第三十一話 落下の結果
「…まさか地下がこんな状態だったとは」
青い半透明の幽霊、ドムドムの後を追うと予想通り、広場の大穴に連れ込まれた。
覗き込んだ先は光の無い闇。
変身能力で出した懐中電灯でも底を照らせないほど深い穴。
飛び降りても大丈夫だとドムドムに促されてストレッチャーに拘束したアカラスタと共に大穴に飛び込んだ。
気分は冒険、探索。
ライト付きヘルメット、焦茶色で統一された上下の動きやすくポッケの多い服、鉄板仕込み…は重くて歩けないから普通の革ブーツ。
トレジャーハンター・アカリ、爆っ誕!
荷物を入れる大型バックは邪魔だから見送ります。
流石に大穴に落ちる際にアカラスタの意識も戻しておいた方が良いだろう、とヒールタッチを使って起こした。
すぐに私を非難する元気はあったようだ。
…またドムドムに体を通ってもらおうかな?
大穴には魔法が仕掛けられていたのか、白い塔から飛び降りた時とは違う感じだ。
浮遊感?
落下速度?
私にスカイダイビングの経験があればもっと詳しく語れるのだろうが、とにかく違和感があった。
時間にして数分、“不思議の国のアリス”の主人公、アリスが兎を追って穴に落ち、不思議の国に辿り着いた場面を疑似体験が終わる直前に周囲の風景が変わった。
地上や家のようにゴミで構成された壁から生々しく蠢く肉の壁に変わった。
まるでゲームのバイオテロが起こったステージみたいだ。
「ゴミ山の次は肉の壁ですか」
ゴミ山の下は蠢く肉ステージだと誰が予想できるか。
思わずもう一回、声に出してしまった。
…肉?
なんだかとても最近似たようなモノを見かけたような?
『お客人、そろそろぉ、着地しますぅ。
衝撃にぃ、備えて下さいぃ』
周囲が肉の壁に変わって、また少し落ちていくとドムドムから声がかかった。
長かった穴道はそろそろ終わるらしい。
さてさて、この先にはどんな不可思議な光景が広がっているのだろうか。
あ、肉と言えば黒鍋に入ってた肉スライム。
思い出せば確かにライトで照らされた肉壁はあのスライムに似ている。
私が辿り着く場所は不思議の国ならぬ蠢く肉の国かな。
AVのパロディネタみたいな国名だ。
美少女が触手まみれで淫乱な結果しか想像できないのだが…
はは、笑えない冗談だ。
…衝撃?
「ゴブッ!?」
押し潰される。
周囲が真っ暗になると同時に思い浮かんだ。
いや、何が起こった!?
衝撃!?
あれが!?
どうやって備えるって訳だよ!?
暗い。
頭を触れるとパラパラと砕けたヘルメットが手に付く。
変身能力で新しいライト付きヘルメットを出す。
足で何かを踏んでいる感覚があったので下を見ると大穴に落ちる際に見た壁と同じような肉が敷かれていた。
ストレッチャーが壊れていたが、いつの間にか出来ていた肉の天井に、雁字搦めに拘束されたまま転がっているアカラスタを見つけてホッとしたよ。
最後の最後で無限の空の旅とかシャレにならないからね。
私達が着地した場所は十字路だった。
どの通路も同じように見える。
…体に異変はない。
ステータス画面を確認してもダメージを受けていない。
物理無効が発動したのだろう。
しかし、私が被っていたヘルメットはカチ割れ、アカラスタを拘束していたストレッチャーは使い物にならない程、壊れていた。
まるで何かとてつもなく重いモノが乗っかったような有様だ。
本当に潰されるかと思った。
マッシャーで潰される芋の気持ちを初めて知ったわ。
知りたくなかったけどね。
物理無効がなかったら即死してたのではないだろうか。
それ程の衝撃、重圧だった。
ジェットコースターや飛行機の時と比べものにならない程のGを感じた。
大穴にかけられていた魔法の副作用だろうか。
安全に落下した後にプレス着地はいかがなものか。
設計した人に一言、物申したいね。
ドムドムがフワリと目の前に降り、私の周りを一周した。
『お客人、平気ですかぁ?』
平気に見えるか?
いや、異常は無いのだけどさ。
痛みを感じない体の利点をしみじみと思う。
もしや、これは私を始末する手段なのだろうか。
「えぇ、大丈夫ですよ」
伝わらない言語だとしても私はドムドムに向かって声をかける。
ドムドムに慌てた様子はない。
私の杞憂だったのだろうか。
企てが失敗したとか、そんな雰囲気ではなさそうだ。
『お客人、アカラスタのぉ、拘束を解いてもらえませんかぁ?』
「はい、良いですよ」
私はドムドムの要望通りにアカラスタを拘束を解いた。
うん、肉の天井がある今、空へ旅立つ心配もないしね。
拘束が解かれたアカラスタにドムドムが近づくとヒソヒソと内緒話をしてアカラスタをどこかへ向かわせた。
『ではぁ、お客人。
こちらへぇ』
ドムドムはアカラスタが向かった方向とは反対の道に私を誘導している。
私は素直についていく。
肉ステージはとても静かだった。
地上に居た子供達もこの肉ステージに居るはずなのだろうが、誰一人として声が聞こえない。
今の体は五感が鋭いとは言えない。
視覚や聴覚には問題がないのだが、味覚、嗅覚、触覚は鈍い。
味覚と嗅覚に関して言えば皆無であり、触覚も何かに触れている事は分かるが痛みを感じない。
何が言いたいのかと言うと、この肉ステージがどんな悪環境か分からないという事だ。
蠢く肉に包まれているのだから生臭そうとか、地下だから寒そうとかイメージは湧くが実感できない。
それが良かったのか悪かったのか、私には分からない。
しかし、幽霊に導かれて暗くて静かな肉の通路を通るのはなかなかくるモノがある。
ハイ、SAN値チェック、入ります。
うん?
ドムドムの青い半透明な体を通して光が見える。
もしかして、私が向かっている所だろうか。
光は進むに連れて大きくはっきりとしてきた。
出口に近付くに連れて人の声も聞こえ出した。
まだまだ、遠くて言葉としては聞き取れないが確かに人が居る。
『お客人、そろそろぉ、着きますぅ。
ようこそぉ、私達の拠点へぇ』
先導していたドムドムが横に退くと、そこは地上の広場に勝るとも劣らない広さだった。
中央が一番下で少し離れた所が段々となっていてまるで講義場を半円にしたような場所。
数十のボロ布を纏った異形が両サイドに、巨大な肉の塊が最奥に居た。
視線には敵意と好奇が入り混じって私を貫く。
『お客人、前へぇ、進んでくださいぃ。
あの子、ノイマンの隣までぇ』
アカリ
Lv3(388/400)
HP80/80
【ヒールタッチ】《選択中》
【スリープタッチ】
【救済の手】
【物理無効】(1/10000)
【無属性耐性】(298/1000)
【火属性耐性】(42/1000)
【水属性耐性】(24/1000)
【風属性弱点】(26/100)
【雷属性弱点】(1/100)
【土属性弱点】(53/100)
【光属性耐性】(90/1000)
【闇属性無効】(1/10000)
【力属性弱点】(3/100)
【状態異常無効】(1/10000)




