第三十五話 化物の対処
「…まぁ、こう…なりますよね」
問題です。
怪物に襲われた一般人はどうなるでしょうか?
大抵の物語では無残な犠牲者として描かれているものだ。
…その正解が今の現状なんだよなぁ。
今、象よりも大きい金色の化け物に頭からガジガジと齧られている。
感覚的にはヘソの辺りまで喰われてるかな?
足が地面に触れていないみたいだから咥えて持ち上げられているのだろう。
金蜂という名の通り、虫に似た構造なのか、横に開く強靭な顎が私の柔肌を突き破らんとするが、凹みはすれど破れず。
物理無効が無かったら即死だわ。
…私はホルモンかガムですか?
痛みもないしダメージもない。
私じゃなかったら出落ち丸噛りだったね。
…いやいや不幸にも程がある!
あれだよ、スタートと同時にボスから攻撃受けて終わり、みたいな展開さ。
はは、クソゲーかな?
リアルがクソゲーってネットの誰かが言っていたのを思い出すよ。
今なら断然賛成だわ。
私は襲来日当日に外に転移で送り込まれて早速、金蜂とやらの群れに襲われてます。
というか現在進行形で丸噛りなんですけど?
なんか飛ばされる直前で首に何か巻かれたけどそれを確認する前に飛ばすとか何を考えているのか。
それと、久々のゴミ山以外の景色を堪能させて欲しかった!
パッと見、砂と岩の世界が広がってる砂漠だけどね。
…いや、だってさ!
私だって好きでやられてる訳じゃない。
出てきてすぐにムシャムシャされる雑魚モブムーブなんて私が求めてるシチュエーションでもない。
まぁ、周囲が荒廃した場所で、だなんてどんな世紀末ファンタジーですかと文句を言いたい気もする。
言い訳させてほしいのだが、送り込まれた先で周囲を見回そうと振り返ったら頭からガブリ、だ。
もうちょっと敵と離れた地点に送って欲しかったよ、鶴さん。
できれば遠くから視認できるぐらいの距離が欲しかった。
贅沢を言えば景色が良い所に飛ばして欲しかった。
…欲しい、欲しいと燻っても仕方がないか。
それと金蜂について情報も欲しかったです。
見た目とか、能力とか色々と。
情報収集しろよって話だけどさ。
言葉が分かるの、ノイマン、ディーダ、鶴さんの3人。
私自身がレベル上げの位置から離れる事が許されなかったし。
ノイマンは鶴さんに入ってるから無理。
ディーダは大穴に落ちてから見かけてない。
鶴さんは襲来日の準備で来れない。
敵の情報無しで防衛クエストとかハードを超えてヘルモードですか。
しかも、再チャレンジ不可とかクリア激ムズじゃないですかヤダー。
ま、残機無限でトントンなのかな。
リアル死にゲーとか本当に笑えない冗談だね。
死ぬのも不可能なのだけれど。
…さて、そろそろかな?
最初と比べて噛む速度が遅くなった。
あの肉スライムには効かなかったから金蜂にも効かなかったらどうしようと思ったけど、杞憂だったね。
他のスキルを取るべきシーンはここかなと思ったけど、先延ばしにできるなら喜ぶべきさ。
だって奥の手は隠すべきものだしね。
スリープタッチ。
触れれば夢の世界へ旅立たせる私の力。
対処できる術を見つけて少し安心したらグラリと傾いた。
そうと思えば全身を震わせる程のような地響きを感じた。
どうやら化け物は寝てしまったようだ。
私は睡眠薬ですか?
《魂のカケラを入手しました》
《雷属性の魔力を入手しました》
…お?
そっか。
化け物からも経験値が得られる訳ね。
それもまだ弱点の雷属性の魔力も。
つまり…レアエネミー?
「それなら、がぜんとやる気が出るというものがゲーマーです」
眠ってるエネミーの口から這い出ようともがく。
…私の細腕じゃ象サイズのエネミーの閉じた顎をこじ開けるのは無理なようだ。
ビクとも動かせない。
まるで万力で挟まれたかのようだ。
それじゃ、少し前から考えてた方法を試そうか。
変身能力でオレンジのライダースーツを着込む。
指先から足先まですっぽり覆い隠す。
確かに私は非力だ。
しかし、普通では無い能力がある。
変身能力で出した物は私の思い通りに動かせる。
それなら、私が力むよりも、私が着た物を操作すれば…!
「ふん!」
あ、はは…やった、やった!
成功した!
脱出大成功!
気分は敵の罠から抜け出した戦隊モノのヒーロー。
この際、外見もそれに近づけようかな。
私はいそいそとエネミーの顎から這い出て変身能力で追加の装備や模様を付け足していく。
仮面、グローブ、ブーツ、ベルト、マントにマフラー…はちょっと邪魔だから省いて。
うっし、どっからどう見ても戦隊モノのオレンジって感じだね。
アカリンジャー・オ・レンジ、参上!
カッコつけてポーズも決める。
…オレンジの煙幕とBGMも欲しいかな。
スリープタッチの効果で寝ているエネミーの姿は金色の丈夫そうな外骨格に覆われた大型生物だった。
こりゃ、象よりもカバに近いな。
大きい耳や長い鼻がないし。
口を横にして虫に近付けて足を伸ばして増やしたらそっくりだ。
仰ぎ見た空は異様にキラキラと輝いて側で寝ているレアエネミーと同じモノの大群が飛んでいる。
翼もないのにあんなデカブツが飛ぶなんて、ファンタジーここに極まれり、だな。
ふふ、全部、全部、私の経験値。
一匹たりとも逃すものか。
まるでゲームのボーナスステージで経験値を大量に得られる敵がわんさか沸いた時のような感覚。
あぁ、この感覚は久しぶりだ。
気分が上がるな!
何匹か私の存在に気付いたのか降りてくる。
さぁ、狩りの時間だ。
「【救済の手】」
白い手をエネミーに向けてゆっくり伸ばす。
向かってくるエネミーは白い手を避けようともせずに白い手に喰いつく。
はい、一匹目確保。
続けて白い腕に体当たりしてきたエネミー数体。
白い手の吸着性は桁違いだからね。
まるで蜘蛛の糸に引っかかった獲物みたいにもがいても逃げられない。
さらに、【救済の手】にもタッチ系の効果は出る。
つまり、齧り付いたり体当たりしてきたエネミーは…
アハ、空中でぐったりとして意識を失ったみたい。
…あれ、顎だけで自重を支えられない感じ?
折れそうかな…折れた!?
やっべ、逃げないと!
「おおっと!?」
走り逃げると背後で二度目の地響きが鳴った。
その衝撃は先程よりも強く思わずバランスを崩して転んでしまう。
…あれ、なんか大きな影に…!
はい、二度目の睡眠薬です。
エネミーが寝るまで咀嚼タイム、スタート!
611-14
アカリ388 432
Lv4(607/800)
HP80/80
【ヒールタッチ】
【スリープタッチ】《選択中》
【救済の手】
【 】
【物理無効】(1/10000)
【無属性耐性】(608/1000)
【火属性耐性】(68/1000)
【水属性耐性】(122/1000)
【風属性耐性】(28/1000)
【雷属性弱点】(2/100)
【土属性耐性】(16/1000)
【光属性耐性】(100/1000)
【闇属性無効】(3/10000)
【力属性無効】(1/10000)
【状態異常無効】(1/10000)




