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EP11 2054年1月18日 探すのよ温泉を! 妄想混浴で何かが起きるスッポンポン♪☆   


______「「兄貴ぃい、起きてくだせぇ」」

子分二人は、巨漢のジャッカルを運び出す事が出来ず、ただオロオロするばかり。

 そのジャッカルは、白目をむいたままフロアを占拠中なのだが、それを誰もが気にする事はなく一見落着したところで、私はひとまずほっと胸をなでおろした。


 ベテラン受付嬢ルチアは日頃、慣れた光景なのだろうか。改めて私達の冒険者登録を始める前に、灰色したロングヘアーをシュシュで束ねた頭を下げてきた。


「あの、大変ご迷惑をおかけして申し訳御座いません。あのジャッカル達には皆、困っていたのです。まぁいざとなれば、私が対処しましたが......」

 ペコリ


 ルチアが頭を下げながらチラリとジョーを見た時、その瞳には不敵な笑みが含まれていた。

『なにさ、この糞エルフ。しかも一人で対処出来たっだって? ボクに喧嘩を売ってるのかな?』


______「こっちは大丈夫だよ。それであの男は?」

 私がルチアに訊くと、ジャッカルはあれでも冒険者D+ランクだそうだ。冒険者になったばかりの時は、案外真面目だったらしいのだが......。

「それは信じられないな」


 D+ランクと言われても色々あるだろう。私にはそれがどれ程の強さなのかはピンと来ない訳で、あの男は力だけのD+ランクだそうだ。


『......そいつをジョーはワンパンで沈めた_____それならジョーってD+ランク以上なのか? ならバニラと桔梗、Renoはどうなるんだろう? これは興味が沸いてきたぞ』


 ところで冒険者登録希望者は、朝からそれほど来る訳では無いらしい。多くの冒険者達は、依頼書を手に隣に並ぶ受付嬢の前に並んでいた。


皆、揃いの黒いユニフォームで、胸のプレートは金、銀、銅プレートを付け、雑役係のような新入り(ビタビタ)は、紙に手書きのうえ洗濯クリップで付けていた。


   挿絵(By みてみん)


『受付を含めて全員が、エルフや人族の美少女揃いなのだけど、職業上しっかりした上下関係があるみたいだ』


 「お待たせしました。では次の方、どうぞ......あら」

 隣のカウンターの銅プレート受付嬢が、鈴のような声を上げた。

「やぁ、レ、レイちゃん」


「あのねランド、そろそろランクアップしなきゃダメじゃないの? せめてDランクにならなきゃいい依頼が無いんだからね。それで昇格試験はいつ受けるの?」


「それは分かっているけど、無、無理を言うなよ。俺達はこれが限界なんだよ。Eじゃ悪いのかよ」

『もう......意気地なしの馬鹿なんだから』


『おっと万年Eランク? 若いし、ほほう、レイって子に気があるのか? 一応鉄の剣と革の防具か。装備は普通でも強くなれない冒険者なんだろう。まぁ加油(がんばれ)!』


 レイジー博士はバニラ達の女心には超鈍感なのに、他人の事となると妙に勘が鋭く働くとは、バニラ達にとっては理不尽そのものである。


 さて、ジャッカルみたいな奴は、日没前になればモンスター討伐の証拠を持って換金に来るだけで、その金を手にした途端、安いエール代に変わって消えていくその日暮らしである。


『いや、脅して金を巻き上げて......でないと朝から飲んだくれる金がある筈がない。異世界には警察は無いよなぁ』


 日帰りで討伐出来るモンスターなどは弱い奴が多く、出稼ぎ冒険者には一泊の宿代と酒代くらいにしかならない。

昇格出来ない奴は、次第にジャッカルみたいな冒険者くずれとなって増殖していくのだ。


 『冒険者稼業も楽では無いと言う事か。現実は厳しいな』

 江戸時代の庶民の間では、「宵越しの銭は持たない」なんて威勢のいい言葉があったけれど、ランクが低くてやる気の無い冒険者には、ピッタリと当てはまる言葉だろう。

「いい教訓になった。向上心は必要って事だ」


 反対に高ランク冒険者達は、より強いモンスターを狙う。討伐には何日もかかるけどその分見返りは大きいし、酒に溺れる者は少ないのだ。


 ところで冒険者組合に酒場が併設してあるのは、中々よく考えられていて商売上手だと感心するばかりである。

 それに給仕の女性に、エルフや人族の美少女が多いのも、冒険者にとって魅力的な存在だ。だから冒険者組合も、客寄せの為に美少女を揃えているのだ。


______「よぉテューラ、相変わらずいいケツしてるな。おっと、手が滑った」

「ちょっと何すんのさ!」

酒場ならこんな事は当たり前の光景である。



「酒と女......金と暴力。楽しみの無い世界。人間は喜びを感じてやれる事が沢山あるのに、それに気づけず相変わらず暴力が蔓延しているなんて、地球と同じで私は悲しくなる」


 私の表情に敏感なのはバニラアイスだ。だてに一年間、ジャーブラ島で共に暮らしてはいなかったのである。

「そんな顔をしないで。ご主人様には、私がいつも傍にいます」

 ギュっ


 そのバニラアイスが私を後ろからそっと抱きしめて来た。

いつもの脳天気バニラとは思えない突然の行動に、私は戸惑いながらも久しぶりに心が休まる気がして、バニラの手を取った。

「ありがとうバニラ......アイス」


『あはっ、ポイントゲットぉ! 温泉、混浴で何かが起きるスッポンポン♪』

 訂正しよう。バニラのAiは今策士モードだった。


「おい糞ウサギ、周りを見てみろ!ドン引き大セール中だ。そんなところでポイントを稼いだつもりだろうが、見え見えだったぞ。しかし私も温泉、混浴で何かが起きるスッポンポン♪」

「ゲっ、何故バレてる?」

『ふん、ボクにだって分かってたのよさ!温泉、混浴で何かが起きるスッポンポン♪』


「「「はぁ~スッポンポン♪スッポンポン♪スッポンポン♪」」」

 ......。

 『ハモッテ何やってんだ? こいつ等は』


 黙って見ていたRenoだけは、いたって冷静に見えた。しかし内蔵しているプラズマ重核子炉が臨界寸前に達していたとは、天才レイジー博士でも知らなかったのである。

 ズゴゴゴゴ



______私は掲示板にどんな依頼が貼ってあるのか、興味津々だったので、一番冷静沈着なRenoに掲示板を撮影するように頼んでみた。

 

 「一番頼れるのはRenoかなぁ」

 !

 <激オコモードを初期化します>

「はい!畏まりましたぁ♡御主人様ぁ♡」

『おっ? 返事が可愛らしいし、Renoの態度が急変したぞ?』


 Renoのプラズマ重核子炉が即座に正常運転に戻ると、Renoの指が♡マークを作った。恐らくプラズマ重核子炉が臨界寸前に達した事がトリガーとなったのだろう。作業用ではないReno本来のメイドモードが起動したのだ。

 でへへ♡


 レイジー博士の言霊は、彼女達Ai-myuにとって最大の至福であり、不可能を可能にしてしまう力があるらしい。


 そのレイジー博士自身には腕力が無いが、スキルではない唯一無比の力を持っている。しかしその力の神髄とは何か、今知る者は皆無である。



 今の一連の会話は、ルチアも訊いていた。

『ん?今の言葉......あぁ遠方<ヤポン>の言葉かな? 違和感があるけど、でもこの国の言葉も喋ってるし......字が読めないなんておかしいな』


ルチアが感じた違和感は、例えるなら一刻堂の腹話術のようなものかもしれない。

言葉より唇の動きが遅れているし、形が違う違和感を感じたからだ。


______「失礼ですが字が読めないのでしたね。ではコホン私、ルチア・アルデール17歳、彼氏なしが代筆しますので、ご心配はいりません。横にある台座の上に乗ってから、お名前と使用するメイン武器をおっしゃってください。

......では先頭の年増からどうぞ」

 ニャ、ニャニィ!


『今どさくさ紛れに、プライバシーな自己紹介までしたぞ?』

ルチアに言われて下を見れば、丸い体重計のような石板が置いてあった。


「ふむ、これに乗ると何が分かるんだろう? やはり体重か?」

科学者としての興味から出た独り言だったのだが、先頭に並んでしまったジョーが、怒りながらも何故かあたふたと慌て出した。


『いぃやぁ~、どうしよう。ボク最大のピ~ンチ!』

体重をレイジー博士に知られるくらいなら、<あぁsiraki>で誤魔化したいと必死なジョーだった。


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