EP14 モテ期到来 姐さんダジョー
_______「ゲッ、すっかり忘れていたよ。あの門番達の事を」
冒険者登録証さへあれば、この場はまだマシだったのだが、今日はその登録に来ているのだから、私達はそれを持ってはいない。
門番と警備隊は、剣と槍を構えて私達を捉えるのだろう。
二人の門番がニィっと口角を吊り上げた。
「あいつ等だ!」
「チィ、賄賂を握らせるにもG無しでは......それに警備隊が三人も。強引に抜けたとしても益々WANTED、私達の賞金が跳ね上がっちまう」
アンドロイド組は、レイジー博士に対する敵意を敏感に捉える。目の前の青年を守る事が彼女達の存在意義であって、それに何故か超排他的フォーリンラブが行動原理の全てなのだ。
コッ コッ
今度はバニラアイスが、ハイヒールを鳴らして亀仙人みたく背負っていた金ダライを手にすると、ズイとレイジー博士の前に出た。
「ここは超可愛いバニラアイスちゃんに任せてよ」
「ふん、糞ウサギが出しゃばりおって。まぁいいだろう」
「ではRenoは主様をガッチリ、手を組んで守りましょう」
「いや待てバニラ、金ダライでド突くのは拙いぞ。ここは穏便にだ。お前、ちゃんと分かっているよな?」
バニラアイスだけではない。桔梗も万一に備えて<妖刀ムラムラ>の束に手を掛け、亀頭流48手抜刀術をブチかませる構えを取っている。
「お前達、暴力は絶対に駄目だからな!」
如何にご主人様の命であろうと、主が危険となれば訊く耳を持たない二体は、既にやる気満々だった。
ほあッ!
バニラアイスが、金ダライを振り上げたその刹那。
「「「姐さん!」」」
門番の後方から、ド太い三重奏がしたかと思うと、それは昨日冒険者組合で見たばかりの顔ぶれだった。
「姐さん、ここはアッシがナシを付けますんで、御心配なく」
『あれ? あいつ、冒険者組合でジョーのワンパン食らった?』
「あんた確かジャッカル?」
「おめぇには関係ねぇ」
私を無視したジャッカルが、大きく息を吸い込んだ。
「門番と警備隊に告げる。このお方は東方<ヤポン>の高貴な姫様と従者であるぞ。丁重に扱わなければ、我がデルモンド王国の国交に重大な影響が出るのだ。どうせ木っ端のお前達は知らなかったのだろうが、WANTEDの手配書まで! これが国王陛下に知れたら死罪は免れんぞ!」
「「デルモンド国王陛下!! 死罪!!」」
「この俺ジャッカル様が、お忍びの姫様御一行の案内役を仰せ使っているのだ。ええい邪魔建てするでない! 頭が高い!」
強面のジャッカルと手下二人が睨みつけると、結構破壊力がある。
ははぁ~ぁ??
______訳が分からない私達は、何故かジャッカル達三人を先頭にして、平伏する門番と警備隊の前を通り過ぎる事が出来てしまった。
門を通り過ぎた所で、やっと私は口を開いた。
「で、ジャッカルさん。何故私達を助けたんだい?」
私が訊いても、ジャッカル達の目はジョーに釘付であり、私など眼中にないみたいな態度だ。
「ケッ、従者なんぞに用はねぇんだよ。俺たちゃ姐さんに付いていくと決めたのさ」
「おうよ、あの痺れるようなパンチに俺様、ジャッカル様は惚れたんだ。姐さん、俺達をどうか舎弟にしておくんなせぇ。でなければ最初はお友達から」
とジャッカルと手下がごつい右手を差し出した。
「「「お願ぇしやす!!!」」」
ほぇ?
ほうほう、なんとなく私にも理解出来た。
『こいつ等、ジョーに惚れたのか! 荒くれ者って強い奴に惚れると言うからな......これはジョーにもやっと春が来たと喜んでやるべきか。案外お似合いだったりして』
ぷッ
いきなり姐さんと言われても、ジョーには迷惑な話なのだが、しかしピンチを繰り抜けれたのは、この荒くれ者達のお陰でもある。
「おい、かぶら。恩を仇で返すなど武士道精神にも劣るぞ。ここは友誼を結ぶのが礼儀であろうが」
私からの言葉もあってか、ジョーは仕方なさそうに右手を差し出した。
「えーと、ボクと知り合いって事で」
友達にはなりたくもない、ジョーの精一杯から出た言葉だったのだが、頭も悪いジャッカル達はこれを、舎弟OKと早合点してしまった。
「「「おおぉ! 姐さん、ありがとうごぜぇます!俺たちゃ姐さんの為なら地獄でもお供しやすぜ!!!」」」
『お断りよ! あんた達だけで行って』
ジョーの心の叫びは訊こえない。
冷静なRenoは一人ほくそ笑んだ。
『まずは邪魔な年増かぶらがリタイア。残るは糞ウサギと変態チャイナ』
当然、バニラアイスも桔梗も同じ事を考えている訳で、目と目が合った二体に獰猛な笑みが浮かんでいた。
「結果オーライ。皆、冒険者組合で登録と換金しよう」
モチ(ニヤリ)
御意
畏まりまり(ククッ)
「ボクはこの状況を、全く納得してないのよさ!(プンスコ)」
この時からジョーの横には、ベッタリとジャッカル達が陣取っている。
「さぁ姐さん、行きやしょう」
「もうやだぁ~ レイジー博士ぇ~」
「ふッ、ジョーのモテ期到来だな」
この唐変木ぅ~
☆☆
_______大きな棍棒はジャッカル達が持ち、私はBossゴブの耳を持っている。
流石にBossゴブの棍棒は目につく。Dランクのモンスターを軟弱そうな白衣が倒したとなると、周りの見る目も違っていた。
「.......何でジャッカル達が居るんだよ」
強い者ほど一目置かれる世界なのだが、ジャッカル達までが一緒では、益々好奇な目で見られてしまった。
やがて冒険者組合の扉を抜けると......。
WANTEDの手配書は早朝が幸いしてか、まだ届いてはいなかった。
「あの白衣連中、冒険者登録に来たのなら最低のFランクだろ。Bossゴブだって、昨日の年増が倒したんじゃないのか?」
「違いねぇ。俺もそうじゃないかと思ったところさ兄弟。俺は朝から飲むぜ」
「いつもの事じゃ......ところで兄貴、金は?」
ガハハハッ、それはおめぇに任せてあるじゃねぇか」
「冗談じゃねぇ、また持ってねぇの?」
______「ゲゲ、ジャッカルがまた来たぞ。また荒れるのか?」
外野の心配よりも、昨日と同じ強い視線が私に突き刺さって来た。
ルチア・アルデールだ。
そのルチアの表情には笑顔が無く、ただバニラと桔梗、Reno
をじっと見つめているのだ。私の背中に冷たい物が流れた。
『あの視線、魔道具の故障じゃ無かった。不味いバレたか?』
ルチアはジャッカル達が、私達と一緒に居る事には、全く驚きもしなかった。
『何故だ?』
......。
ルチアの沈黙は、私の心臓に鞭を打って来る。
ドキ
ドキ
しかし私の心配は危惧に終わったようだ。
ルチアはバニラと桔梗、Renoの情報を書き込んだ登録証を見せてこう言った。
「レイジー様、魔道具はちょっとした故障でしたので、冒険者Fランクの登録は完了しています。では登録料の500Gをお支払い下さい」
ルチアの態度は、昨日と打って変わって妙に事務的な対応になっていた。
すると後輩のレイが、ルチアの顔を覗きこんだ。
「ちょっと先輩、今日はどうしたんですかぁ?」
銅プレートのレイが、不思議そうに声を掛けた。
「ほら仕事、仕事、お客様が並んでるでしょ」と返していた。
「失礼しました。ではこれが残りの方々の登録内容です。ご確認を」
魔道具は実は一つの事を除けば機能していて、そのせいでエラー状態だったと説明を受けた。
バニラ・アイス 遊撃
LV=0
HP=0
MP=0
武器=金ダライ 踵の高い靴?
装備=無し
コス=黒網タイツ+白衣 麦藁帽子
防御=0
桔梗 前衛
LV=0
HP=0
MP=0
武器=ヤポンの長刀
コス=紅い前掛け+白衣
防御=0
Sashihara Reno 後衛
LV=0
HP=0
MP=0
武器=0?
コス=黒メイド服+白衣
防御=0
ん?
『LV HP MPの項目が揃って0?これは何かあるな』
普通に見れば、登録内容に怪しい所がある。それでも駆け出しのFランク冒険者に登録出来たのだ。
『LVが0なのも、あの魔道具体重計ではアンドロイドの測定が不可能だったのだろう。それでもルチアは内緒にして登録をしてくれたのか?』
「ところで冒険者チーム名はどうされますか?」
これは前から考えていたので、私は即答出来るのだ。
「オホン、ドラッグ・ファイブスターズで頼むよ」
これは、私達が異世界から来た薬師と言う意味が込められていて、我ながらいいネーミングだと思うのだ。
「賜りました。では暫くお待ちください」
と言って、ルチアが足早に奥に消えていった。
暫く待つと、5人分の厚紙製Fプレートと、Bossゴブの報奨金250Gを持って現れた。ちなみに棍棒は臭いし利用する者もいない為に、廃棄焼却処分にするそうだ。
「紙?」
『棍棒は臭くてバニラが嫌がる訳だが、ジャッカル達は全然平気そうだったな』
「おめでとう御座います。これでFクラス冒険者として活躍できます。尚、今回だけは特別に例外として報奨金を出しましたが、これからの依頼はFとEのみになりなすので、その点はご注意願います」
つまりまだゴブやスライム程度のモンスターしか討伐出来ないと言う事だ。
恐らく、私を除けばBランク以上は間違いないのに、安い依頼しか受けられないとは面倒な事だ。
「なぁに姐さんなら、すぐにゴールドプレートAランクでさぁ」
「そうでやんすよ」
「楽勝、楽勝」
いつの間にかジャッカル達は、ジョーの太鼓持ちに成り下がっていた。
不思議な事に、手下の名前はメンマとチャーシューだと言う。
『あぁラーメンが食べたくなった。そうだ昇格試験って誰かが言ってたな。その辺の事も調べておこうか。生活費を稼ぐ為にもせめてDランクは目指したいと思う』
☆☆
______こちらは先行するハメリア合衆国の特命火星ロケット部隊。
隊長オルガ・スミスは四人の隊員を前に激を飛ばした。
「諸君、我々はあと一か月もすればVANISHING POINTに達する。そこで何かが分かる。各自武装の点検整備を怠るな。エージェントJoeが乗ったロケットが、既に宇宙の藻屑になっていたのなら、速やかにプランBに移行する」
「「了解であります」」
プランBとは、火星に着陸して領有権を主張しようとする身勝手な欲に他ならなかった。




