第二十三話 子供の拘束
『さぁさぁ、どんどん食べてちょうだい!』
ゴトリと私の前に出された茶色いねっとりとした液体が入った青みがあるスイカ程の大きさの半透明なボール。
それを置いた二足歩行の赤毛の獣はヒトの言葉を話す。
毛深い牛と熊が混ざったような獣、美女と野獣の野獣をメスにして毛皮に赤色を足したような存在が目の前に居る。
人よりも、明らかに腕が多い事には目を背いた上で言いたい。
ディーダ、私、食べれないって伝えてなかったっけ?
状況を整理しよう。
ノイマンが家と呼んでいたゴミ山を少し整えて家に見えなくもない場所に辿り着くと、大勢の子供達に襲われた。
うん、襲われたって比喩じゃないからね。
下は幼児、上はディーダやノイマンと同じくらい、種族はてんでバラバラな多種多様な子供達がワラワラとゴミ山、家から飛び出して来てその勢いのまま、私の足やら胴やらに飛びついて来たのだ。
見た目通りの力しか無い私はすぐに押し倒されて子供達にもみくちゃにされながらどこかに運ばれた事だけは分かった。
絶対にこれ、物理無効が無かったらダメージを受けてるはずだよ。
それぐらい怒涛の勢いだったからね。
言葉?
はは、何十人もの興奮した子供達に囲まれて言葉が聞き取れると思うか?
私は無理だと悟ったよ。
そして気がつけば地面に座った状態で固定されていた。
そこは薄暗くて室内だとすぐに気が付いた。
どうやら私は子供達に家へと運ばれたようだった。
膝や腕、肩や頭にまで子供達が乗ったり寄っ掛かっりされてギュウギュウの団子状態だ。
フワフワな羽、ザラザラの鱗、チクチクな毛、ツルツルな肌、冷たい身体、熱い身体、大量のボロ布の感触。
私は玩具箱にでも入れられたのか?
…ねぇ?
誰か私を噛んでない?
ガジガジしてない?
痛みはないけどさ。
あと、なんかぬっちょりとした感触を感じるんだけど…
ヨダレか鼻水を垂らした子、居るよね?
子供達を振りほどくなんて無理だ。
子供達を怪我させたくない、という建前を別にすれば小さいとはいえ集団で捕まえられて身動き一つできなかったからだ。
その状態から数分後、ディーダとノイマンが来てようやく子供達から解放された。
ノイマンからは謝られた。
子供達から魂のカケラと魔力を手に入れられたから良いのだ。
レベルも上がったし。
しかし、ディーダよ。
あの子達に私をなんて伝えたんだ。
凄いモノ出して、キラキラ出して、なんかはまだ良い方だ。
やろうと思えばできるから。
火を吹いて、空を飛んで、なんて無理だ。
いや、今後の習得するスキルによっては可能かもしれないけどさ。
私は魔法を見たいのであって、魔法はまだ使えないんだぞ。
火を吹いたり、空を飛ぶなんて魔法じみた事ができる訳ないだろ!?
そして子供達から解放された私はディーダに引っ張られて別の部屋に移動した。
そこは広場だった。
夕焼けの空が広がる場所で大きな魔導具の隣にそのヒトは居た。
私はまた子供達に囲まれながら茶色いスープを出された。
整理、終了。
「食べれないし、動けないのだけど…
ノイマン、私はどうすれば良いかしら?」
両膝に幼児、股の間にはディーダ、両脇に子供、おまけに頭の上に寄りかかる子。
さらに首には誰かの尻尾が巻きついてる。
目の前に座っているノイマンに尋ねても微笑みしか返ってこない。
いや、助けろよ、助けてくれよ。
ディーダ、私をなんて紹介した?
初対面の人間にここまで懐く子供達って珍しくない?
いや、懐いているのか?
子供達に玩具認定されてない、私。
髪を食われてるんですが!?
んぁ!?
引っ張るな!
子供達はこれ見よがしに半透明のボールに口を近付けて中のネットリとした茶色い液体を吸っている。
…完全な球体で穴なんて空いてないのにどうやって飲んでいるのか。
思わぬ所で魔法を見れた。
しかし、私は目の前のボールの中身の飲み方が分からないから手を出さない訳じゃないんだぞ?
「ノイマン。
私は食事は不要だと伝えてくれ」
「ごめんなさい、アカリさん。
おばさんには伝えたんだけど…」
「アカリ!
これ、旨いんだ!
一口、飲んでみろよ!」
ノイマンは申し訳なさそうに顔を背けてボールからチビチビと液体を飲んでいる。
ディーダは顔を上げて飲めと催促してくる。
…ディーダ、地下での話を忘れたのか。
私、内臓が全てないから、消化器官が存在しないから、食事は不要って言ったよね。
話の内容が難しかったのかな。
でも、ノイマンは理解していたけど。
しかし、その茶色い液体、美味しいのか。
くぅ、異世界の味、気になるに決まってる。
今の私は味覚と嗅覚は鈍い。
なんなら、全然ないと言っても過言ではないのだ。
私に分かるのは食感と見た目だけ。
食事が不要であっても寂しいものだ。
視線を大きな魔導具の方へ向けるとノイマンがおばさんと呼んでいた獣人の女性、ディーダの母親が複数ある腕の内の一本をこちらに向かって振っている。
直接話が出来たら良かったのだろうが、ノイマンの魔導具による翻訳は制限があるらしく、ディーダの母親には使えないとの事だ。
というか、私の言葉が分かるのは今はノイマンとディーダだけ。
他の子供達も私が何を話しているか分からないのだけど…
あれか、物珍しい外国人にみんな集まっているのか?
とりあえず、目の前のボールをディーダに押しつけて私は新たに習得できるスキルを意識した。
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【ハイタッチ】
【ブライドタッチ】
【バインドタッチ】
【スリープタッチ】
【拒絶の手】
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前回、選ばなかったスキルの他に新たに三つのスキルが候補に上がってる。
バインド、スリープ、拒絶の手。
ヒールタッチは触れた相手を癒す能力。
ハイ、ブライド、バインド、スリープ。
どれも名前にタッチが付く事から触れたら発動する系統だと考えるべき、だよね。
予想だけどスリープは相手を眠らせるスキルでバインドは…相手に麻痺状態でも付与するのだろうか。
子供達がくっついている今は習得するのは危険かな。
拒絶の手は…なんだろ。
救済の手と同じ系統と考えても…また白い手でも空中に現れるのだろうか。
どれもどんな効果を発揮するスキルか確認したいが、習得できるのは一つだけ。
…このゴミ山暮らしの人達と全員触れ合えばまたレベルは上がるだろうか。
でも、そうするとまた新たに三つのスキルが候補に加わるのだろう。
あぁ、早く新しいスキルを選んで確認したいものだ。
アカリ
Lv3(6/400)
HP79/79
【ヒールタッチ】
【救済の手】
【 】
【物理無効】(1/10000)
【無属性耐性】(12/1000)
【火属性耐性】(2/1000)
【水属性弱点】(61/100)
【風属性弱点】(10/100)
【雷属性弱点】(1/100)
【土属性弱点】(14/100)
【光属性耐性】(90/1000)
【闇属性弱点】(1/100)




