第二十六話 帝国の現状
『…確かに、視えないな』
見えないってそりゃ、目を布でグルグル巻いて塞いでたら見える訳がないだろうに、目の前の女性は何を言っているんだ。
私はノイマンに呼ばれて来たのは開かずの間、は言い過ぎかな。
大人達が閉じ籠っている部屋に連れてこられた。
扉代わりのゴミを組み立てた柵を横に外すと下に向かう階段があった。
もちろん他の所と同じように床も壁も天井すらもゴミで構成されてたけど。
まるで片付いてない物置みたいだ。
不安定そうで急な勾配の階段を恐々と降りていくノイマンの後を追うと、その階段の途中でゴミの柵、扉があり、入るとそこには二人の人影があった。
一人は私に向かって見えないと言った、全身をミイラのようにボロ布を巻いている女性。
顔はおろか、肌を一切露出させない徹底ぶりだ。
女性と判断したのは声と体型から。
直立の状態で体型が分かるほどピチピチにグルグル巻きなうえ、天井から逆さまに吊るされている。
いや、あれは吊るされてるのか?
なんか天井に直接足が付いているように見えるけど。
その左には赤毛で毛深い牛と熊を混ぜた獣、ディーダのお母さんが笑って複数ある手のうちの一本を私に向かって振っている。
他の腕で何かを組み立てているが…よくそんなに器用に動くものだな。
腕が二本しかない私には到底真似できなさそうだ。
ミイラの右側には大人もすっぽり隠れそうな、魔女が使いそうな黒い鍋のような物が置いてあり、そこから溢れるように生肉を液状にしたようなドロリとした何かが蠢いている。
なんだ、もしかしてスライムか何かか?
色合いが肉肉しいのがとても気になる。
『ありゃりゃ?
本当に魔力がないのかい?』
ディーダのお母さんは手を動かしたままキョトンとした顔でミイラの方を見る。
『はぁ、気味が悪いほど全く視えないね。
魔力も呪いさえも…
なんで、こんな厄介者を連れて来たんだか』
『か、母さん』
『あんたは黙ってなさい!』
ノイマンはオロオロとしながらミイラの女性を窘めている。
しかし、女性から鋭い一喝を受けて止まってしまって縮こまった。
ん?
母さん?
というか、私、なんで初対面の人から敵意を浴びせられているのだろう。
声も刺々しいし、顔の布がなければ絶対に私を睨んでいるだろ。
なんなの、怒なの?
更年期ですか?
そう煽りたいのをグッと我慢して新しく出た情報を聞き逃さないようにする。
魔力に呪い、ね。
見えない、って事はもしかしたらこの人は見えないモノが見えるのかも。
私しかステータス画面が見えないように、彼女の視界には別の何かが映っていると考えれば私に対して見えない発言はおかしくない。
いわゆる魔眼って奴かな。
でも、私はヒールタッチやスリープタッチでみんなから魔力を入手しているのだけれど。
魔力自体が見えている訳じゃない?
魔力を生み出す器官でも透視できるのかも。
『だいたい、ゾーラヌ。
あんた、こんな得体の知れない化け物が来た初日に会ってるのに、なんで報告しなかったのさ!』
『あっはは!
アカラスタは昔っから心配性だね。
こんな爪も牙もない細っこい娘が悪さなんてたかが知れてる。
それに最近じゃ、幼い子らの面倒を見てくれてるようだし、良い娘じゃないか』
『何も視えないあんたにはこれの異常性が理解できてないのよ!
…はぁ、もうすぐ襲来日だって言うのにさらに厄介事が増えるだなんて』
ディーダのお母さんはゾーラヌ。
ノイマンのお母さんがアカラスタ。
…よし覚えた。
それにしても異常か。
確かに私は死後の世界から直接この世界に来たから、この世界で産まれた者と比べるとやっぱりどこか普通とは違うだろう。
それは当然な話だ。
なんなら、飲まない食わない呼吸しない。
血は流れてないし、骨や筋肉、内臓もない。
体がミンチ状態になっても治るし、HPがゼロになっても死なずに気絶するだけ。
うん、私は普通の生き物ではないのは確かだろう。
私はゲームやマンガに出てくる不死身の化け物か。
それと、しゅうらいび?
もうすぐって事は何かの日って事かな?
うーん、聞きたい。
けどここで私の言葉が分かるのはノイマンだけで、その当人はお母さん、アカラスタに怒られて分かりやすく落ち込んでいる。
それに今、私が口を開けばアカラスタの怒りの矛先が向けられるだろう。
正直、あの様子じゃ聞いても答えてくれなさそうだ。
ここは黙って聞く事に徹しよう。
沈黙は金、興奮してる人は重要な情報をポロッと言ってしまうものだしね。
『でも呪いがないなんて素晴らしい事じゃないか!
なんでそれを怖がるんだい?』
うんうん、呪いなんてバットステータス、状態異常の一種だろ?
そんなものはない方が良いに決まってる。
呪いは私でも解けないかもだし。
…皇女が手遅れだったならワンチャン有りだけどね。
『…ディーダとノイマンが見つけた遺跡をドノドノに調べさせたわ。
信じられないけど、あれは…帝国が滅ぶ前から存在していた。
ゾーラヌ、あれは黒い涙を受けている事になるのよ!
もしそれが本当なら呪われてなきゃおかしいわ!』
アカラスタは最後には叫ぶように言い放つ。
ノイマンとゾーラヌは驚いたように私の方を見つめる。
…え?
滅んだ?
いつ、なんで?
私が知ってる人達はどうなったのだろうか。
フランクリン、アディ、グラット、アレイスター…
他にも名前の知らない私が癒した人達。
皇帝は…ざまぁ。
それと…黒い涙。
どうやらこれが呪いと関係があるらしい。
アカラスタ達が言っている呪いとはなんなのだろう。
疫病?
災害?
黒い涙って水関係かな。
思い付くものは原爆投下後に降った放射能をたっぷりと含んだ黒い雨。
…流石に異世界で核戦争が起きたとは思いたくない。
もしかして雨が降らない事とも関係してるのかも。
『帝国が滅ぶ前って…アカラスタ、それはあの娘が長命種だとでも言うつもりかい?
それもこんなに若い子供が?
どう見てもディーダの少し上ぐらいだよ。
ドノドノを疑う訳じゃないけど、遺跡に迷い込んだだけじゃないのかい?』
うん?
ちょーめいしゅ?
お酒みたいな感じだけど何かの種族名かな。
なになに、珍しい種族と間違えられたってわけ?
『それは私もドムドムも疑った。
だが、いくら調べてもそれが帝国に封じられた者という証拠が出るだけだった』
アカリ
Lv3(386/400)
HP79/79
【ヒールタッチ】
【スリープタッチ】《選択中》
【救済の手】
【物理無効】(1/10000)
【無属性耐性】(297/1000)
【火属性耐性】(42/1000)
【水属性耐性】(24/1000)
【風属性弱点】(26/100)
【雷属性弱点】(1/100)
【土属性弱点】(53/100)
【光属性耐性】(90/1000)
【闇属性弱点】(11/100)




