になる。レイジー」
=父ちゃん 糞エルフは状態異常だよ=
=そりゃ、私達の正体を確信したんだ。きっとその反動だろう。しかし私は......ほっとしているんだよバニラ=
お揃いの白衣の防寒コートを着て、愛しいレイジーと手を繋ぐ。
アデリアにとって、待ち望んだ最高の門出となったのだ。
『アデリア、そうか、バニラがアンドロイドだと知っていて、これからスキンシップを強化して......いつも私に罵声を浴びせていたが、本当はいい奴だったんだ』
アデリアは興奮していたのか、私ではなくバニラ・アイスの手を握っていた。
______それからと言うもの、アデリアのツンデレは影を潜めた。初々しい新婚さんのような態度で、レイジーと他愛もない話をし、時には笑いながら王都を目指していた。
「ところでレイジー、指輪をくれないか?」
『......あぁ忘れていた新婚夫婦だったな』
「どこかで買えばいいよ」
そ、そうだな
アデリアは左手薬指を見ながら蕩けそうな瞳をし、吐く息がダイアモンド・ダストのように白く散って奇麗だった。
「バニラちゃんもやってみたら? 白い息が奇麗よ」
アデリアにとって、バニラはもう自分の娘の一人なのだ。
遠慮します。
「照れちゃって、もう可愛いいんだから」
凄い変わりようである。
◇Ai-myu96◇
______私とアデリアの後ろを歩くバニラ・アイスは、次第に心の奥から沸いて来る何かを分析していた。
私はレイジー博士の手で完成した。その頃の私と言えば、レイジー博士とアンドロイドの立場で、ご主人様と呼んで仕えてきた。
それがいつしか、父ちゃんと呼ぶようになったのはどうして?
その事はレイジー博士も感じていて、「お前、変わったよな」なんて言われていたのだ。
ジャーブラ島に来たジョーに、タライを落とす嫌がらせ。はたまた下剤入りのコーヒーなど、何か自分でも変だと思ってはいたのだ。
ご主人様から父ちゃんと呼ぶようになり、今はもっと違う呼び方をしたい......そんな自分に戸惑いを感じ始めていた。
そしてアデリアと手を繋ぐ姿に、なんとも分析出来ない苛立ちを覚えるのだ。そう、いつもより強く。
私を家族だとレイジー博士は言う。だから私は父だと思うようにした。
でも今は、それでは我慢が出来なくなって来ているのだった。
「私はAi-myu96、誰よりも高性能に作られている。立木陽介博士が、私を作ったのは知ってる。myu48、myu69と進化した最終形態が私なのも。目的は太陽系外を航行する宇宙船のナビアンドロイドとして設計され作られたのだけれど、なんだかそれは違うような気がしてならないの」
一人ブツブツ言いながら、バニラ・アイスは後を歩いている。
アデリアが人生の門出と思ったように、バニラ・アイスのAi-myu96は、新たな段階へと進化し始めていたのだった。
もちろん、レイジーはそれを知らない。
______アデリアにとって幸せな時間は、やがて城下街に入った途端、テンションが落ちてくる。
城下の門番が、Sランク冒険者のアデリアを知っていた事で、冒険者組合まで直々に案内する事になってしまったからだ。
「いや、君達そこまでしなくていいんだ」
「それは困ります。あなた様は王国貴族と同じなのです。素通りなどさせたら、私の首が飛んでしまいますよ」
むぅ、それなら仕方がないか。
「凄いなアデリアは。ここでは貴族様扱いなのかい」
「昔の話だ」
『むぅ、あいつ等、余計な事をしよって。新婚気分が台無しではないか』
私達は一応、王国の冒険者組合に案内され、そこで好きなだけ宿泊出来る事になった。勿論、豪華な食事と酒は只だ。
王国の実情を知るには、この状況は私達には好都合となった。
ギルマスも懐かしさから歓待してくれ、旨い飯と酒も頂戴したのは良かった。旅の疲れが吹っ飛ぶと言うものだ。
「いやいや久しぶりで嬉しいぞアデリア。ところでお隣の御仁は?」
「うむ、旦那だよ。新婚なんだ。急な話で指輪はまだだがな」
薬指には何もないが、それでもアデリアの機嫌はマックスだ。
あの男嫌いで有名なアデリアが結婚した事に、ギルマスは腰を抜かして驚いた。
「おいおい、それは大ニュースだぜ。で、もう一人いたあの子は?」
バニラ・アイスは飯を辞退して、もっか王都を探索中である。
「アタシの娘さ」
Boo~
「おい汚いぞ」
ギルマスは飲みかけていたエールを噴出した。
「おめぇ、結婚が遅かった割には、ヤル事は早かったって、それじゃぁ年齢の勘定が合わんな」
「当たり前だ。レイジーの養女だ」
養女だと言ってギルマスを納得させた後は、また王都の話に戻り、訊けば王国の治安は悪く、多くの国民が生活に困窮していると言うのだ。
「どうしてそんな事に?」
アデリアは訊かずにはいられなかったのだ。
「オランベルク国王が亡くなって、第一王子モレータゥラ が即位した。あの王子はボンクラでな、公爵ラーモン・ディ・パッドが実質、政を仕切るようになってからだよ」
「レイジー、やはり公爵ラーモン・ディ・パッドが絡んでいたな」
「あぁ、思ったより早く情報が得られそうだ。アエリアの件も含めて」
2025新春十数話で読み切り
超電磁ファイターズ 小悪魔悪役令嬢V結成譚(仮題)
元旦から連載開始。




